~冒険~グラジオラスとザミア1
お知らせです。
これから、セラフィナイトとフィーナの冒険が始まる予定でしたが、構成を変更して、しばらくザミアの話をします。
僕は目を開けた。ドロドロとした空気と入れ替わりに、冷たく、痛いような空気が肺に染み渡る。
辺りは全てが藍色に染まり、天井は無数の光が輝いていた。森のある方に、白いなだらかな輝きがある。確か、森は東側にあるとの事だったが……。
「ガルドー」
自信無さげに叫んでみた。いない、誰も居ない。さっきまで、ここを占領していた軍隊も消えていた。
その時、自分の右脚は大きな川へと向かっていた。そして、それに沿って東側の森に向かって歩いている。無意識に、導かれるように、ゆっくりと歩を進めた。なぜか翼は使かっていない。
勝手に動く自分の体を不思議に思っていながらも、深く考える事が全くできないでいる
見上げると、森の端にいる事に気づいた。自分の下に在るはずの木が、今夜は自分の上に在る。
*********
ドラゴンが静かとは言えない寝息をたてだした頃、私達は眠られずに起きていた。
すると、柔らかな光が私達の脚元に射し込んだ。閉まっていた出入り口が開いたようである。
確かめるまでもない。私達は白い光と共に、東の森に歩き出した。
*********
戦局はオレ達の予想と遙に違っていた。
その証拠がある。今までの戦いでは、投石機が使われていなかった。理由は投石機を引く牛、又は人を、奴らは射程内に入る前に必ず仕留めていたからだ。
巨壁に守られながら確実に矢で仕留める。
それが奴らの戦い方だ。オレ達はその攻撃に耐える事すら出来ず、無惨に散っていた。
だが、今回の弓矢部隊の外しっぷりは素晴らしいものであった。
第一波、我々の空が陰る程に放たれた無数の矢は、人間に突き刺さるという使命を果たせぬまま、全てが地に倒れたのだ。
第二波、三波も同様の事が起こり、オレ達は奴らの砦を目前としている。
そして投石機も。
そもそも、何故こんな事をしているのか。
我々の敵は昔、さほど仲が悪かった訳ではない。
ただ、奴らは大量の水を岩山の砦に有しており、かつ、独占していた。
もともと、岩山の奴らの住処でもあった為、独占するのは当たり前だが、水に乏しいこの国の王は水をわけてくれ、と頼んだそうだ。
しかし、奴らは反対した。当然、血の気の多いこの国の民は戦争を仕掛けたわけだ。
だが、数年くらい前だろうか。他国の者が水を寄付してくれたのだ。他の国は今、平和で水もたくさん在るからとの事だった。
我々は有り難くそれを受け取って、一時停戦となった。
水は定期的に届けられて、十分な生活が得られるようになったからだ。
しかし、その国が我が国に持ち込んだのは、水だけではなかった。
まずは文化。それに触れた人々は少量の食べ物との貧しい生活に文句をつけだし、国王への批判は募った。
そして武器。
その国はセントウキという物があった。それがあれば、今まで恐れていた砦からの攻撃を避けて、破壊、勝利する事ができるという代物である。
どうせ奴らの攻撃は弓矢や投石という時代遅れのもの。
それを知った国王は、国民の志気揚げにも、という意味で再度戦争を仕掛けた。他の国は、それと同時に引き上げたのだが……。
という事で、セントウキは無いが戦いは決行。
一度大事を言ってしまったお偉い様に後戻りの道など無かったからだ。
今は、矢が外れる事がを見抜いた司令官が投石機を投入。そろそろ射程内に入る。
「おおー。あったぞ! ここが入り口だあ!」
先に行っていた奴らが突破口を発見した。ここから突入し、袋の鼠にするのだ。
だが、とても不安である。導かれるようにやって来た場所。何百年も通る事が許されるなかったこの場所に引き込まれた。
何かの罠、いや、それ以上の何かの意図。
戦いで研ぎ澄まされた本能が行くな、駄目だと叫び声を上げている。
「突撃ー」
部隊長が雄叫びをあげ、後ろから次々と兵士が入る。
「ガラン……。ゴロン」
地面にも微かに響く音の元は、猛スピードで自分に迫ってきた。投石部隊が機能しだしたのだ。
