CHAPTER2 PART2
ホワン…
目が覚めると、甘い匂いが漂ってきた。
(誰か…何かを作ってるのかしら…?)
未だ寝ぼけたままで匂いをたどって歩くと、キッチンがある部屋に着いた。
テーブルの上に、ケーキやクッキーなどのお菓子が置いてある。
そしてキッチンに立っていたのは、三月うさぎさんだった。
「……これ、三月うさぎさんが作ったの?」
「そう。
パーティー用に」
いきなり後ろから声をかけたのに、三月うさぎさんはまったく驚いてなかった。
振り向くことなく返事をした。
「………」
(イチゴケーキにタルト、クッキーにチョコレートに、飴のアートにフルーツの盛り合わせ……)
たくさんありすぎるくらいなのに、三月うさぎはまだ作り続けている。
「………」
「………」
お菓子を作っている三月うさぎの後ろ姿が、お母さまと重なる。
『おかあさま!
アリスもおかしつくりたい!』
「………。
ねぇ、三月うさぎさん」
「なに」
「…あたしも、お菓子作っていい?」
あたしの言葉に、ちょっとだけ驚いて振り返った三月うさぎさんは、
「…いいよ」
といって、キッチンを空けてくれた。
あたしは、お母さまに教えてもらったレシピを間違えないように、ゆっくり作った。
─────……………
「…できた!」
あたしは、できたものをテーブルに置いた。
(うん、我ながら力作だわ!)
自信満々に眺めていると、三月うさぎさんが寄ってきてクンクンし始めた。
「……これなに?」
「パイっていうの。
食べてもいいわよ」
あたしがそう言うと、三月うさぎさんは一口パクッと食べた。
「…!うまい!」
それで終わると思ったら、あっという間にパイを食べてしまった。
(まぁ…全部食べちゃって…。
みんなにあげる分が無くなっちゃったわ)
そう思ったけど、
「アリス!
パイ、また作ってくれよ!」
って、まるで子どもみたいに笑って三月うさぎさんが言うから、許してあげることにした。