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ウロボラズ外伝1 竜の仮面  作者: Lightning
真実と偽りの章
18/46

~間章~4

『所変わってガルダ達の話』

「これについて行くの?」

「クソイカレ頭コンコンチキ。あったりめえだ。この牛車はたぶん城に向かってやがる。オレらはつくづくタイミングがいい」

僕達は今、周りの人に見えなくなる魔法が掛かっている。

そして、牛車を目印として使っている。

偶然にも、道がわからなくなった時にこれが現れた。

「よく聞くんだぞボケナス。あの城に居座ってる王様がいる。奴はとんだバカだが力は強ええ。オレ達じゃあ、そうそう太刀打ちできねえ。いいな」

どうやら、この魔法は声も聞こえないらしい。

僕は頷いた。

「ここは真実の世界だが、奴も元々は“本当の世界”の奴だ」

本当の世界から、こちらへ移ったということだろうか。

「バカ、ボケ、大概にしろ、ジジイ級の頭の回転の遅さ。本当の世界でも、奴は力を振るってた。その頃も力があったが、今程じゃねえ。んで、オレらは今のうちにぶっ倒そうっつってな。倒そうとしたんだ」

たまにはガルドもいい事するじゃん。と感心する。

「あいつを瀕死の状態までやってやったんだ。でも、瀕死は演技だったんだ」

ぽけーっとした顔をすると。

「くそったれ、どアホ、ボケ、ぼんくら。あいつは長期戦になれば自分が不利になること位読んでた。んで、死にかけのフリして、オレらが油断した隙にだ。有り余る力で、この真実の世界とやらを創りあがった」

どっか行ったならいいじゃない。と思った。

僕の表情を無視してガルドは続ける。

「真実の世界は、世界の悪い事実だけを引っ張ってきてんだ。そして、それで軍隊を編成。昔以上に強い勢力で、こちらに攻めて来ようとしている」

「それと戦うんだね」

「アホンダラ。聞いててわかんねえのか。真っ向勝負して敵う相手じゃねえ。だから、てめえを連れて来たんだ」

ガルドが言葉を切った。

前方には、土をそのまま固めて作ったような洞がある。

「ここの人間の家だ」

「ニンゲン?」

「バカ、クソ、雑魚、脳なし、アホ。ここは、いろんな世界の悪い事情を引っ張ってくるっつったろ。だから、ニンゲンってやつらの住む世界とも繋がってんだ」

ガルドは家の周りにいる生き物を指した。

あれがニンゲンというのか。何か辛いことでもあったのだろうか。

すると突如、その人間は走り出した。

キィイイン。

甲高い、金属の音。

人間は相当な長さの刃物を持って牛車に走る。

牛の鳴く声。

人の喧騒。

揺れる牛車。

車輪のきしむ音。


あの騒動の後、僕達は牛車と別れて右側門に行った。

ちょうど出兵の時で、門は開けられていた。

姿は見えないわけだから、すんなり入れる。

「いいな。てめえは、これから本当の世界に出兵する隊に紛れ込むめ」

意外にも内部の警備は薄い。もともと侵入者が入るような設定にはなっていないのだろう。

両壁には先程の人間が持っていたような刃物が、整然と並べられている。

血の跡も無いが、生々しさや殺気が漂っている。

ガルドは箱のような物に近づいた。

きらびやかで、威厳のある装飾。

それにガルドは牙を立てた。赤い百舌の部分。しかし、ガルドの牙はそれ程丈夫ない。

「くそったれ」

ガルドは尾でそれを打った。

ピシッと気味のいい音をたてて、バラバラと砕けて落ちる装飾。

「何事だ? あっちだ。確認急げ」

「畜生。ウザってえな」

ガルドは牙を青く光らせた。

すると、僕達以外のものはユックリと動く。なんだか見てて面白い。

「ボケっとすんなバカ。王様っつうアホは強力な武器を持ってやがる。そいつは絶てえ倒せないから、撤退に持ち込ませるしかねえ。てめえは百舌の代わりに貼り付いて、合図を出したら攻撃を開始しろ。補給物資と援軍を絶つんだ」

そう言っている間にも、僕は百舌のいた場所に貼り付けられた。

「ちょ、ちょっと待っ……」

ガルドは門の外に逃亡。姿を消した。

同時に魔法も切れる。

「あれ、何してたっけ?」

何を言っているかは知らないがのほほんとした雰囲気。助かったみたいだ。

それにしても僕、いつまで貼り付いているんだ?

********

『またまた、新しい登場人物……かな? ここは何世界か教えてくれって? それは、君たちの方がよく知っているはずだよ』

「ん?」

グラジオラスは起きた。

テントの隙間から日が射し込む。

今日はなんだか早起きのようだ。いつもなら、軍の中で一番最後に起きる。

横で音がした。

「お前もか」

ザミアだ。僕とザミアで特務部隊を編成し、活動する。

体がいつも以上に軽い。

「なあ、お前の魔力も薄れてきたんじゃ……」

「黙れ」

ザミアは狂気して、銃口を突きつけてきた。

「わかった。……わかった」

手をあげて、降参を示す。

あの時から、もう少しで五百年。その時僕は、突然人間世界へ行く事になった。

ここは人間のいる世界。通称、地球。

ここは戦争が絶えない。僕らも兵士だ。

「いよいよ最終決戦ってやつだな」

僕はボソリと言う。



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