CHAPTER1 PART6-2
“女王の通る道に立ってはいけない”
それは、誰もが噂していること。
“もし立っていたら、殺されてしまうよ”
女王は、自分が気に入らないものはすぐ殺す。
料理の味が気に入らない。
家具が気に入らない。
顔が気に入らない。
理由はその程度。
何人、いや、何十人の部下を殺したことか。
しかし、女王の横暴ぶりは、それだけに止まらなかった。
ある日、小さな子どもが女王に殺された。
理由は、“通り道に立っていたから”。
そうして人々の間に、そういう噂が流れた。
わかっていたのに。
知っていたのに。
今自分は、女王の通り道にいる。
「あ…、あぁ…っ」
白うさぎは、恐怖で体が動かなかった。
「ん?
何だい、この小汚い子どもは」
女王が、目の前にいる。
「邪魔だねぇ。
衛兵!この子を…」
「お待ちください、母上」
「ジョーカー…」
女王を止めたのは、彼女の息子─ジョーカーだった。
「この子があまりにも可哀想です。
考え直してはいただけませんか?」
白うさぎは、ジョーカーの名前こそ知っているものの、彼の人柄について何も知らなかった。
「…ジョーカーが言うなら。
……行くよ!お前たち!」
ザッザッザッ、と、女王の軍隊が去っていくのを見ていると、ジョーカーと目が合った。
ジョーカーは何も言わず、ただニコリと笑った。
“自分を助けてくれた優しい人”
それが、ジョーカーに対する最初の印象だった。
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あれから時が経ち、女王は死んだ。
その王位は、もちろん息子のジョーカーが継いだ。
これからワンダーランドは平和になる。
そう思ったのも、ほんの一瞬だった。