CHAPTER2 PART8-3
「……なに、お前」
自分をジッと見てくる兵士に、バラ姫は怪訝な顔をしました。
「あ、いえ…失礼しました!」
アンドレイは慌てて牢を去りました。
バラ姫は、兵士たちの敬遠する態度に慣れていました。
どうせ彼も、自分を嫌がって辞めていくのだろう。
バラ姫はその程度だと考えていたのです。
しかし、その予想は外れました。
「姫さま。
姫さまは、何か好きな食べ物はおありですか?
俺は基本的に肉が好きなんです」
「姫さまは何色が好きですか?
肌が白いので、桃色とか似合いそうですよね」
「姫さまは綺麗な髪をしていらっしゃいますね。
俺なんか癖毛だから、寝起き大変なんですよ」
他愛のないこと。
ほんの些細なことだけれど、アンドレイはバラ姫にずっと話しかけました。
食事をもってくる度に。
その都度バラ姫はアンドレイを無視していましたが、やがて根気に負けて口を開きました。
「…ねぇ。
お前はどうして、いつもいつも私に話しかけるの?」
バラ姫が聞くと、アンドレイはほんの少し微笑んで、
「では姫さまにお聞きします。
あなたはどうして、そんなにも悲しそうな瞳をしていらっしゃるのですか?」
と聞き返しました。
「そ…それは…っ」
バラ姫は困ってしまいました。
それをわかっていたかのようにアンドレイは笑います。
「…では、先ほどの質問に答えます。
俺が姫さまに話しかける理由。
それは単に、姫さまが好きだからです」
「…え?」
アンドレイは、真っ直ぐバラ姫を見つめました。
「で…でも!
私に近づいた人はみんな死んでいくの!
きっとお前も死んでしまうわ!」
バラ姫は驚いたこともあってか、急に泣き出してしまいました。




