~冒険~間章1
『やあ、お久ー。ちょっと時間を戻してガルダ達の話だよ』
「これから、どうするの?」
「あん? “真実の世界”へ行く」
「本当の世界じゃなくて?」
「バカ、ボケ、クソ、カス、クズ、アホンだら! オレが順を追って説明してやるつってんだ。黙ってついてこい」
また命令。全く飽き飽きする。
僕達は今、明るい森を西方向に進んでいる。メバビが何者か(多分シャドー・アルケミスト)に奪われる事故があったが、その他は順調。もう一回シャドー・アルケミストに作って貰ったらってきいたら、誰があんなクソジジイに頼むかって言われた。
危ない。ガルドは後ろにお構い無しで急に止まった。そして、とぐろを巻いた。……動かない。
「てめえ、まさかこれ見てオレが何してえかわかんねーのか」
必殺。黙って誤魔化す。
「待ち伏せてんに決まってんだろ」
ガルドが荒野の真ん中辺りを指した。
「あっこで今日は何かが起こる」
ガルドはお伽話の悪役が出てくるようなシーンのイントネーションをした。気味悪い。
ここは森の中でも、一番荒野の中心に近い場所だ。何より、暑い。もともと、この場所は南よりの為暑い。そして今日は異常なまでの猛暑。更に言うなら真昼。反射熱にやられないように木の上に止まって休む。口を開けてダラんとした。もう限界だ。水を飲ませろ。
「ヒュン……」
一瞬ヒヤリとして振り返る。暑さでジリジリと鳴っていたような淀目いた空気も動きを止めた。静寂が全てを包む。
その時、小さな黒い点が出現し、瞬く間に渦を描いて広がった。黒い渦。
「ウオオオオ……」
「行くぞっ!」
ガルドは森を飛び出し、荒野に出た。僕も慌てて翼をはためかせ、後を追う。ガルドのスピードなら、*ソアリングだけでいける。もし、しょっちゅう羽ばたき続けたら、翼がピリピリして、どうにもならなくなる。
『ソアリンングは、羽ばたいて、滑空してー。を繰り返す飛び方だ。種類によって、やり方が少し違うらしいな』
穴があいたのは歪んだ木の傍で、ユニコーン達の行った森側に寄っている。声の主を探して木の方を見る。
「……!」
見るべきではなかったと言うべきか。黒い帯は白骨を振り回し、鉄の棒を叩きつけてまわっていた。穴から、次から次に出てくる。
まるで、ビースト達みたいだ。待てよ。
「ガルド、まさか、あれを捕まえるの?」
奪われたビースト達の代わりにあいつらを捕まえる。ガルドならやり兼ねない。僕は断固反対だ。
「てめえが、そこまでイカレタ頭を持っているとは思わなかった。オレとしたことが。計画ミスだ」
ガルドはハアハア言いながら答えた。疲れのあまり、自虐的になっている。
「ほら、あいつらも気づいたみたいだぜ」
ガルドは尻尾で指す余裕が無かったが、言いたい事はわかる。東の森に、白いのが二頭浮き上がっている。
僕達は、あの黒い帯の裏手にまわっている。黒い帯は東の森へ進んで行く。僕達には全く気付かない。僕達のちょうど延長線上に彼女らがいるはずだが、黒い帯のおかげで見えていない。あちらは僕達に気づいてないはずだ。
「臭っ」
吹き上げた熱風とともに、奴らの匂いまで乗ってくる。近づきたくないが、ガルドは黒い帯に向かっていく。黒い帯が目標地点で、森が出発地点とすると、僕達は五分の四程度の位置にいる。
「しまった! かわせ!」
僕は熱風に乗って宙返りし、ガルドを追った。何をかわすというのか。黒い帯だって……。
「バアアアン」
後ろから上昇気流で持ち上げられる。僕のように尖って短い翼はグライディングは適するが、上昇気流では安定しない。しかも、目に砂が入って見えない。僕にも*瞬膜があればいいのに。
『瞬膜は、透明な、鳥にとっての第二の瞼って感じ』
あらゆる方向から砂がぶちつけ、体がまわっている。方向感覚なんて無い。
「クソ御節介なバカ鳥め」
ガルドが喚いているが、当然聞こえない。風がワァンワァン唸ってる。ガルドの目には、竜巻のような風の奔流に巻き込まれるガルダの姿が見えていた。
ぶつかるっ。突然、殺気だったものが近づいてくる。強い気配。
風の向きよ、変わってくれ。だめもとで願っていた。
「ビュウウ……」
風は吸い上げるように高速で吹き上げて、掴んでいたものを外に飛ばした。当然、ガルダは一旦風に吸い込まれた後、ガルドのいる方に吹っ飛ばされた。
「こん畜生。てめえ、今自分で何やったかわかってんのか、おい。ボケ野郎め……。あーもう。奴らに気付かれる前に入るぞ」
入るってどこに……?
「あの穴目掛けてだ。早く行け。お前は目立つ」
あの黒い帯のわき立つ穴へ入れと? そんな無茶な。なんで今頃彼女ら見つかるのを恐れる。躊躇していると、ガルドが追いついてきた。
「さっさと行け。オレに喰われてえのか!」
東、南、北、黒い帯。西ガルド。頭上は暴風。こうなると、ガルドが僕のことを殺せないなんていう契約は綺麗さっぱり忘れ去られていた。
「ブオン」
暑い。いや、熱い! 目の前に火の玉が迫ってくる。
「てめえがグズグズするせいだ。このクソノロマめ」
ガルドは喋りながら魔法を使うという曲芸を発揮した。
「耳ふさげ」
従った方が良さそうなので、一時ガルドの横に着陸。翼で耳を塞ぐ。
「ドオオオオ」
自分の周りで虹色の光をだすドーム状の壁。そこを炎が舐めて……。なんか黒いのがいたような。
天井から恐る恐る視線を下げる。…………いた。
「おっと、バリアが広すぎたなあ。いっちょ殺るか」
いや、いっちょ殺るかじゃあすまない。ざっと計算して、さっきの勢力の三分の二は入っている。あの火の玉も意味がわからないが、せっかくの攻撃を無駄にして敵を保護するガルドのセンスの方がもっと意味不明。いや、意図的にここで僕を困らせる気か? ちょっと待て。こんなに広いなら、穴も入ってるんじゃないか?
「ねえ、穴もバリアの中に……」
「バカ、ああいう力の強いものは入らない」
確かに、どこにも穴や歪んだ木の姿はない。
「そして燃えちまう事もねえが、穴の奥にいる彼奴らのお仲間は、今待機状態になる。バリアの中には入らんねえが、バリアの外で止まっちまう。オレがバリアを消したら大軍がドオッ……」
ガルドは見切った。黒い帯はのろのろと僕らに近づいてくる。そして、炎は消えた。
「ピシッ」
ガラスの割れるような音がして、バリアは砕ける散った。バリアの破片は落ちることなく消えた。
「ウオオオオ……」
待機していた大軍が押し寄せる。ガルドは素早い身のこなしで向かってきた奴に尻尾の一撃か頭突きをお見舞いし、気付かない奴らの間を縫って進んだ。僕は、飛び上がって、鎖とかを振り回す奴らに警戒しながら向かった。
「行くぞ」
*ソアリング=羽ばたきとグライディングを交互に行う飛び方。種類によってソアリングの仕方は異なる。
*瞬膜=鳥類が持つまぶたの他にある透明な膜で、カワセミは水に潜る瞬間この膜を使います。目を保護する為のもので、透明なので外の様子はわかります。
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