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ウロボラズ外伝1 竜の仮面  作者: Lightning
始まりの序章
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~魔法と部族と戦争と~1

オレは太く強靭な尻尾で空を裂き、言った。


「オレはガルドだ」


「僕はガルダだよ。でもそんなこと訊いてない。魔力だよ」


すると奴は、そんな小さい体でどうやって出すんだってほど低い声で言う。


「あの魔法はただの蛇じゃ使えない」


初めて奴は切り込んできた。


「てめー、あんまオレを怒らせんなよ。てめーはオレのこと知ったて、何の変わりもねえんだ。どうせオレについて行くことになってんだよ」


「でも君だって僕を殺せない」


そんな脅しは効かないぞと羽をふくらませている。普段の一点五倍ぐらいだ。ガルダの翼は、美しくも血のように赤い羽の先に黒い模様のコントラストがよかった。だが、今は羽の奥まで見えてほぼ真っ赤だ。


「バカ、死なない程度にボロクソにしてやるよ」


今は、普段の零点五倍ぐらいに縮み上がっていた。


僕はいつも以上に細くなってしまった体を、自分自身でも、かわいそうにと思いながらとぼとぼと歩く。


ガルドがつくったのは洞穴だった。メタル・バット・ビーストもすんなり入れる大きな入り口。それは、そのまま下へ下へと続いているようだった。


ガルドは蛇らしくスルスルと降り、僕は飛行して進む。


道は入り口と同じ幅が続いていて、魔法の明かりもある。粘土質の土で丈夫そうだ。明かりと壁の相性が良くて柔らかい感じがある。これはガルドが仕組んだのではなく、偶然の産物だ。


だいたい四十五度の傾斜を下っていく。途中で別の道に分かれていたが、僕は直進した。


すると広い空間が現れる。ガルドの長さ三倍分はある奥行き。天井も高い。十分飛び回る事ができるし、遊ぶ事もできる。


そこで僕は、ガルドが来るまでの間飛び回って遊ぶ事にした。球状の壁に腹を向けて、壁すれすれで飛ぶのを十七回繰り返した。ちょっと危なっかしいところが面白い。


そんな時、ガルドがやって来た。なんでいい所に限って嫌な奴がやってきてしまうんだ。

小さな悲しみにくれていた時、僕はある異変に気がついた。


一緒に入ってきたはずのメタル・バット・ビーストがいない。


「あれ、メタル・バット・ビーストは?」


「ドジ、クソ、マヌケ、スットコドッコイ、焼き鳥にしたいぜ」


毒舌と共に致命的な毒も飛ぶ。


「メバビはもっと奥だ。別の道に分かれたのも気付かなかったかあ」


ガルドはメタル・バット・ビーストをちゃっかり略して言った。


確かに、あんなトゲだらけで危険の奴らと同じ部屋で寝るなど論外だ。しかも、ビーストは騒がしい。


「そうだ、狩に行こう」


独り言をボソッと呟いて、僕は洞穴を出ようとした。


するとドンッと地鳴りがして、土埃があがる。僕は本能的に後ろに飛び退いた。そうしたら、顔の横には毒牙。そこは少し青くなっていた。ガルドがまた魔法を使ったのだ。


でも今はそれよりも、目に入った砂と、舌のざらざらをどうにかしたい。


「ヒュッ」


また青い光が走り砂埃は消えた。ざらざらもなくなった。


目も開けられるようになると、ソーマの木が丸ごと落ちているのに気付いた。ガルドが根元の土を陥没させたに違いない。天井に丸く穴が空いている。ヤバイ! と思ったが、ここは偽りの世界だと考え直した。


