~魔法と部族と戦争と~3
「愚かな地上の獣め」
四神の一つ。青龍は、抵抗するフンババをあざ笑うかのように懲らしめていた。四神は並み大抵の生き物を圧倒的に凌駕する能力をもっている。
ただ、世の中には例外というものがよくいるのだ。
ガサガサと音がしたかと思うと、突如白い矢が飛んで来た。
「何だ、次はチビか」
落ち着いたように、青龍は彼女らを見下した。でも本当は焦っていた。奴らはとてつもない力を持っていると。
私たちは、茂みを飛び越えて戦場へ躍り出た。
私たちは彼らを順に見比べる。
空に浮かぶ巨大な生き物、顔は少し“さっきの”に似ているようだ。
でも、角が短く額にあったのが目の後ろの方から突き出たようになっている。しかも、鋭くていくつにも分かれていた。
そもそも水色。蹄じゃなくて、指だし細長い。最大の違いは、恐いというところだろうか。
それと戦っていたのは、それもまた巨大な生き物だ。とはいえ、水色と比べて三分の一くらいの大きさ。
太い頑丈そうな腕と、前に突き出る淡く渦をかいた角。目は小さくて、黒。体は草色だ。
「そこのチビに意見を求めるのも難だが、どう思う? このバカは“木だ木だ”言って、葉っぱを食べるものを皆殺しにしたのだ」
このバカと言われた方は、体の至る所を出血している。太ももの筋肉は裂けて腱が見え、手首のあたりはただれていた。
体力を消耗し、肩でゼーゼー息をしながら、すかさず言い返す。
「違う。お前の食べるは、食べるじゃない……炎で丸のみにしただけだ」
血まみれの指が指す先は黒く燻っている。風はこっちに吹いておらず、匂いで気づかなかった。
「可哀想だよ」
水色の質問などそっちのけで、純白の角を持つ者は血まみれの者に目がいっていた。
ここで、一つ二つ不思議な事が起きる。まず、血まみれの者の傷がゆっくりとだが確実に塞がり、血も止まったこと。
二つ目は、青龍の目が白目を向き、大きくぼやけて伸びた。そう思うと、そのままはじけて光になり、姿形が無くなってしまったことだ。
その一部始終を見て、ある者がどこからともなく木立から現れた。
「森は白虎の土地であるというのに……そなたたちよ、このフンババにお世話になりなさい。でも、ほんの少しの間だ。この世界のことを知ったらすぐ旅にでよ」
何で旅をするのだろう。そんな顔をしていた。
「ある世界で危機が訪れている。その世界は君達に深く関わっておる。そして、その危機を止められるのは、君達だけなのだ」
理解不能だが、ともかく困っている者がいて、助けられるのは、自分達だけということだ。なら今すぐいかなくては!
「そう焦るでない。自分達のことも知らないのに、どうやって他の世界のことを理解する?」
その通りだ。自分の事を知らないなど、とても無責任のようではないか。
みんなは自分の事も知っていて、他の者の事の知っている。なのに自分は何も知らない。
吞気に割り込みをしただけだ。
「わかったならよろしい。知ったかぶりで行動しては大きな間違いを生みかねん」
「それにしてもフンババ。人食いという名は、人を食わないそなたにそぐわない名だろう。よければ、名を与えよう」
「よろしければ」
「ディレーズ。森の騎士という意味でどうだ」
騎士って何だ? と顔を見合わせていたが、相当すごいらしくディレーズはおどおどしていた。
「ありがたき光栄」
うーん何で皆難しい言葉を使うんだ?
「それと、この世界に敵が一頭入り込んだ。強敵だ。今の君達では倒せないが、いずれ戦うことになる。気をつけるがよい」
キーシャはどこかへ行った。




