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ウロボラズ外伝1 竜の仮面  作者: Lightning
真実と偽りの章
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~冒険~セラフィナイトとフィーナ6

ドブネズミがメサイアの左側に回り、左腕を掴んで強引にまわした。その後、見ているだけで悲鳴をあげそうなほど、腕を握るようにして、袖をあげた。

そこには、大きく蛇のような、よくわからない怪物の絵が描きかけてあった。

『捕まるたびに、これを描かれるんだ』

ドブネズミはまた強引にまわして、メサイアを前に向かせ、自分は持ち場についた。持ち場は私の隣だ。

私は、緑の琥珀について聞けずにいた。なんだか聞かない方が良さそうだった。

『ねえ、ハツカネズミって何で喋らないの?』

『あいつの方がドブネズミより位が上なんだ。で、ドブはハツカに気に入られようと頑張ってる。そのためには、わざわざ面倒くさい事をさせないようにするってのが二人組活動の時の礼儀だ。ここの兵士はみんな上の人に嫌われると死ぬ。だから、相手を注意したり面倒くさい事するのは、下っ端の役目。相手を侮辱する時は、上の人が言うんだけどね。ともかく、ここの兵士の暗黙のルールなんだ』

やがて、二つの門が見えて来た。門というか、奴隷用の車の側面をそのまま、はめ込んだ感じ。

『あれは、オリだよ』

前を行っていた牛車は、門の前で止まった。左側の門の担当の人が門についていた金属をガチャガチャ言わせて開けた。

『ナンキン錠だ』

御者はオリの部分を開けた。すると、足に錘をはめられた人々が、行列をつくって門の奥に消えて行った。

「痛っあ」

尻尾を引っ張られた。ドブネズミだ。

『こっちに来て。牛車にひかれる』

メサイアの呼びかけで、やっと意味を理解し、脇によける。兵士の近くに行くと、つんとた匂いが鼻につく。要するに臭い。

ガタガタガタガタガタン。

牛車は牛だけを動かして、進行方向につけなおした。そして、車自体は方向転換せずに、石畳を走り去った。

『行くよ』

私達は右側の門の前に立った。左側の門より厳重で、何重にもオリが重なっているのが見える。

兵士達が、一つにつき三つもある鍵を開けていく。

九つ目の門。これが最後。視界はかなり狭くなり、メサイアの服が多少見えるくらい。

『ねえ、なんで足に錘がないの?』

長距離を歩くことになったとはいえ、メサイアは奴隷ではないが、より注意しなくてはならない再犯者だ。なぜ自由にしてある。

『僕が逃げないのを知っているからさ。あの二人は指揮官だけど、戦闘の指揮なんて全くとらない。位を上げただけで、意味はないんだ。あの二人の役割は、僕の専属の追跡班だ。だから、僕が逃げないことも全部知ってる。君の場合は、王様への献上物だからだろうな。普通、動物を捕まえた時は紐で繋いで運ばれる。でも、君はその鱗と白い体と翼が珍しかったから、王様の所へ引っ張られる。王様に出すには、綺麗でなくてはならない。君のウリはその鱗になる。だから、鱗に傷をつけるわけにはいかない。それで、首に巻く紐は無いんだ』

考え方はわかる。しかし、私に鱗などない。脚にも腹にも背中にも。

『首にあるよ。多分、君自体は見えないんだろうな』

私達は、囚人の中でも、特別な者であった。ゆっくりとだが、確実に進み続けもう何も見えない。足音を頼りに感覚で進んでいく。

「あんたは特別な客だからなあ。拷問の様子でも見とけ。王様が来るまでな」

ーードブネズミは手招きで兵士を呼び寄せ、松明を持った。ーー

辺りが明るくなる。どこからともなく現れた松明。おそらく、ここで点けたのだ。ここの兵士は、暗くても、周りが見えるのだろうか。

「あと、吊り下げ用」

ドブネズミが喋ったが、何を言ったかわからない。メサイアが近くにいないのだ。知らぬ間に分かれてしまっていた。フィーナともはぐれてメサイアとも分かれてしまったら、助かる見込みはもう無い。

