~冒険~ガルド
さて、お待ちかねの本当の世界へ戻って来ました!
しかし、今回は記憶の断片が戻っただけで、まだそれがどんな意味を持ってるかわかんない奴もいます。
今回は謎がより一層増えるんじゃないかなあ。と作者は期待しております。
『あっ、久しぶりだねえ。これからは、ガルダが出てくるんだとさ』
僕は、忽然と現れた気配に驚いて、目を開けた。闇の中に浮かび上がる二つの白い影。あっちも僕に気づいたのか、片脚を上げたまま、こちらを見ている。
でも、僕は何も出来なかった。
視界はぼやけて、やがて閉じた。
私達は、ガルドに危険だと警告された、赤い鳥を見た。
どうすればいいのだろうか。戻るという手段もあったが、体が全く動かない。
石のように重くなったわけではない。むしろ、軽くて存在しない。又は、見えない何かに縛られているよだった。
そして、疼くように、密かに居座る頭痛があった。
__彼女らは、倒れるように眠りに落ちた__
私は空を飛んでいる。右にはフィーナ、左にはメルケーンがいる。
*
メルケーン……。何故そう浮かんだのかはわからないが、確かにメルケーンなのだ。その姿はというと、ガルドが危険だといった赤い鳥そのものである。
敵。私達の目に飛び込んで来たのは、狐顔の紫色が少し混じった青灰色の蝶々翼のドラゴン。そして、ラピスラズリのドラゴン。
私達は、空から降ってきた何かを調べに来ていた。しかも、事態は深刻だ。なぜなら、そいつはソーマの森に落ちたからだ。
もし、ここで厄介な事が起きてしまえば、確実に世界は崩壊への一途を辿るだろう。私達は四つの翼である故、そんな失態は赦されない。
*
四つの翼とは、一体何なのだ。私、私達はそれだというのだが、全く心当たりが無い。しかし、四つの翼という響きは何故か、頭に残っている。
しかし、そんな重要な時に、あの憎たらしい奴らに出会ってしまうとは。
奴らは現代竜軍のトップ。見つかれば、即殺されるか、捕虜になるかだ。これは見つからないようにする他ない。
私達は迂回して、あの小さなものが落下したであろう場所に向かった。
ドラゴン達はきっとグラジオラス狩りに出掛けたに違いない。だとすれば、その間は大丈夫だ。
私達が森の中に入っていって、辺りを捜索していると、ソーマの木の葉の一つが影になっているのが見つかった。どうやら、そいつは木の葉に落下したらしい。動いている様子から、生きているのだろう。
『どうするの?』
フィーナがきいてきた。
『捕まえたら?』
メルケーンが答えた。
私達は一斉に頷き合って、私は角を振りかざした。
そいつはやはり、何かの生き物で、刃物を持っていた。
『音を出さないで』
そう言いながら、私は震えていた。あの生き物、たぶん人間が刃物で切りつけたのは、ソーマの葉だ。そこからは、世界を調和する力を持った木汁が流れ出ている。
もう、手遅れかもしれない。人間がその力を手にしてしまったかもしれない。
私は、その生き物が指示に従って固まったのを確認すると、フィーナは口早に言った。
『あなたは……』
しかし、あの人間は、今までぽかんとしていたであろう顔を歪ませて、笑ったようだった。
その瞬間、私達は強い衝撃に見舞われた。背中で枝葉の折れる音を感じながら、一定の方向に飛ばせれていく。次には、地面に打ち付けられる感覚。
「ほーう。こんな所に腐った翼の生き残りとは」
ラピスラズリの奴から、にわかにピンクの牙が迫り出し、こちらを覗き込んでいる。
「ねえガルド、殺っちゃいましょうよ」
蝶々のドラゴンが言った瞬間、ラピスラズリはかぎ爪を振り上げた。私は何故か、金縛りにあったように動けない。他の仲間も、首が動かせないせいで、何処にいるかわからない。
赤い閃光が走った。グラジオラスだと私は直感する。彼は体当たりして、ラピスラズリを森の奥まで吹き飛ばしていた。
これでひとまず助かった。しかし、まだ蝶々のドラゴンが残っている。
あいつは、ガルドを無視して私にかかってきた。紅色の口を縦に開けて、大きく広げたかぎ爪のついた手をこれ見よがしにと、近づけてくる。
大きく跳躍した蝶ドラゴンの体が私に覆い被さろうとしていた。
その時、蝶ドラゴンは消えた。そこにあったのは、白い小さな光の玉。それは、そのまま私の頭上を通り越していた。
いつの間にか、私は動けるようになり、その光を追って後ろを向いた。光は、木々の間を器用に縫って、ある一つの葉に向かっていた。
そこには、人間が横たわっている。あの人間がいた場所と近いのに、何故気付かなかったかと言うと、それには生きている者の持つ雰囲気が全く無かったからである。
そうだ、フィーナとメルケーンはどこに行ってしまったのだろう。
「ゴオオオオ……」
ガルドが怒り狂って、空へ飛んでいった。
その先には、さっきの人間がいる。そいつの手には、先程まで死んでいた人間が乗せられている。
その死んでいた者には、あり得ないものが、今は備わっている。生きている者の持つ雰囲気だ。あの蝶ドラゴンの雰囲気が、今はあの人間にある。
ソーマの木汁を奪った人間は、その力で蝶ドラゴンを封印し、死んでいた者の中に入れたのだ。それを見て、蝶ドラゴンを消したと思ったラピスラズリは取り戻しに行ったのだろう。怒りの炎を煮えたぎらせて、人間へと突撃をしかける。
しかし、ガルドの角、翼、四肢が光をあげて、消え失せた。ガルドは腹を天に向け、無惨な蛇の姿となって降ってくる。
あの人間は味方なのか?