「綺麗に見えて、ここにゃ何のまともな生き物なんざ存在しねえ。まっ、この木をエネルギーの補給源にするしかないだろう」


偽りの世界でもこの木にいくらかの力はあるらしい。


「まあ、明日でいいだろ。もう寝る」


「蛇って夜行性でしょ」


僕は確認したかっただけなのに、ガルドは暗くて見えにくいと文句を言っているように聞こえたらしく、


「バカ。だからオレは天井開けて明るくして昼のつもりでガーガー寝る。てめーは飛び回って遊んどく。文句あるかあ」


でも夜なら結局暗くなるし、一応洞穴の中に明かりがついているのだから、明るくしようと思えばいつでもできると思った。


オレは身の危険を感じて、尻尾が自動停止してしまった。殺されるとか、そういう類いじゃねえ。ただ、雑魚に負けてしまうかも知れないという危機を感じてのことだ。

オレはガルダの考え察し、なかなか面倒くさいやつだと感じた。


「ハン。オレは夜になったら見張りをしてやるってんだ。この穴で直接危険を知らせたほうがいいし、いちいち木をぶち落とす度に天井直す気なんてもっぱらねえんだよ」


「じゃあ、昼は僕だね」


ガルダは垂直飛行して見張りに立ってしまった。このままだと本当に見張りに立たされそうだ。口論に負けたくなくていったことが、こんな面倒くさいことになるとは。


「ガルド、見てよ」


見張りに出てすぐ何か起こるなんて、どうせくだらないことにきまっている。

確かに今、揺れを感じたがどうということではない。オレは外に出るのを渋った。


しかし、あまりにもガルダが出てこいと急かすので仕方なく出ることにする。もちろん魔法を使って外に出た。


するとどうだろう。林の先でニ部族の戦いが起こっている。しかも、先の戦いで倒したユニコーン似のと、それと協力しながら世界を治めるというペガサスが戦っているではないか。


この戦いで砂煙があがっている。先ほどの揺れは地上部隊の衝突によるものだろうか。相当な大軍だ。


「おい、行くぞ。こりゃあおもしれえ」


僕は翼を縦に横にと広げながら、軽やかに飛んでいた。


木の隙間を縫っていくと、さっきの現場が広がっていた。砂煙はだんだんと消え、木の枝らしきものが見えたが、やけに歪んでいる。


木だとすると、かなりの高さがあるようだ。


そして、少しずつ異常にも歪んだ木の姿が見えてきた。葉も実も無く、枯れ木に見えてしまう。そうだ、これが本当のソーマの木。本来なら明るくて、真っ直ぐだが、世界が終わる時には歪む。


「この木は一応"本当の世界"同じ意味は持っているようだな」


あざげるように言った。確かにそうである。でも、この木は緑豊かな……の典型的な賛美の形に当てはまる場所にあるはずだ。しかし、ここは典型的過ぎるほどの荒野だった。


砂煙が下がってきて木の幹も見えるようになると、点々と赤が目立つようになる。誰がどう見ても血だ。

風が強く吹き砂が巻き上がる時、ある場所には砂がなくなる。


その砂の無くなった場所には純白の角が突き出ていた。


風はしばらく続き、何もかも持ち去るようだ。

そして残ったのは死体、あの大軍である。この時ガルダは初めて、さっきの戦いが、協力しあって世界を治めるという者同士の戦いと知った。


風が持ち去ったもの。その一つに、僕がガルドに寄せていたある程度の信頼があげられる。


あんな恐ろしい事を“面白い”というのだ。

ガルドは僕たちの信じるものを否定している。名も無き者の敵。すなわち、僕の敵だ。


そして、ある場所には砂が無くなって新たなものが見えるように、僕は初めてこう考えた。

ガルドは何か嘘をついていると。


この世界は疑惑の塊か?


「くそボンクラ、てめー気付くことねーのか」


どうやら、偽りの世界に衝撃を受けていることの怒っているわけではなさそうだ。


ガルドの短い尾が、あの木の根元を指す。


「あの二頭だけ血ついてねえなあ」


そしてすぐ、くそッと悪態をつき、木陰に隠れた。

角度によっては木立の間からラピスラズリがのいているが、誰も気にしないだろう。


頭だけ出して見張った。さっきまで木にもたれかかっていた二頭は、よろよろとだが立ち上がり辺りを見回していた。戦う様子や殺気は全く見受けられない。


「本物だ」


僕は呟いた。

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