CHAPTER3 PART5
「ジョーカー…?」
城に連れてこられて、数日が経ったある夜──。
フラフラッと歩いていると、廊下にジョーカーが佇んでいた。
「…アリス。
眠れないの?」
ジョーカーがそっと、あたしの頭を撫でた。
「……ごめんね。
この間はあんな冷たい態度とって」
そう言って悲しげに笑うその人は、あたしのよく知るジョーカーだった。
「俺は…どうしても君に対する気持ちが抑えられないみたいだ…。
君だって人間なんだから、俺だけに愛を向けられないってことはわかってる。
でも…君が誰かに笑いかけていると…、どうしようもなく腹が立つんだ…」
ジョーカーは、あたしの頬に軽く触れた。
「笑わなければいい、なんて思ったりもしたけど、やっぱり無理みたいだ。
…わがままだとは思う。
でもお願い……、笑って。
笑って、アリス…」
(笑う…?
笑えばいいの…?)
あたしは、ジョーカーの顔をジッと見つめる。
(笑えば、閉じ込めたりしない…?
笑えば、白うさぎさんに酷いことしない…?)
あたしはニコッと笑ってみせた。
「……アリス!」
喜ぶジョーカーに抱きしめられながら、あたしはずっと笑っていた。
(これで……これで、いいんだわ…)
その笑顔が偽物だということに、ジョーカーはおろか、あたしさえも気づいていなかった。
─────……………
「あれ…?」
白うさぎが部屋の隅で、あることに気づいた。
(銀時計の針が狂ってる…!?
どうして……!?
今までこんなことなかったのに…!)
いくらいじっても、銀時計は直らなかった。
(嫌な予感がする…。
このワンダーランドで、何かが起こる…!)
この先起こるであろう危険を感じていたのは、白うさぎだけだった。




