真実と偽りの章~ウロボラズ外伝6~
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空は紅く染まり、黒々しい穴がそこにあく。
まるで、世界をまるごと吸い込んで終わらせてしまいそうな程の力。
そんなものが感じられる。
そう、これで彼らが戻ってくると思った。
しかし、穴の中心が白く輝いた後、あれは消えてしまった。
跡形も無く。
彼らは戻って来なかった。
私は、その映像をミューという小動物から受け取った。
牢の後ろにある穴から偶然入ってきた仲間だ。
彼女が外に出て見たものを、イメージで送ってもらう。こうして私は外の状況を同時進行で把握しているのだ。
ズン、ズンと立て続けに重い音が洞穴に響く。
現代竜の外部偵察部隊が戻って来た。
彼らは異世界を結ぶ穴を監視する為の部隊だ。
現在、その他にもメタル・バッド・ビーストとマンティコア部隊が配備されている。
マンティコアとは、異常ともいえる食欲をもつ危険な部族だ。
それを現代竜軍は部隊配備するかわりに、大量の肉を提供している。
外部偵察部隊に向かって進む、腹這いの音。
全ての音が止まった。
しかし、空気の動きを感じる。
興奮というものだろうか。
「報告。予定通り例の穴は現れました。しかし、途中で白い光が見えたものの、穴は消えました」
期待して、喉を唸らす者。怪訝なため息をする者もいる。
「穴からは、誰も現れませんでした」
「嘘だ!」
少数の批判的な意見を差し置いて、ほとんどの者が勝利に酔いしれた。
翼をはためかせて、その様子をみようと動いているらしい。
バサバサという音や、外の乾燥した空気が送られてくる。
「静まれ!」
ガルドの声だ。
周りの者は、水を打ったように静まる。
「奴らは負けた。弱虫……弱者だ。この世界の恥だ。そうだな仲間よ」
耳が張り裂けんばかりの咆哮を、彼らは返した。
「敵というにも値しない邪魔者は消えた。……あとは、四つの翼を利用するのだ」
地面が揺れ、鎖が肌を傷つける。
だが、彼らはある大事なものを忘れていた。
「おーい。おーいってば」
後ろから小さな声が聞こえた。ふわりとした、可愛らしい声の持ち主、ミューだ。
私は耳だけ後ろに回す。
「あの穴、どうだと思う?」
私は心の声を使った。
『穴は時間になって消えたまでだろう。それと、戻ってこようと思った奴らは間違って別の世界に行ったのでは?』
ミューは私の正面に飛んで来た。
長い耳があり、くりくりとした黒い目を持っている。
顔も、体も丸っこい。
少しくすんだ白の体色で、背中には小さめの羽があった。
彼らの一族の飛翔力は、ほとんど後ろ足のジャンプ力に依存している。
ジャンプで飛び上がり、羽でいくらかの高度を保っているのだ。
「どういうこと?」
私は疲れながらも答えた。
先程、怪我を直すために力を使ったからだ。
『彼らは戻ろうとしたのさ。そうじゃなければ、あの白い光は無かったと思う。だが、誤って別の世界に入り込んでしまったとすれば……』
「こちらに来れないってわけね」
ミューは私の言葉をついだ。
私は考えた。
今の現代竜軍は完全に油断している。
攻めるとしたら、今日中だろう。
そうとすれば、今いる全ての仲間を動かさなくてはならない。
仲間とは、現代竜もしくは彼らに買収された部族以外で逃げ延びた者達の事だ。
今は、地下で生活している。
地上は現代竜の手に落ちたからだ。
『地下の仲間に伝えてくれ。現代竜軍は油断している。だが、保有しているメタル・バッド・ビーストと買収部族はすでに戦闘配備されていると』