我々の敵に、大打撃を加えてくれた。だが、その力はソーマから来ているとすると、奴ら以上に立ちが悪い。
私はまずソーマの森に戻る事にした。何としても、力の流出を止めなくてはならない。
その時、メルケーンにも会ったが、彼はラピスラズリの方に向かっている。
ラピスラズリ? あの人間にやられて墜落したのではないか? とっさに人間の方を向くと、その側いグラジオラスがいた。
**********
『フィーナの記憶だ』
私は天に昇っていた。人間が入って来た穴を塞ぐ為である。
しかし、それは一向に変化を見せず、ぽっかりと口を開けたままだった。
このままでは、また厄介な奴が来てしまうかもしれない。
だが、事件はそれより最悪の形で終わったのである。
人間はソーマの力を持ち帰ってしまったのだ。穴を通って。
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『ガルダ。あっ間違えた、メルケーンの記憶』
僕はセラフィナイトと共に、ソーマの守り手になっていた者だ。ソーマに関しての知識は、自分で言うのも難だが、他の者より遥かに高い。
僕に考えられた、この状況の打開策は一つだ。それは、自身でソーマを取り込み、流れを変える事であった。そうすれば、私利私欲ではない為、世界のバランスは保たれたまま、こちらに力を戻す事ができる。
しかし、ソーマの森にはラピスラズリ色のドラゴンがいた。あいつも同じ事を考えていたらしく、木に牙を立てようとしていた。
くそっ。このままでは。と、僕はラピスラズリの目を潰しに、嘴で突こうとした。だが、ガルドは間一髪で避けた。
「力に自惚れたか」
奴はそう言って、襲い掛かって来た。
**********
『そして、ガルドの記憶』
オレ達は、最後の強力なドラゴンを潰しにかかっていた。グラジオラスというそのドラゴンは、今日ここに現れて、ここで死ぬ筈だ。
しかし、オレ達の前に現れたのは、無様にもぶっ飛ばされた腐った翼達。オレは勿論、殺しにかかった。
が、刺されるような痛みを感じて、オレが飛ばされる。
「グラジオラス!」
憎悪を込めて言い放った。
ロベリアは? オレは戦いで、しかも、最後の強敵だろうと、ロベリアを見放す事はできない。あの、蝶々のような美しいドラゴンを見逃すバカが何処にいるというのか。
ロベリアの安全を見とると、オレはグラジオラスに向き直った。
あいつは小柄で細身のドラゴンだ。肩から深緑色の剣のような葉が生えており、そこから強力な攻撃を放ってくる。
とはいえ、あいつは情が厚すぎる。それをちょうど嘲笑っていた時だ。
「ロベリア!?」
ロベリアは突如として、ある白い光になってしまったのをオレは見逃さなかった。そして、その裏で宙に浮かんで笑っている奴の顔も。
オレは直様飛び上がって、人間に噛み付いてやろうと思った。それと同時に、オレの体は浮かび上がって、口は奴の腕を狙って開いている。
しかし、奴の足元に届こうという時にオレは角、翼のつけ根と四肢に強烈な熱い痛みを感じた。オレは落下するしかなかった。
再度挑戦しても無駄だった。オレはソーマの森へ向かった。
*
オレは、はっとして目を見開いた。夢が全てを思い出させてくれた。
「思い出したぞ。これで我々の世界がやっと訪れる」
「ほ、本当ですか?」
どうやら朝になっていたらしく、あおの二頭も起きていた。
「ああ……。ん? あいつら何処行った?」
目を細めると、二頭のドラゴンはキョロキョロした。
「てめえらは見張りも出来ねえのか」
オレの怒号と共に、彼らは肉片となって葬り去られた。
オレは出口を開き、辺りを見回した。
「ちくしょう。あいつらを絶対会わせちゃいけねえのに」
見当たらないのは当然だ。
「ま、帰るか」
オレ達の本拠地、北の岩山へオレは飛ぶ。
__ガルドの冒険が始まった__
いいかがでしたでしょうか。
聞きなれない単語が幾つか出ましたが、「現代竜軍」以外は既にでていますので、続きをいくらか推理する事ができるのではないでしょうか。
「現代竜軍」の説明は、しばらくすると出てくるので、それまでお楽しみに。




