CHAPTER2 PART8-4
「悲しそうな瞳の理由はそれですか?」
アンドレイの言葉に、バラ姫は何も言いませんでした。
アンドレイは出来るだけバラ姫に近づき、請い願うように言います。
「あなたの悲しみを、俺にも分けてください!
1人で抱え込まないでください!」
それはアンドレイの、男としての願いでした。
「ねぇ…姫さま…。
あなたの名前を教えてください…」
「………ラーナ…」
バラ姫は泣きながら答えました。
アンドレイは、鉄格子から出来るだけ手を伸ばします。
「ではラーナ様。
俺と一緒に逃げてくださいますか?」
その問いにバラ姫は「はい…!」と答え、アンドレイの手を取りました。
その日の夜、2人はこっそり城から抜け出し、薔薇の国から逃げて行きました。
そして2人は、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしたそうです──。
──────………………
「……アリス?
どうかしましたか?」
帽子屋さんに聞かれ、あたしは顔をブンブンと振る。
「ううん…感動して…」
あたしがそう言うと、帽子屋さんが涙をすくってくれた。
「アリスは優しいですね」
と言って。
「ねぇ帽子屋さん。
一つ聞いてもいい?」
「はい、何でしょう」
「その兵士は…アンドレイは、どうして死ななかったの…?」
帽子屋さんは少し苦笑いをした。
「それは…私にもわかりません。
周りのものが死んだのが、彼女のせいとは限りませんしね」
「あっ…そっか…」
(王さまたちの勘違いだった可能性もあるもんね…)
「さて、アリス。
そろそろ寝たらどうです?
瞼が閉じてきていますよ」
帽子屋さんの言うとおり。
そんなことない、と言う気力すらない。
「……うん。
おやすみなさい…」
「おやすみなさい」
あたしは帽子屋さんに頭を撫でてもらいながら、安らかな眠りに落ちていった。




