CHAPTER1 PART6-1
アリスが帽子屋の家に着いた頃、ワンダーランドにある城で、白うさぎは慌てていた。
(どうしよう…!
せっかくアリスを連れてきたのに見失うなんて…!
どう説明すればいいのだろう……!)
白うさぎは、大きな赤い扉の前に立ち、ノックをした。
「…誰だ?」
中から聞こえる、重く低い男の声。
「白うさぎです」
「……入れ」
「失礼します…」
白うさぎは、遠慮がちにその扉を開けた。
そして部屋に入ってすぐ、膝をつく。
「…白うさぎ、アリスは一緒なんだろうな」
自分が言うよりも先にそのことを言われ、白うさぎはドキリとする。
「それが…、その…アリスは……」
白うさぎは、次に続く言葉が言えなかった。
しかし男は、全てわかっている、というように笑い、
「…早く探し出せ。
俺の機嫌がいいうちに」
「……!!
は、はい!」
白うさぎは、全速力で走った。
(よかった…!
殺されなくて…本当によかった…!)
額に流れる冷や汗を拭いながら、白うさぎは過去を思い出していた。
自分と、あの男との出会いを──。
─────────
───────────
─────────────
何年前かはわからないが、白うさぎが今より小さかった頃──まだ、ハートの女王がこのワンダーランドを治めていた時代。
白うさぎは、下町に住む、普通の男の子だった。
「あ、あの花もいい!」
白うさぎは花が好きな男の子で、その時は森の近くの道に行って花を集めていた。
ただ、花集めに夢中で、周りに対する注意力が欠けていた。
ザッザッザッ…と、軍隊が歩く音がする。
ザッザッザッ。
それはだんだんと白うさぎに近づいていき、
「あっ!」
気づいた時には遅かった。
(女王さま…!!)