転生者、冒険者になる
「何か一気に稼げる仕事ないかなぁ」
「…どうしたの?急に」
フェローはそう聞くが、父親を見つけるという目的を出した俺にとっては当たり前に立ち塞がる問題だ。
金がないと何もできん、今日を生きることすら難しいだろうし、ずっとフェローに頼り切るわけにもいかない。
「そうだなぁ…あ、冒険者にでもなったら?日払いだし報酬の良い依頼もあるよ」
「冒険者?ああ、確か魔物?ってのを倒したりする仕事のことだよな?本にあった」
「そう、大体は何でも屋みたいな感じだけど、たまに『洞窟の探索』って依頼が出ることもある。そこで見つけた物は自分の物になるんだ。」
「へぇ、何で冒険者って呼ぶのか意味わかんないけど…確かに金は稼ぎやすそうだな」
「極稀に過去の先人が残した文献が見つかることもある。もしかしたら転生者に関する文献もあるかもね」
「本当か!?じゃ行ってくる!」
「でも冒険者は危険な職業。フライズごときで死にかけてた貴方にお勧めできる仕事じゃない。やっぱ無しだね」
フェローがそう言ってコウヤの方を向くともう誰も居らず、ただただ扉が開いて風が吹き込んでいた
「ええ…話くらい最後まで聞きなよ…」
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アセロラに着いたコウヤは冒険者ギルドを探していた
「本にあった通りだと冒険者ギルドってので冒険者試験を受けることで晴れて冒険者になれるんだな?さてギルドはどこかな〜…っうお!」
「あん?」
よそ見しながら歩いていると、大柄の厳つい男にぶつかってしまった
「どうした兄ちゃんこんな所で〜冒険者っつってたがもしかして冒険者になりたいのかぁ?そんな体格で?そんな変な服着て?危ねーからやめた方がいーぜー?」
「「ギャハハハハハ!!」」
側にいた取り巻きの男達が笑ってきた
(いや…正直全くその通りなんだが、ここでただ帰るのもな…)
「あ!おい!どこ行くんだお前!待て!」
取り巻きが止めるがコウヤの耳には少しも入らず勝手に歩いていく
(『過去の先人が残した文献』も気になるし…でも死の危険性もある…う~む)
「どっかいっちまいましたよ兄貴…どうします?」
「ああ…一人じゃ危ねーから家まで送ってやろうと思ったのに…」
「さすが兄貴!心優しいぜ!一生ついて行きます!」
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そう考えている内に、いつの間にか冒険者ギルドの前へと着いてしまった
「ん!?これ、ギルドじゃないか、せっかく着いたのなら試験だけでも受けてみるかな…」
ギルドの中に入ると、騒がしくも明るい雰囲気で包まれていた。コウヤは受付へ冒険者試験を受けに行った
「すみません、冒険者試験を受けたいのですが」
「はい、30000ギルになります」
「あ、金必要なのか…そんな持ってねーな…どうしよう」
「持ってないのなら受けることはできませんが…」
「いや、待ってくれ!…でもそんな大金ねーんだよなぁどうしようか…」
「ほらそこのアンタ、30000ギルだ、これで受けな!」
お金がなく焦っていると、隣でさっき見た男よりもさらに大柄な男がコウヤに30000ギルを渡してきた
「え…いやそんな大金」
「問題ねえ!俺は新人が大好きだからよ、応援させてくれ!」
少し怪しさも感じたが、冒険者になるにはこの金を受け取るしかない。冒険者になると決めたからにはこの男が善人であることを祈るしかないな
「そっか、ありがとな!後で返す!それじゃ受付嬢さん、これでお願いします!」
「はい、承りました。それではあちらでお待ちください、もう少ししたら試験官が到着しますので」
「頑張れよ〜応援してるぜぇ〜」
そうして待っていると、続々と他の冒険者志望の人が集まってきた
「結構いるもんだなぁ…それにしても俺の事をジロジロ見てるような…こんな服着てるからか」
その時、ギルドの扉が開き試験官らしき黒髪でつり目、黒い服に小物入れがついたベルトを巻いているいかにも厳しそうな男が入ってきた
「やあ諸君、私は今回の試験官をつとめるA級冒険者トウスである。それでは早速試験の内容を説明する、一度しか言わないからしっかりと聞いておけ」
「これで合格して金をたっぷり稼ぐぞぉ〜」
「冒険者になればモテるに決まってる!」
(A級?この世界にアルファベットなんてあったのか?いったい何故…あぁ、しっかり話を聞かないと)
「まず、試験場所は『神遺の森林』だ、そこである草の採取をしてもらう。詳しい内容はそこで話す。ついてくるべきである」
「なんだその変な話し方…」
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神遺の森林に着くと、トウスが話し始めた
「ここで採取してもらうのは万能薬の素となる『メディカ草』である。ここは魔法樹から常に魔力が出されていて魔力切れの心配はない。試験には最適な場所である。」
(ん?何で魔力の話?…でもそれ以上に、何か違和感が…何でだろう)
「メディカ草は光輝くので見つけやすい…が希少な物故、乱獲防止のためこの中から合格者は一人出た瞬間に締めきらせてもらう。」
周囲にざわめきが起きる
「一人?この中に何人いると思ってるんだ!?」
「おかしいだろ!金返せ!」
トースに向かって罵声が届くが、そんな事は気にせずただ一言
「それでは、試験開始である。」
と宣言した
「や、やべーよ!先着1名だから急がねーと!どこだ!?どこだ!?」
「光る草を探せば良いんだな!?メディカ草〜どこだどこだ!?」
焦って探す者たちを尻目にコウヤは1つ疑問に思っていた
(死の危険が伴う試験がただの薬草採取?何か色々引っかかるな…いや、急いで探さないと落ちる。探しながら考えよう)
その後ろで試験官のトウスは小さな声で呟いた
「近頃は自分の力試しのために受ける者が多い。そんな人間に対しても、こんな悪趣味な試験を作るギルドに関しても非常に不服である。ともかく、遊び半分で受ける物ではないということを理解させるのが私の役割である。」
そしてその瞬間______
「き、きゃぁぁぁぁぁ!」
他の受験者の叫び声が聞こえた。コウヤ達はその声のする方向へ向かって見ると、自分の数倍ほど大きな狼がトウスの体を貪り食っていた
「ふ、フェンリル!?こんな所に出るのかよ!?殺される!」
「逃げろ逃げろ!その試験官が食われてる間がチャンスだ!」
他の受験者が逃げ惑う中、コウヤは一人足を挫いた男を発見した。
「う…いてぇ…」
ここで逃げなければ死ぬ危険があるのは当然だが、それ以上に自分が警察官であることを思い出す。
人を助けられるような人間になる。それを捨てていいのか?
