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白い病室

作者: 幽衣

初投稿。処女作では無い。

 もう誰も来なくなった広い病室の窓辺で一人、無機質な、バランスの整った飯を食う。

 医者が来ることは滅多にない。

 飯は看護婦がなにも言わずに持ってきて、そして持って帰っていく。

 彼女たちは一日に六回来れば良い方だ。


 ふと、気紛れに外を眺めるも灰色の空しか見えなかった。


 悲しいとか、寂しいとか、感じたことはないし、思ったことはない。

 もう「仕方ない。」と諦めていた部分も大きいだろう。

この身体はもう動かない。それだけは確かで。

 一人、隔離されたこの病室も、仕方のないことなのだ。


 部屋の外からは、病院にいる小さな子供たちの声が微かに聞こえた。

 その声は、それはそれは楽しそうで。

 普通であれば、微笑ましく思い、そして注意するのだ。

 けれど、自分はもうこの部屋はおろか、ベッドからも降りることはできない。


  もうどうしようもない


 もう随分と腕に刺さったままの点滴の針を、久々に異物と感じて、痛んだ気がした。

 勘違いかもしれないけれど。

 勘違いだと、思うけれど。


 広く真っ白な病室は、気が狂いそうになるほど何もなくて。

 最初は人も多く、そして同情と情けに溢れていたこの部屋も、五年もすれば人の足は自ずと離れていく。

 この身体は動かない。病のせいで動かなくなってしまった。

 身体が徐々に固まっていくという奇病。

 かなり珍しいようだ。

 足はもう動かせない。いや、下半身は、完全に。

 いずれは、いまは動かせる上半身も動かなくなるだろう。

 それも時間の問題だ。

 治す手段はない。医者も匙を投げた。もうどうすることも出来ない。

 とうに諦めたつもりだった。

 けれど。


 ツキン、と。

 どこかが痛んだ気がした。


 きっと。

 気のせいだと思うけれど。


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