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ウロボラズ外伝1 竜の仮面  作者: Lightning
真実と偽りの章
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~冒険~セラフィナイトとフィーナ3

落ちる、落ちる、落ちる。

周りには何も無い。果てしなく何も無かった。


足元には雲が満ちている。その雲が目の前で形になっていった。

長く伸びて、現れたのは透明なドラゴン。クライトの言っていたドラゴンだ。


『心配しないで、セラフィナイトよ』


明らかに自分に言われた。しかし、自分はスピネルであってセラフィナイトではない。


『あなたがエレスチャル?』


クリュがきいた。エレスチャルは本に出てきたとおり、美しかった。


『そう、私はエレスチャル。狭間の世界の番人』


狭間の世界の番人は、その狭間から繋がれる世界の全てを知っている。


『あなたたちは、真実の世界を求めてきたのですね』


真実の世界って何だ?


『あなたたちが先程まで居たのは偽りの世界です。つまり、本当の世界の姿と喰い違っている世界。青龍を見たでしょう。あの者は本当の世界では世界を守る働きをしている者です。でも、森を焼いている悪者になっていたでしょう。そんな物騒な事が起きているのに、世界は幸せそうに見えている。真実の世界は、偽りの幸せの世界ではない場所ですよ。クライトはかなり辛い思いをしていましたよ』


真実の世界。その言葉は、深い悲しみを帯びていた。


『だから、偽りの世界で貰った名前は、本当の名前ではない。クリュ、あなた名前はフィーナよ』


エレスチャルは私達を見回して、


『人間は、狭間の世界の存在をほとんどが知らないわ。別の世界があることや、あなたたちの存在もよ。恐らく、苦しいことになるわ』


呆然とただただ話を聞いていた。


『さあ、真実は自分で見つけ出すものです』


エレスチャルは消えていく。その間際、一つの方向を指した。二頭は何のためらいも無く、その方向へ翔る。導かれているようだった。翼を広げて飛ぶ。


飛んだり駆けたり、楽しくなってきたその時、


「痛っ」


左足に痛みが走る。そしてじんわり温かい。

いつの間にか真実の世界に入っていたようだ。辺りは本当に暗く、ここは森のようだ。頭上には重たい雲がのし掛かっている。


ヤブに引っ掛かったと思って、もう一度駆け出そうとした。


痛い。引っ張り返された。一体何なんだと、足元を振り返る。


すると、鉄の輪っかが目に入った。それは、地面から生えた鎖と繋がっている。

鉄の輪っかは、私の足を確実に噛んでいた。細い足をうまく動かして、抜け出そうと努力する。

しかし、輪っかの内側にある針というか、棘に蹄が引っ掛かってしまう。


無意識に焦りを感じ、つい雑になって余計な悪循環を生む。

わかっていても、どうにもならない事の一つだ。それがわかると余計に悔しくて、もどかしくなる。


その時、何かが頭の上を通った。キーシャのような優しい雰囲気。しかし、キーシャはここに来ていないはずだ。


キーシャ、角……。そうだ。私には角がある。鎖の穴に角わ突き立て、横にブンと振った。

鉄が錆びていたこともあって、あっさり切れた。


でも、輪っかは付いたままで、歩く度に中の棘が突き刺さっては抜け、血が滝のように流れ出す。輪っかだけは、どうにも壊せそうにない。


引き摺りながら歩いていると、


「いたぞ! そこだ。何か引っ掛かったのに逃げやがった。血を追え。血を追うんだ!」


誰かが何かを言っている。細かい音の高低があり、私達の使う言葉と違うという事は……人間だ!

つまり、敵。


どうやら私は追われているらしい。

クライトもこんな風に追われたのだろうか。逃げる他、生きる術は無いし、目的も果たせない。

目的……クリュは!? クリュの白い体は見当たらないし、雰囲気もない。この世界に入る時に見失ってしまったの? 私は泣きそうになっていた。


友達が大事だってわかっていたのに、いなくなっても平気だと思っていた自分が少なからずあった。

私が何か悪い事をしたわけじゃない。クリュと離ればなれになる理由なんてないのにと、世界を恨んだ。


後を追う人は次々に増え、もう五十人近い。 距離はどんどん狭まって、地響きもモロに伝わってくる。

いくら視界の広い草食動物でも、後ろにばかり気を取られていては、とても低い位置の切り株なんて気づけなかった。


右側が沈み、視界がずれる。次は右前足を挫いてしまった。もう勝ち目は無い。恐怖でただ目を瞑ることしかできなかった。


「あの女が来た。あいつを殺せ。 その馬はいい。あいつを殺せ!」


私を追えと言った奴と同じ声。「そういえば死んでない」と思いつつ、立ち上がって上を見やる。

緑の服の髪の長い女が木の上を飛び回って逃げていた。そうだ、私も逃げなくては。私は飛べるんだ。


小さな事で恨んだり、大切な事ばかり忘れてしまう自分を叱ってベールの翼を広げようとした。

しかし、翼は強張って使い物にならない。


__そして、真っ暗になった__


セラフィナイトは、人間の男と女を、なんとなく見分けられます。

また、髪などは、動物界に存在しませんが、それ以外表現する方法を思い付かなかったので、髪はそのまま表記します。

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