父さんなら、警察官なら、助けるな。
「な、なんで俺を助けに!?フェンリルの前に立って、殺されるぞ!」
男が驚きの眼差しでコウヤを見る中、コウヤはフェンリルと目を合わせたまま動かなかった
「さてと…」
策は一つも無い!
そう思った瞬間にフェンリルはコウヤ目掛けて爪を振り下ろしてきた。間一髪で攻撃を避け距離を取ることに成功する
「あんなのくらったら終わりだな…アンタ!この隙に逃げろ!」
「あ、あぁ、わかった。すぐ助けを呼んでくる!」
『グォォォォォォン!!』
フェンリルが遠吠えをしたかと思えば、コウヤのすぐそばに雷が落ちる
「………は?」
「アンタ!フェンリルは魔法で雷を落とせるからな!気をつけろ!」
そのことを聞いてコウヤは死を覚悟した。
「クソ…いや待てよ…今俺にはこれがある…他に見てる奴はもういないだろうし、よし!」
コウヤは手袋を外し近くに落ちていた木の枝を握る
「木の枝なんか大した物にならないだろうけど…やるしかない…『等価交換』だ!」
(なんか武器…頼む!)
木の枝が姿を消し、かわりにコウヤの手に小さな枝が置かれた
「そ、そりゃそうか…」
フェンリルは爪を振り下ろすが、コウヤはそれを避ける
「よし…俺だって警察官なんだからできる…助けが来るまで耐えればいい…」
その後もフェンリルは雷や爪で襲うが、コウヤは顔に少し傷を負う程度で、怯まずにフェンリルが雷を降らせようと遠吠えをした瞬間、腹の中に潜り込んだ
「どうだ?雷、降らせられないだろ?自分に当たるもんな?」
「合格である」
フェンリルの口からそう言葉が放たれた
「え?喋っ」
「君の強さ、十分に見せてもらった、もう一度言う。合格である」
フェンリルの背中にある切れ目から死んだはずの試験官、トウスが出てきた
「これは3年間かけて自作したフェンリルの着ぐるみである。」
「は?どういうこと?」
「混乱しているか、無理もない。順を負って説明する。まず、試験内容の『メディカ草』の採取、あれはダミーである。」
「???????」
「遊び半分で挑む受験者を減らすためである。そもそもメディカ草は希少な物ではない、この神遺の森林には特に良く生えている植物だ。」
「は、はぁ…」
「神々しく光輝く姿が神の遺物に見えることから神遺の森林の名は来ている。まず、そんな事も知らない者に冒険者をさせるわけにはいかない。」
試験開始前に感じた違和感の正体に気付きはしたものの、その違和感を何故感じたのか…その謎は未だに解けない
「なるほど…なんか引っかかると思ったらそういうことだったのか。その割には全然見つからなかったけど」
「メディカ草は夜にしか顔を出さない、この時間に見つけるのは困難だろう。そして私がこの着ぐるみを着て実際に恐ろしい魔物が出た時に誰がどう出るのか。魔物に通用する実力かを私に見せる、それが本当の試験内容である。ともかくおめでとう。これから君は冒険者だ。」
「あ、ありがとうございます…って後ろ!」
「む…?ぬぉっ!」
林から出てきた本物のフェンリルがトウスの首を噛みちぎった。
「試験官!…クソっ…どうする…」
フェンリルが牙を剥き出しコウヤに飛びかかろうとした瞬間
後ろからトースがフェンリルの体を真っ二つに切断する
「言い忘れたが…私の得意魔法は『分身』である。今までのも、そしてこれも分身体だ。冒険者たるもの常に危険を怠らないようにするべきである」
「は、はぁ…」
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そうしてトースと共にギルドへ戻り、冒険者の資格を取ることに成功した
(今思えば酒飲んでるアイツも…あのお金くれた優しい人も…全部こんな厳しい試験をくぐり抜けてきた強者なのか)
そう思っていると、一人の自分より少し年下に見える、金髪に橙色が所々混ざった髪を後ろに流し、軽そうな装備を身に付けた少女が話しかけてきた
「ね、新人の冒険者君、私と一緒に『洞窟探索』行ってみない?」
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