CHAPTER1 PART6-3
ジョーカーが王位に就き、白うさぎはジョーカーに仕えるようになった。
ジョーカー様の為なら、と。
しかし、それは間違いだったと気づく。
ジョーカーは、母以上に残酷だった。
ハートの女王の場合、気に入らなければすぐに「首を刎ねよ!」と言って殺していたが、ジョーカーは死よりも辛い苦痛を与えていたのだ。
“監禁”
ジョーカーは、気に入らないものを監禁した。
食べ物も飲み物も与えず放置し、相手が音を上げたところで自分に絶対服従させ、服従しないものは殺す。
そういう手口だった。
白うさぎも一度、監禁されかけた。
でも、その時のジョーカーは機嫌がよかったからか、監禁しなかったのだ。
それでも、白うさぎに恐怖はしっかりと植え付けられ、それ以来、ジョーカーの言いなりになっていった。
(ジョーカー様は、アリスをどうするつもりなんだろう…)
アリスを他の世界から連れてきたのも、ジョーカーの命令だったのだ。
白うさぎは何故か、生まれた時から時空を超えられる銀時計を持っていた。
ジョーカーは、奪うことこそしなかったが、その力を大いに使った。
他世界から盗んできたものも多くある。
そんなジョーカーが、ある日アリスを連れてこいと言った。
(何の為に…?)
その理由を知ることを、白うさぎは許されなかった。
ただ無心で、アリスを探すことしか許されない。
(僕は……、僕のしてることは…)
白うさぎは、どこか遠くを眺めながら、自分のしていることを悔やんだ。
─────……………
「お呼びですか、ジョーカー様」
中年であろう男が、ジョーカーの部屋を訪れた。
「ジャック、アリスが行方不明なんだ」
「アリス…ですか?」
「そう。
白うさぎだけだと頼りないから、君も探して」
「はっ」
ジャックが出ていった後、ジョーカーは溜め息をついた。
「あぁ…俺のアリス…。
君はいったいどこにいるんだ…?」
その顔は、白うさぎに見せたものとは極端に違っていた。