表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/33

第10話

Another Story

  綾野 祐介

第10話


 更に先へと進むと少し広い場所に出た。そ

こには奥に続く通路と木製のドアがひとつあ

った。ドアには鍵が掛かっている。今持って

いる道具では開けられないようだ。


「どうします、リチャードさん。」


「仕方ありませんね、少し手荒になりますが

開けてみましょう。」


 リチャードはそう言うと拳銃で鍵の部分を

打ち抜いた。ドアはすぐに開いた。


「入ってみましょう。」


 その声は結城良彦のものではなかった。リ

チャード=レイのものでもない。もう一人の

声だった。


「だっ、誰だ。」


 リチャードは拳銃を声の方に向けて問いた

だした。


「おやおや、物騒なものはしまっていただけ

ませんか?結城君、君から彼に紹介してもら

えないだろうか。」


 それは綾野祐介だった。結城たちの後を追

ってきたのならば後ろから声がした筈だが、

綾野の声は前からだった。違う入り口からこ

こまでたどり着いたのだ。多分海側からだろ

う。


「綾野先生、どうしてここへ?」


「いろいろと日本で事情があってね。ある書

物を探しているんだ。君も協力してくれない

か?それで、その紳士には紹介してもらえな

いのかな。」


 結城はリチャードに綾野を紹介した。やっ

と納得してリチャードは綾野に向けた拳銃を

降ろした。


「生きた心地がしなかったよ。」


 綾野は取り急ぎ訪米の目的を二人に説明し

た。ツァトゥグアの封印を解く方法を探さな

ければ教え子の命がない、というのだ。


「そんなことで、ツァトゥグアの封印を解く

つもりなのか?」


 かなり強い口調でリチャードが詰め寄った。

結城にはどちらの気持ちも理解できた。一人

の命のために人類全体が危機にさらされるこ

とになるのだ。だが、綾野としては残してき

た教え子を見捨てる訳にはいかないだろう。

結城にも人道的にも心情的にもそんなことは

出来なかった。


「その話はとりあえず置いておいて、ツァト

ゥグアの封印を解く方法を見つけること、そ

のものの意味はあるでしょう。解く方法が見

つかるのなら再び封印する方法や二度と解か

れなくする方法も見つかるかもしれない。」


 リチャードはそんな話では説得されない様

子だったが、とりあえず最終的な目的が違う

が、書物を探すという意味では協力できる筈

なのでドアの中に入ることには同意したのだ

った。


 ドアを開けるとそこは倉庫のような部屋だ

った。ドアの無い壁三方に天井までの棚が作

られており、様々なものが置かれている。左

側の壁には壺のようなものが多く飾られてい

る。蓋付の物が多い。綾野がその中のひとつ

を開けてみた。


「何か粉のようなものが入っていますね。」


「なんの粉でしょう。」


「分析してみないと全く想像もつきませんね、

どこかで分析を頼めますか?」


「判った。私が知り合いに頼んでみよう。」


 粉はリチャードに託すことにした。


 ほかにもいつくか開けてみたが特に変わっ

たものは入っていなかった。


 正面の壁には箱がたくさん並べられている。

今度は勇気が開けてみた。


「ああ、中は書類がたくさん入っていますね。

何かの資料のようです。結構知らない単語が

多いなぁ。リチャードさん、見ていただけま

すか?」


 リチャードはその資料を暫く見ていた。そ

の間、綾野と結城は違う箱を片っ端から開け

ていった。しかし、ほかの箱にはガラクタし

か入っていない。なぜこんなものが大切にこ

んな部屋にしまってあるのか、見当がつかな

かった。


「何か判りましたか?」


「これはダゴン秘密教団の議事録のようなも

ののようだ。内容はおぞましいと言うのにつ

きるな。教団から抜けようとした者の処分に

ついて多く記されている。さっきの粉に触っ

たかね。」


 綾野が少し触れていた。


「それがどうかしましたか?」


「聞きたいか。」


 リチャードは話したくなさそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