CHAPTER2 PART6-4
「……あ」
何だ…昔の記憶ですか…と、帽子屋は頭を抱える。
(久しぶりに母の顔を思い出しました…)
もの思いにふけっていると、自分の身体の上に何かがあることに気づいた。
「おや」
それは、帽子屋が何度か目にしたことのあるものだった。
─────……………
バタンッ
扉を乱暴に閉めて、ベッドにダイブした。
ドキドキドキドキ…と、動機が治まらない。
(ど…どうしよう…。
カーディガン…掛けてきちゃった…。
それに……)
あたしは、さっきのことを思い出していた。
(何の夢を見てたのかわからないけど……帽子屋さん、泣いてた…)
ヤマネが帽子屋さんに届け物をしてと頼んできて、帽子屋さんの部屋に置いてきたまではよかった。
でも帰るときに、帽子屋さんの目から涙がこぼれているのを見て……慌ててカーディガンを掛けて逃げてしまった。
(何やってるんだろうあたし…。
別に寒そうにしてたわけでもないのに…)
あたしって馬鹿だわ、と、ベッドの上で悶える。
とその時──
コンコンコン…
「アリス、いますか?」
(うひゃう!
ぼ…帽子屋さん来ちゃった…!)
「入りますよ?」
ギイィ…と扉を開く音がする。
(えぇい、寝たふりしちゃえ…!)
あたしは目を瞑って寝たふりをした。
「…アリス?」
帽子屋さんが、様子をうかがっているのがわかる。
(バレませんように…バレませんように…)
「………」
しばらくして、頭上でクスッと笑う声がした。
そしてフワッと何かを掛けられ、
「ありがとうございました」
と耳元で聞こえた後、バタンと音がして足音は去っていった。
「………」
起き上がって確認すると、掛けられていたのはあたしのカーディガンだった。
あたしはそれをギュッと抱きしめ、しばらく帽子屋さんのことを考えていた。




