転生者、特殊魔法を持つ
子供の頃の夢を思い出す。
将来は警察官になりたい。
父さんのみたいに沢山の人を助けられるような。
でも、そのためには今起きてる問題を知る必要があるし、いっぱい勉強もしなきゃいけない。
でも、そのためならなんだって頑張れる!
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「ごめんなぁ…昔の俺…」
日付が変わった頃、とある交番に勤める警察官、
羽房コウヤはため息をついた
「今の俺を見たら昔の俺はどう思うかな…ちゃんと人を助けられる大人になれたのかどうか…」
そう吐き捨てると、机に置いてあるコーヒーを持ち上げ一口飲み、ポケットからスマホと手紙を取り出してある事件について調べ始めた
ーーー
俺の父さん…羽房レイジは警察官だ。毎日遅く帰ってきて早く出勤する。でも家では優しくて、俺にとって理想の父親だった。
しかし、15年前、国家転覆を企てたカルト教の教祖、早乙女ルイを逮捕するために家を空け、そのまま行方不明となり、その犯人も父さんも見つからないまま事件は忘れられていった。
俺は父さんの事件に関わるために警察官になったんだ。いつか絶対父さんを探し出してやる。
でも、相手は犯罪者。やっぱり父さんはもう___
「いや!そんなわけないだろ!だって父さんは警察官だ…生きてるはず…」
父さんが俺に書いた手紙を見ながらよぎる考えを必死に否定し、仕事をしようとふと外を見る。すると、小太りで中年、丸い眼鏡をかけて左手に何かを握った男がこちらを見つめている。
ほら、困ってる人がいるし、ちゃんと仕事をしないと
「どうかしましたか?落とし物ですか?」
駆け寄ってそう聞くが、その男はまるで殺意に満ちたような目でコウヤを睨んでいる。左手には血まみれのナイフが握られていた。
その瞬間に空気が変わる。
「それ、どうしました?一度…」
言い終わる前に、男はコウヤに飛びかかり、腹にナイフを突き刺した。
腹に異物が刺さる困惑の後、激痛が走る
「がっ…熱っ…熱い…い、いぃ!お前…手を離せ…」
「あの女が俺を騙したからだ!何が『大好き!またライブ来てね』だよ!全財産はたいてプロポーズしたのに…!報いを受けろ!」
男は自分勝手な理由で何度も何度もコウヤの腹を突き刺した
刺される度に『死』の感覚を脳に刻まれるが、そんなことを感じる暇もなく
ただ『痛い』『熱い』『寒い』と思うしかなかった
「やっやめ…が…ぁあ…がはっ…」
「もう何人やっても同じだ!死ね死ね死ね死ね死ね!!!」
(ああ…冷たい…死ぬ…まだ何も出来てないのに……)
次の瞬間、男はコウヤの腹により深くナイフを突き刺し、そこで意識は途絶えた
そして_____目が覚めると見知らぬ大地にいた
「い、痛えええええええ!!!」
コウヤは地面に倒れ込んだまま腹を押さえて苦しんだ
「い、痛い痛い痛い痛い!し、死ぬってこんなに痛かいのかよぉ…うぐ…体がまだギシギシする…」
それからしばらくして落ち着き、辺りを見渡して自分が見知らぬ土地にいることに気づいた。遠くには大きな山が見える草原でコウヤは転がっていた
「てか…ここどこだ!?俺交番にいたよな!?死んだと思ったけど…生きてる!?傷もないし…あの男は!?」
辺りを探してみても、人や動物すら見つからず、ただ体力を消耗するだけだった。
「はぁ…はぁ…なんか腹が減ったな、どっかになんか食えるもん…」
それから何時間もたった後、ついに木になっている実を見つけた。しかし見た目は毒々しく、明らかに食べられるものではなかった
「食わなきゃ死ぬ…なぁ、食っても死ぬような気がするけど…でも、また確定で死ぬよりかはマシだな。覚悟決めます!」
そうして謎の果実をかじった_____
「これ…リンゴの味がする!美味いぞ!………………………ってこれ、リンゴじゃね?俺さっきまで変なの持ってたよな?あれ?」
先程まで持っていた謎の木の実は馴染みのある味、そして何度も食べたことのあるリンゴに変わっていた
そんなことある?