兵士が持って来たのは、松明入れが数珠繋ぎになっているものだ。これに、一つづつ火を点けるのだろう。

ドブネズミは、兵士が何かを持ってきたのを確認すると、どこかへ行ってしまった。あんな奴と一緒にいるのは嫌だが、また暗闇の中に取り残されるなんて。

しかし、予想に反し、点けたのは一番下だけだった。

ーーセラフィナイトが案内されていたのは一階。メサイアはいつの間にか、分かれて一つ下の階の牢屋に入れられていた。セラフィナイトの牢屋は床に穴が開いており、兵士は「吊り下げ用」の上部にあるかぎ爪のような部分を壁に掛けた。「吊り下げ用」はは穴を通って真下の部屋に落ちる。真下の部屋にいた兵士が一番下の松明に火を点けると、火は勢いよく上まで燃え移って登ってきた。ーー

揺らめく光が唸り声をあげながら上まで登ってきた。周りに何があるのかわからないのに、反射的に避けてしまった。それは、火だった。火は恐い。でも、明るいのは安心感がある。さっきの松明よりかなり明るい。これでわかったことは、牢屋と思っていたこの場所は、石造りの一角で牢屋ではない。門のありそうな場所にはアーチ状の入り口があるだけだ。

『そこは、兵士の控え室だ。牢屋の見張りの。それから、拷問の補助室でもある』

メサイアだ。一体どこに。何故場所を特定できる。その考えを感じとったのか、メサイアは付け加えた。

『僕は真下の部屋にいる。火を点けた時点で、周りの様子はだいたいわかる。あいつらの考えもね』

火を大嫌いだが、頑張って近寄ってみる。穴をのぞき込むと、下の部屋にメサイアがいた。造りは牢屋。中にはドブネズミもいる。

『隣に鉄の板が敷いてある。そこも穴だ。そこから、冷水なり熱湯なり落とすんだよ』

私は鉄の板を角で探ってひっくり返した。うるさい音が響いて、ビックリ顔のドブネズミの顔が覗く。うるさいと思うなら、うるさい音ばっか出すもので物を作るな。こっちだって音出すのは嫌なんだ。

ここからなら、周りの様子まで見える。ハツカネズミの様子も見えた。彼は何かキラキラ光る物を、近くの兵士に投げた。その兵士は、円柱状に何も無い空間の隣辺りにキラキラ光るもの(多分鍵)を差し込んだ。

規則正しく鳴る金属音。擦れ合うチャリチャリといった音ではなく、重く響かない、叩く様な音だ。

それが数十秒しただろうか。上から、豪勢な飾りをきらびかせて、何かが登場した。それは、メサイアの階で止まった。箱のようなもの。縁は金で飾られ、火に反射して揺らめいている。箱の形は直方体。正方形の面には、下地の赤に金の百舌が描かれている。片方の側面にはドラゴンを殺す絵。それ以外はわからない。すると、兵士が現れた。よく見えないが体格が良さそうだ。箱を持ち上げると、下に台のような物を滑り込ませせた。それは、四方に棒が突き出ていた。兵士たちは、次にその棒を肩に担いで歩き、メサイアの牢屋……拷問室に横付けした。

サァーッ。火がパチパチと燃える音しか聞こえないこの空間では、小さな音でも鮮明に聞こえる。箱のドラゴンの部分は障子戸だったらしく、中から何者かが出てきたようだった。しかし、ちょうど穴から覗けない所に出たので、どんな奴かさっぱりわからない。ドブネズミが恭しく頭を下げている。

王様だ。クライトは言っていた。悪くて偉い人がいる。たまに見物に現れて最低な事を言う。王様は、クライトや私みたいな別の世界者を面白がっているんだわ。

しかし、王様はその場から一切身じろぎもしていないようだ。私には用が無い? 王様はメサイアの牢屋の前で止まったまま。セラフィナイトはメサイアを疑いだしていた。何かある。何か隠している。王様はメサイアに用があるとしか思えない。

ドブネズミが王様のいる方向を見て頷いた。

「さーて。今回は口を開きそうに無いしな。やれ」

「ウオオオ」

地獄死人! いつ現れたの。どこからやって来たの? この一帯しか明るくないこの状況では、私まで襲われたら、何もできない。無意識に身震いをしている。それに気づいてさらに怖くなる。脚はすくんで動かない。何度目だ。いい加減これ位平気になれ。

意を決して、地獄死人の様子を見ておき、それから事を判断するようにした。メサイアの事だって知っていた方が良さそうだ。


最後に見えたのは、見覚えのある怪物の姿だった。



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