CHAPTER2 PART3-2
「……いつまでそこにいる気ですか。
貴方みたいな老け顔にずっといられると、こちらとしても気分が悪いんですが」
「…匿っているのではなかろうな」
ジャックの言葉に、帽子屋は露骨に嫌そうな顔をする。
「匿う?私が?
あり得ないですね。
もし屋敷に置いていたとしても、ジョーカー様が探しているというなら差し出しますよ」
帽子屋は「信じられない!」というポーズをとる。
「では、家の中を調べてもよいのだな」
「ええ、結構ですよ。
いつ死んでも構わないというなら」
帽子屋の言葉に、ジャックの眉がピクピクッと動く。
「どういう意味だ?」
「私、家にちょっとしたトラップを仕掛けるのが趣味でして、家中に張り巡らせてあるんです。
毎日をサバイバルゲームのように生きるのが楽しくて、やっているうちにヒートアップしちゃって、中身によっては死ぬ可能性もあるんですよ」
帽子屋はわざとらしく、ニコッと笑った。
「それでもよければ、どうぞ」
「………」
家の中を想像したのだろう。
ジャックは思いっきり舌打ちをして、
「…また来る!」
と言って去っていった。
それを見送りながら、帽子屋は溜め息をつく。
(まったく…、あの子もずいぶんな人に狙われてますね…。
まぁ、でも…)
「今は、言わないでおきましょうか」
それは、帽子屋の優しさだった。
──────………………
コンコンコン…
「失礼します。
ジョーカー様、お茶をお持ちしました」
召使いのものが部屋へ入ると、ジョーカーはベッドに座り何かをしていた。
「ジョーカー様…?
何をなさっているのですか?」
「トゲをね、落としているんだ」
ジョーカーの手には、薔薇があった。
「そう、君知ってる?
薔薇の花言葉」
「い、いえ…」
「『愛』だそうだよ」
「はぁ…」
ジョーカーはトゲを落としながら、怪しく笑っていた。