視界が崩された砦の岩で埋め尽くされていく。
オレは所詮、雑魚傭兵の成り上がり。幾らでも居る中で野垂れ死のうと、知らないというわけだ。目的はただ一つ、勝利だと。
しかし、ただの雑魚ではない。
まだ時間はあると自分に言い聞かせ、足に力を込める。岩がゆっくりと地に戻ろうとした時、オレは足に溜めた力を解き放った。
素早く入り口側へ飛び退き、腕で顔を覆う。砕けた岩から顔を守る為だ。
そして銃を握り直し、砦に背をつけて言った。
「牽制はオレがやる」
そう言い終わると同時に中へ入る。
予想通り、内部にも何重にもなる防衛線が張られていた。
とはいえ、腕はあったとしても戦いは素人。奴らは驚いて引き攣った顔をし、固まっていた。
「フン。人の壁ってか」
オレは迷うなんて下らない事なく、引き金を引いた。
他の国が持ってきた、最新鋭の銃。休む間も無く火を噴き続け、反対側では同様に、鮮血が噴く。
乱射とはいえ、確実に当て、息の根を止める。
最後の弾倉が空虚な音を立てて落ちた後、人の倒れる乾いた音がした。
グラジオラスが後方に叫ぶ。
「入り口は制圧した。固めろ!」
オレ達は死体を踏んで先に進む。たまに生き残りがいるが、それはグラジオラスに任せる。
ボキッという音がした。
「僕はやっぱりな」
絶望したようなグラジオラスの声。あいつは戦いの数少ない大切なルール「できる時に必ず殺せ」を無視する。銃を銃として使わず、ただの鉄の棒として使う。急所を打ったり、ねじったりして気絶させておくのだ。
要するに、僕はやっぱり人を殺せないなどという、とろくさい事を奴は言う。
「ったく、めんどくせえ」
防衛上の関係か、ここの内部は迷路のようだった。そして、至る所から現れる敵。
「むさ苦しいジジイが」
オレはのんびりと、奴の首に銃口をやった。
「顔だすんじゃねえ」
そいつは崩れるように、後ろへ倒れた。
だが、不思議な事に迷っていない。いや、何故迷っていないと言い切れるのかもわからないのだが、何かがオレを導いている。
いや、何を言っているのだ。オレは自分で、自分を導いてきたんだ。
ただ無心で、息せききって走り続ける。違う! オレは魔力でそう簡単に息が切れないようになっているのだ。
「お前の魔力も……」
グラジオラスの言葉が頭をよぎる。まさか。
その時、急に狭い道が開けた。つまりは、何かの部屋に出たのだ。
辺りを見回すと、茶色い土から白い石の間になっている。目立った物は特に無いが、この雰囲気は間違いなく「頭」のいる部屋だ。
オレは目線を部屋の中心にやった。
黒い髪、白い肌、緑の目、高い鼻。
「くそっ」
口の中で罵った。締め付けられるような痛みが走る。
トタトタと音をたてて、グラジオラスがやってきた。奴はオレの左側に来たが、あいつも王の威厳にやられてしまっているのがよくわかる。
まあ、頭と思われる者は大層貧弱なものであった。
この砂地であの白い肌では外には出られないだろうし、ガリガリに痩せていると言っても過言ではない。しかし、放たれる雰囲気というものはとてつもなく、オレ達でさえあの緑の目に動きを止められていた。
無防備。幾らか経って気付いた事だが、この部屋にはオレとグラジオラスとあいつしか居ない。何故気付かなかったかと言うと、あいつの目から視線を外せなかったからである。
だからこそ、あいつがおもむろに息を吸うところまで見ていられた。
「思い出すがよい」
あいつの言った事はそれだけだった。だが、それだけで他の空間に放り出されるような感覚に見舞わる。
オレは花のある所に居た。前方には、憎き岩の砦がある。
振り出しに戻ってしまったのか? オレは反射的にグラジオラスを探そうと、左側を見た。
しかし、そこには一人の少女がたたずんでいた。
どうでしたか?
軍隊や銃については、だいぶ知ったかぶりで書いております。
まだ中二の女子という事もあって、そういう事を急に調べだすと、親に怪しまれそうなので、細かい設定ができておりません。
活動報告に、欄を設けておきますので、知識のある方助言をお願いします。
次会も、ザミアの話が続きます。
悲恋物語ってやつですかね。




