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ウロボラズ外伝1 竜の仮面  作者: Lightning
真実と偽りの章
32/46

~束縛~間章6

間章と書きつつ、超重要な部分です。

今回は既出キャラが登場しますが、このキャラでの一人称は初めてです。


また、今回から行をあけてみます。



ここは、真実の世界の王様の城。私は誰かというと、偽りの世界でシャドー・アルケミストを名乗っていた者だと言えば、わかってくれるだろう。


ここの城は、実に不思議な形をしている。幾つもの塔の集合体と考えるか、それとも一つの塔からたくさんの部屋にわかれているというのか。


私は今、その軸となっている大きな塔にいる。中央が吹き抜けになっており、壁側に寄り添うように階段がつけられている。壁には、等間隔に扉が付けられていた。

一番上の部分に王様がいるらしいが、階が存在しないら旋階段は、永遠に続くかに思え、疲れてきた。来客にこの扱いとは、どれだけ自信過剰なのだろう。


そう思いだした時、突然大きな扉が見えだした。扉というより、むしろ門だ。蝶つがいがついていて、くすんだ鉄扉は、王様の門として相応しいのか疑いたくなるような程質素な無地だった。


その周りには、衛兵どころか誰もいない。外の警備と打って変わってという感じだ。


骨ばった手を伸ばして扉を叩く。よく響く音で、扉が震えるように応えた。そして、一秒か二秒たって、呼び出し主が返事をした。


『入れ』


私は指示される筋合いなどないが、わざわざ反抗する価値もないので、それに従った。

私は手の平を広げて、扉を押した。すると、よく油がさされているのか、風の抜けるような音をたてて、部屋へ通してくれた。


ただの空間。私が最初に受けた印象はそれだった。派手さを控えた紅色の床。奥までそれが続いていて、遮断するものは何も無い。


この部屋に唯一存在するのは、壁に突っかえて立てられた枯れ枝と、それにとまった呼び出し主だけだ。


鋭いワシのくちばしは山吹色に染まり、同じ色の瞳孔はただ私を見つめているが、睨まれているようにも見える。まさに、生き血ともいえる体色。翼は濃くたちこめた雲のような色で、ドラゴンの形だ。


そいつは鎧のようにがっしりした脚で、そいつのすぐ下の床を指した。ここまで来いという事だろう。


私は奥に、足を滑らせるようにして進んだ。そして、決して手を挟めないように、扉を用心深く閉めた。

扉は、開いた時と同じように風の音だけをたてて閉まった。


私は、呼び出し主に向かって歩きだした。

奴は近づく程に威厳が増す。というのも、奴が胸を張っていて枝の上にいるため、こちらが近づく程、見上げているようになるのだ。


私は奴の指定した場所に着いて、奴を見上げたが、奴はこちらをちらりと見ただけで、天井を見て、何か思想にふけっているようだった。


これではキリがないと判断した私は、奴に声を掛けてみた。


『何用でございますかな』


すると奴はおもむろに翼を広げて、ら旋を描き、しなやかに降り立った。巨体に似合わず、かぎ爪のカチャリという音を出しただけの、静かな着地だった。


そうなると、次は奴の首の鱗が目立ってくる。輝きの無い世界で、たった一つの強い煌めきだ。


奴は少し首を傾げて、私の目を舐めるように見つめてから言った。


『わかっているだろう。貴殿の作る兵器が欲しいと言っているのだ』


『何故ゆえに?』


『腐りきったドラゴンどもを、掃討するためだ』


私はまた笑そうになった。あのドラゴン(・・・・)にしても、そこまで世界を気にするというのか。これはまったく興味深い《オモシロイ》。


『いいでしょう。納期……』


『一番効率のいいようにしろ』


奴はすでにそっぽを向いて、また思想に暮れているようだった。


『かしこまりました』


私じゃ嫌味っぽくそれだけ言うと、踵を反して元来た道を辿った。

口からこぼれんばかりに笑いながら。


「これは、楽しい楽しいでっかな喧嘩の始まりだぁ」


************


シャドー・アルケミストとやらは、そそくさと帰っていった。まったくありがたい事だと、私は心の中で話しかけるように呟く。そして私は今度、声に出してものを言った。


「彼らは私の事を忘れているようだ」


奴、シャドー・アルケミストは部屋に何も無いと思っていたようだが、実は違う。

私は、枝を突っかえている床の一部を、かぎ爪で二回叩いた。


すると、何処からともなくというわけではないが、連絡係が二名、扉を開けてすぐに、やってきた。


「メサイアを連れて来い」


「は、了解致しました」


二人は完璧なタイミングで、お決まりの言葉を言い、足並みそろえて出ていった。


メサイアは、今まで私が様子を見に行っていたが、今回は奴に来てもらう。


私は床に降りたまま、頭を羽毛に埋めて、しばしの休息とした。


鐘をうったようなノック音で、私は目覚めた。


「メサイアだけ入れろ」


私はなんとなく緊張してしまい、羽づくろいを始めた。なぜなら奴は、この計画最大の鍵だからだ。


私が顔を上げると、扉はちょうど閉まったところで、目の前にはぽつんと一人の少年が立たされていた。

私はその少年に近づき、翼を使って左の袖をあげた。すると、以前よりもはっきりと、殺戮者の絵が描かれていた。


少年は最初、腕を動かしてびっくりしたようだが、大人しくしている。

これでいい。これなら、あの作戦もたやすくなる。


「だいぶ回復したようだな」


私がそう言いながら袖を下ろすと、少年は虚ろな目を向けてきた。それを見て、私は「なるほど」と口の中で言った。


奴らをおびき出す為に捕らえた最大兵器とも言える囮。ここで妥協は許されない。


私は右側の翼を持ち上げるように広げた。


するとどうなるか。少年は声も発せずに目をむいて、土下座するように床に倒れ込んで、一心不乱に拳で床を叩きつけるのだ。


所詮、この世界の者は“心”という不確かなもの。それゆえ、普通の生き物では出来ない事が出来るが、その分もろい。

こうして力を使えば、簡単に服従させられるし、心の内に侵入して思いを読み取る事だってできる。


そして私は見た。まだ心が本来の体を求めている事を。まだ死の記憶が残っている事を。


「まったく、人間の心というものは……」


そう呟いて、少年に意識を集中させる。


『離れたくない、離れたくない、離れたくない……』


断続的にやってくるメッセージに、私はこう答える。


『奴はすでに悪となった。戻っては、彼女に会えない』


『……! 違う、嫌だ。違う、違う』


『たとえお前が消え失せようと、それが彼女にも、全ての者にも正しくて優しい事だ』


『わからない、わからない……』


『お前が、今思っている事を成し遂げれば、お前は必ず彼女の墓を荒らしに行く。絶対にだ!』


風に煽られた枯葉のように、メサイアは倒れた。


「これで準備は整った」






王様の言っていた彼らとは誰なんでしょうかね。


ちなみにですが、~冒険~グラジオラスとザミア3の後書きにあった謎ですが、種明かしを活動報告にて行っています。

ウロボラズをより深く追及したい方は、是非見てください。

ちょっとした種明かしは、順次活動報告にて行います。


ページ上の小説情報→麒麟→マイページの左、活報にて。

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