~冒険~セラフィナイトとフィーナ7
今日はちょっと長めかな。
たくさんキャラがでまーす。
真実の世界のように、いつの間にか入っているといことは無かった。
あの黒い渦が現れたのだ。私は恐るながら、それを潜った。
引っ張られる。
回される。
衝撃。
そうすると、何処かへ飛ばされる感覚。
輝きの無い世界。閑散とした雰囲気。そして、殺気。
さっと下を見る。眼下には殺伐とした荒野。偽りの世界と似ている。
何も無い。
いや、前方の岩山の方角から何かが飛んで来る。
それは大きくなってきた。姿も、空を叩く音も。
私はホバリングした。ホバリングとは、空中で停止する飛び方だ。
先頭に一頭。そこから広がるように二頭。敵意は無いようにみえる。さて何者か……。
雲の隙間から覗く光に反射する群青。
そうだ、森で出会った蛇。世界を知りたくないかと言った奴。しかし、飛べない筈だ。何故蛇が空中に浮かんでいる? そして、あの二頭の羽ばたきは……ドラゴン?
月夜にフィーナとディレーズと見た。あの時は確か三頭だった。懐かしい。フィーナ、ディレーズに会いたい。
彼は間違い無く私の前に空中で止まり、あの声で言った。
「こっちだ」
導かれるままに進む。両サイドはドラゴンが囲み、眼前には巨大な蛇だ。
岩山を正面とすると、左側に進んでいる。
そこは岩がごろごろしていて、その間をせせらぎが流れている。閑散としてはいるが、綺麗な所だ。悪く言えば、不気味だ。
体に振動が加わる。音より先に届いたそれは、小刻みに重く伝わってくる。
やがて、それと似た音が現れる。
前方には、水のカーテン。大量の水が岩の上から降り、カーテンとなって直下の大きな水溜りに注がれる。
先頭の蛇が降下を始める。水のカーテンが目的地のようだ。
水溜りは、私達に応えて波をつくる。広がる。ぶつかって、砕ける。その囁くような波の奥に、自ら光る石。そして、金。
そうよ、クライトの言っていた滝だわ。とすると、青龍がいるのかしら。
ここで、ドラゴンの一団は止まる。
蛇が振り向いた。
「申し忘れたな。オレはガルドだ」
ガルド。エレスチャルの言っていた奴だ。この蛇の事だったのか。
ガルドは滝に向き直り、牙を青白く光らせ出した。
すると、滝は開いた。左右に分かれ、どうぞ入りなさいと言っているようだ。
奥には暗いごつごつしたトンネル。所々にある、白く緑がかった石。
彼らは迷わず進んで行った。私も急いで続く。
「ドーン」
豪快な水しぶきと音をたてて、滝は閉まった。
だいぶ暗くなったが、見えないほどではない。
水の反射と石の反射が合間って、光のちらつく様子はとても幻想的だ。
ジャリ、ジャリ……。
湿気を含んだ砂を踏み、進む。
「誰?」
少しキツイような棘のある言い方。
「フィーナ」
私は喜びのあまり、ドラゴン達を素っ飛ばして駆けた。ずっと先にいるはずだ。
「誰よ」
怒りのこもった声。私はここで、ふと足を止める。
「フィーナ……。セラフィナイトよ」
「セラフィナイト?」
上げ調子で、反射的にフィーナは繰り返した。
遠慮がちに砂利を踏む音が近づいてくる。真っ白な顔が覗いた。私はにっこりと微笑む。
フィーナの疑いの目は消えた。しかし、また直ぐに睨み付けてくる。
「出口を塞いだのね」
「どういう……」
「ふざけないで」
殺気まで感じられるほどの言い方。
「後ろの奴、ディレーズをお前呼ばわりした奴よ。いい奴じゃない。敵だわ」
その勢いに多少飛び退いた。そして、とっさにガルドを見る。
「でたらめはやめろ」
ガルドが体をくねらせて仲立ちになった。
フィーナは後ろを確認しつつ、距離をとる。
「我々の敵は今から来る。真実の世界のお偉いさんだ」
私は迷った。真実の世界の偉い人は私の敵のようだった。彼にとっても敵なら、私達の味方になる。
「セラフィナイト、知ってるの?」
「ええ、私は真実の世界に行ったからわかるわ」
で、どうだったの? と目で続きを促す。
「いろいろ見たり、聞いたりしたけど、そいつは、悪い奴みたいだったわ」
フィーナも同じ事を考えているのか、動かない。
ドドドドドド……。
大軍。複数の人が入り乱れている。
「お敵さんの御出ましだな」
***************
『さて、人間世界の話ですよ。まったく物騒なもんですね』
「おお、早いじゃねえか、お前ら」
雑兵という名の歴戦者達に茶化される。
何しろ僕たちは特務部隊……。別名遅刻部隊。後者の方が広く出回っている。前者は国王や、その周りの重臣くらいしか呼ばない。また、
「よう、デコボココンビ」
とも呼ばれる。
数ある呼び名の中で、一番ザミアに合っているのは殺人鬼の呼び名だろう。悲しい事に。
辺りは騒然としている。隊列はもう組まれ、後は号令を待つのみ。
眼前に敵は……見えない。
宿敵国は攻めて来ない。攻めて来た事が無い。
彼らは岩山に引き篭もり、近づいて来た者を徹底的に叩く。いずれは敗れるだろう。誰もがそう思う。しかし、幾度となる戦いで我が国は、見事に敗れている。
「皆の者。よく聞け」
ざわざわした音が吸い込まれるように消え、代わりに砂の動く音が入る。
何度とない戦いで、荒れ果てた大地の音だ。
「我々は何度も、あの野蛮な一族に負けてきた」
ワーワーと無意味に喚く声。敵を非難する者。自国を讃える者……。
国王が手をあげ、辺りはまた静かになる。
「しかし我々には英雄がいる……。救世主がいる!」
讃辞の声。その中心にいるのは僕たちだ。
何が英雄だ。僕は殺したくない。希望も、感情も、命も、この美しかった場所も。
ザミアは不敵に微笑んでいる。あいつだって、あの国王がいなければ、こんな奴にはならなかった。
いっそ人殺しになるならば、自殺してしまおうかと思ったほどだ。しかし、故郷に帰る夢は諦められない。
「……先祖代々の怨み。今ここで晴らそう」
オー!!!
声だけで地面が震れる。兵士はこの上ない高揚感に見舞われた事だろう。
先祖代々……。いつからやっているのだろうか。戦争自体は途切れて短いが、睨み合いが続いている。
というより、我々が惨めなケンカをグダグダ売っているだけにしか見えない。
少なくとも五百年は。
*********
『真実の世界だね。僕、あのロベリア怖いんだよなあ』
『もうそろそろだ。あともう少しで魔力が途切れる。終わるのだ』
ロベリアというのは、最近勝手に喋り出すようになった。
『いや……。始まるのだ。我々も行くぞ』
私は抵抗した。メサイアを助けるまでは動けない。
『メサイアは、私が行こうとしている所にいる』
えっ。私は一瞬何も考えられなかった。
それを見逃さず、ロベリアはクライトの考えを支配した。
「何を!?」
意識に反して、体が動く。木を飛び、行く先にはダークホール。
クライトの目は深緑から、金に輝くの目に変わっていた。
最近、五百年と連呼されるようになりました。
さっさと言えよ。と思っているかもしれませんが、暫くこの状態が続きます。
重要なヒントはこの間にポロポロ零しますので、しっかりチェックしてくださいね!
そろそろ、意外な方向に進めるますよ。
あと何話で変わるかなー。そろそろがだいぶ長いけど。




