月のボタン
風がぴゅうとふいたので
ポケットに手を入れた
ひんやりと刺すような
不思議な感覚がしたので
取り出してみた
少し欠けているけど
まあるく黄色く小さく
ほのかに光っているボタンだった
なんとはなしに
指でなぞると
つるりと心地よい音が
聞こえてくる
気に入ってしまったので
撫でながらポケットにしまうと
ポケットから歌が流れてくる
その歌を聞いていると
誰かを呼びかけるような
遥かな遠い異国の歌なのか
歌はやがて空に昇り
気づいたらボタンが空にかかっていた
そして
撫でた後がくっきりと残っていて
それは王冠のようになっていた
罰が悪そうに
私はボタンに向かっておじきした
「どうも失礼しました!」