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北陸、すだちと私

作者: 鈴川愛夏

23時に眠ったはずが、目覚めたのは3時20分。

「おかしい、まだ夜やんけ」と時計を見る。原因は明白だった。昨日のコーヒー、家のコーヒー、車中のアイスティー。……カフェイン三連撃。自分が弱いことを忘れるとは、完全にうっかりである。

しかし、起きてしまったものは仕方がない。湯船にちゃぷんと浸かり、Kindleで漫画を読み、日記を書きはじめる。夜明け前の数時間を「得した気分」で過ごすあたり、我ながら図太い。

7時半にチェックアウトし、ジョイフルで朝食。メニューを眺めながら、なぜか「関西風お好み焼き」に手が伸びた。届いた瞬間、冷凍食品感が押し寄せてくる。

「なぜ私は納豆を裏切ったのか……」と早朝から後悔する。

気を取り直して店内の絵画をチェック。油彩、アクリル。だが、なぜかどれも小さくて下手くそ。美術館帰りの自分には目が肥えすぎているのか、少し切なくなる。

車に戻ると、FM富山から流れてきたのはまさかのシューマン《トロイメライ》。

「おい富山、なんで今これ?」とツッコミながらハンドルを握る。

ガソリンスタンドのトイレには、コオロギが静かに鎮座。そして壁には額装された巻貝。

「なぜここで額縁芸術……」と笑いをこらえる。

石川県へ入ると、兼六園は素通りして金沢21世紀美術館へ。開館5分前なのに長蛇の列。

観察してみると、人々は二種類。

①インスタ映え狙い組

②ガイドブック忠実組

私はというと③「美術愛ゆえに等伯へ直行組」である。

展示室では、サム・フォールズの抽象画に「おぉ」、今津景の油彩に「いいねぇ」、風間サチコの木版画に「気が遠くなるぅ」と感嘆を連発。

極めつけはケントリッジの《時間の抵抗》。突然鳴り響く不協和音トロンボーンに「上手いのにわざと外すんかーい」と心で突っ込む。だがその瞬間、美術とは音も匂いも全部ひっくるめて「アリ」だと悟る。肩の力がスッと抜けた。

女子トイレが作品化されていると知り、長蛇の列に並ぶ。普通なら苦痛の待ち時間が「ちょっと楽しみ」に変わるのだから、美術は偉大だ。入ってみれば、水晶と怪しい照明、下手なギターに音痴な歌。……なぜかクセになる。

その後、七尾美術館へ。駐車場で米を浸水させてから突撃。

等伯の波濤図を前に涙し、松林図屏風の寒々しさに震える。感極まって「もう思い残すことはない」と思ったが、すぐさま「いや、楓図屏風を見るまでは死ねん」と考えを改める。人間、欲は尽きない。

漁港で炊き立てご飯と刺身を頬張れば、すだちが全てを引き立てる。昨日の寿司屋の記憶は「幻」認定。芝生に寝転び、空を仰ぎながら「ダイヤス最強説」を確信する。

夕刻、民宿「青柳」に到着。お風呂で温まり、暴君ハバネロをかじりつつ等伯図録を復習。WiFiがあると知り、「民宿なのに?」と笑う。

こうして一日を終えた。

北陸の空と海、美術と食と、そしてすだち。

すべてが少しずつ笑えて、忘れられない一日になった。



昨日の北陸旅の日記を間違えて短編登録してしまって、連載のやり方が、分からないので、今回の旅は全部短編登録にしてみます。


帰ったらシリーズとして気が向いたらまとめるかも・・・

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