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ウロボラズ外伝1 竜の仮面  作者: Lightning
真実と偽りの章
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真実と偽りの章~ウロボラズ外伝~

あの忌々しい言葉を言い終わった瞬間、紅蓮の空は群青に変わった。

いや、太陽が夜の衣をまとって別れの挨拶をしたようだ。

ついにこの時がやってきた。本当に、人間世界の太陽とはお別れだ。


「痛っ」


ザミアが消え入りそうな声で短く言った。

局部的に痛いというより、全体が痺れてしまっているようだ。

だが、そんな事にいまさらかまっている余裕は無い。


その時、何かにぶつかったような強い衝撃を受けた。

風圧のようだ。風で翼が開きかけ、飛ばされそうになる。目を開けていられない。

岩の隙間に爪をかけ、なんとかしのぐ。


時間が長く感じられた。

少しでも力を抜いたら、その瞬間に全てが水の泡となる。それが怖くて動けなかった。

もう、あの風圧は終わったのかもよくわからない。


右手に重みが加わった。

びっくりした僕は目を開ける。

ザミアだった。彼の痛みは治ったようだ、しかし怯えている。彼の目線の先にあるのは、穴だった。

さっきまであった岩壁は消えている。

僕達の世界への道。


風圧はもう無くなっている。

今飛び込まなくては、せっかくのチャンスが台無しだ。

僕はザミアを手で拾いあげ、翼を広げた。

翼は弧を描くような形にして振り下げ、ゆっくりと浮上する。

そのまま滑空し、吸い込まれるように穴へ入った。



突然、辺りは真っ暗になった。

僕は反射的にザミアを確認する。__いなかった。

自分以外は全て漆黒の闇に塗りつぶされている。自分ははっきり見えるのに、あとは何も見えないのだ。

恐ろしい。そんな感情が真っ先に出てきた。


次に出てきたのは、マイナス思考だ。

世界が終わってしまったのではないか。別の世界に入ってしまったのではないかと。


だがそんな事を考えているうちに、ぼんやりと光が見えてきた。僕に少しづつ近づいてくる。

最初は一つだったが、今は二つになっていた。


罠かもしれない。

こんな暗い所に入れられたら、誰でも不安になる。

そうして近づかせて傷つける奴がいるかもしれない。

でも、僕にあれを罠だと疑える余裕は無かった。


僕も、一歩ずつ歩みを進めていく。

すると、光はそれぞれ違う形をしているのが確認できた。

一つは人型。もう片方は四足歩行の生き物だろう。

距離感がつかめない為、大きさはわからない。


足が、だんだんと軽やかに進みだした。

どうやら、光は何かを覆っているようで中に何かいるのだろう。

色が見えてきた。

人型はまだぼんやりしている。

四足歩行の生き物は、胴体が水色のようだ。


彼らの容姿に集中していると、いつの間にか目の前に来ていた。


「ザミア!」


人型の光は、紛れもなくザミアである。

服が黒いせいでわかりにくかったのだ。


僕はふと、隣の者に目を向ける。

体は大柄な狼のようだ。肩の高さがザミアのみぞおちまである。

外側の毛色は青灰色。内側はシルバーグレーだ。

首にはたてがみがある。

そして最大の特徴は、人面だ。

年老いた、賢そうな顔だが不気味で怖い。

しかも、男か女かわからないのだ。


すると、彼の方から語りかけてきた。


『君はグラジオラスだね。ザミアが世話になった。……君に私の事を話してもわからんだろうが、彼ならわかるな』


そう言うと、彼は後ろを向いた。


また光が現れた。僕の近くに。


『あなたは……』


狼のような体をしている点は、人面狼と変わらない。

しかし、顔が違う。

長い鼻先、横についた細い目。突き出た犬歯。

そう、ドラゴンの顔だ。


竜面狼は口を開いた。


『私は"名も無き者"だ』


彼の首回りには動物の骨が輪になって漂っている。

穏やかな表情が、逆に緊張する。その者の力を感じているようで。


『それでは、僕は死んでしまったのですか?』



グラジオラス、ザミアは死んでしまったのか?

それとも生きているのか?


そして、名も無き者と過ごしていたガルダは一体!?

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