いじめのきっかけとは……
「見てみて~。ついにこのかばんを買っちゃった~」
今はお昼休み。
そう言って、夏美ちゃんが取り出したのは、ブランド物の鞄。
「うわ~すっご!」
「夏美、ずっとお金を貯めていたもんね~。おめでとう!」
私と、春奈ちゃんはは夏美ちゃんの買った鞄を褒めた。
「え~? でも、これってただ高いだけで、大してかわいくなくね?」
ピキッ!
夏美ちゃんの顔が引きつった。
でも、千秋は、これに気づいていない。さらに……。
「それよりも、こっちの方がかわいくない?」
千秋が、そういって取り出したのは、カタログ。
たしかに、千秋が指したのはかわいいよ。でも、
「そ、そうだね。でも、こっちの方がかわいいかもね~」
夏美ちゃんは顔をひきつらせながら言った。
頑張って高かった鞄を買った夏美には、余計なひと言になった。
この会話を聞いていた、私と春奈ちゃんは二人で顔を見合わせておろおろしていた。
もし、ケンカになったら、どうしよう……。ケンカになったら、最悪だな……。
「ねえ……。冬華」
ボソッと、春奈ちゃんが私に話しかけてきた。
「何……? 春奈ちゃん……」
私も、それにこたえて、ボソッと小さい声で話し始めた。
「あの二人、やばくない……?」
「そうだね……。ケンカになりそう……」
「でも、夏美は我慢している方だよ。仲悪かったら、きっとキレてる」
そうなんだ……。
千秋~! 気づけ~!!
「あっ、そういえば夏美~? 昨日の歌番見た? 確か、夏美の好きなアイドル出てたよね?」
気を使った、春奈ちゃんが夏美ちゃんに話を変えるために、どうでもいい話題を振っていた。
「見た見た!! も、チョーかっこよくない!? やっぱり、大好きだわ~。もっと、ドラマとかもっと出してくれたらいいのに~。ねえ、冬華は誰が好きなの?」
「私?」
私かぁ~。
「う~ん……。ごめん、私アニメしか見ないなあ~」
「へえ~。冬華ってアニオタなんだ! 以外!!」
うぅ……。
「ごめん……」
「何謝ってんのよ! 冬華の意外な一面を見れてうれしいよ!」
夏美ちゃんは、そういって笑ってくれた。
「ふう……」
あっ、お疲れ様。春奈ちゃん。
「グッジョブ!」
私は、千秋と、夏美ちゃんに見えないように親指を立てた。
「へへ……」
そんなこんなで、お昼休みは終わった。