「どーいうことだ?この実が…リンゴに?とりあえずもう一つ…うわっ、リンゴになった!こわっ!?」
木の実を採るとその瞬間、実が光に包まれ、その光が収束するとリンゴに変わる。
そんな初めて見る果物に驚きを隠せず、何度か採ってリンゴに変えてを繰り返していると
突然大雨が降ってきた
「あ…雨?どっか雨宿りできるとこ…あ、あの洞窟とかが良いかな?」
近くにあった洞窟の中に入ると、会社のことを思い出し、不安な気持ちになりスマホや財布を探すが、ポケットには何も入っていない。
「やっぱおかしいよな…なんかスマホもないしここがどこかもわからん…確かに死んだはずなのに…おかしい。」
その瞬間、洞窟の奥からたくさんのコウモリのような生物がコウヤ目掛けて襲ってきた。
しかしその姿はコウモリと言い難く、目や鼻は大きな牙で潰されていて
それはまるで恐怖を体現しているようだった
「い、痛っ!ちょ、やめろ、俺は食い物じゃない!」
(クソっ…何かしら追い払えるものでもあれば…なんかナイフとかないのか?)
苦し紛れにコウモリを掴むと、先程のリンゴ同様光に包まれ、コウモリは小さなナイフへと姿を変えた。
「うおっ!ナイフ?まぁ…これでコイツらを追い払える!警官舐めんなよ!」
「…ん?あれっ」
ナイフを構えた瞬間、自分の体が地面に落ちる。
「え、体が動かね、あ、痛い、ちょっと待って痛い痛い」
倒れたコウヤを容赦なくコウモリは襲う。体を食われるたびに痛みでどんどんコウマの意識は朦朧としていく
「やべっ…また死ぬのか…?俺…」
『凍結』
その時、洞窟の中に銀の長髪で片目を隠した背の高い女が入り、コウモリを一斉に凍らせた、
そして倒れているコウヤを発見した
「ん?人?どうしてこんな所に…大丈夫?」
「大丈夫…じゃない…助けてく」
「あっ気絶した」
そこでコウヤの意識は途切れた
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「う、う〜ん、」
次に目を覚ますと知らない家のベッドの上で天井を眺めていた。
「あれ…俺どうなった?ここは…」
「私の家、傷だらけだったから治癒しておいたよ」
声がする方を向くと先程の長髪の女がいた
「その治癒ってのも良く分からないんだけど…とりあえず助けてくれてありがとう、えっと貴方の名前は…」
「ウィスト・フェロー、お礼はいい、他人と馴れ合うつもりはないから。動けるようになったら出てって」
「そ、それなんだけど…」
フェローに事の経緯を説明した
「ここがどこかわからない?気づいたらここにいたってそんな…本当なの?」
「俺も混乱してるんだけど…本当なんだ、」
「本当…?ちょっと待って、少し心当たりがある。これ持ってて」
コウヤに持っていた長い杖を渡し、ゴミ置き場のような所を漁り始めた
一瞬目が変わったような気がするが、まぁ気のせいだろう。
「…『転生者』…かも、別の世界から来る人間のこと。まだわからないけどね」
フェローは一冊のボロボロな手帳を取り出し読み始めた
「いや、俺は転生者なんだと思う。死んだ記憶はあるけど生きてるし…まだ理解できない所もあるけど」
「そう、じゃ気をつけて。貴方のいた世界にはない魔法や魔物が存在する世界だから。ま、でも貴方にも…」
話を遮ってコウヤは喋り出す。
「俺は本当に別世界に来ちまったのか…これはRPGでよく見る魔法の杖ってやつ?結構長くて重いな…」
「…えと…そのRPG?っていうのはよくわからないけど…それは魔法杖、魔法樹ユグドラシルで作られた特に貴重な逸品だから丁重に扱って。」
「うぇ!?そんな高そうな物だったのかよ…」
「世界一美味しい魚と言われているパファーホエール一匹と同じ位の価値があるの」
「知らない物で例えられてもなぁ…パファーホエールって…うわっ!え!?止まれ止まれ止まれ!」
フェローの後ろでコウヤの騒ぎ声が聞こえる
「うるさい、私の杖落としたりしてないよね?本当に気をつけてよ…?」
「いやでも…うわっ!ちょっと!」
コウヤの声を無視し本を読み続ける
「フェロー…さん!ちょ、これヤバいかも…」
「うるさい!少し静かにし…」
苛つきながら振り返ると、コウヤに渡していた杖は消え去っていて、かわりに一匹の魚が地面に落ちていた
魚は元気に床を跳ねている
「えっと…………………これ………何ですか?」
「パファーホエール………で私の杖は?魔法樹ユグドラシルで作られた最高峰の逸品は?」
「こ、これになりました……パファーホエールってなんかフグ鯨みたいですね…ほらト◯コの…」
「あ…あぁ…え…?」
気まずい沈黙が流れる。沈黙を破ったのはフェローの叫び声だった
「わ、私の杖がぁぁぁぁ!!!!」
「も、申し訳な…ぐぇ」
謝罪しようとするコウヤはまた気絶してしまう。
周りには泣き出す一人と急に倒れてそのまま気絶したもう一人というカオスな構図が出来上がっていた
「う…うぅ…zzz…」
「もう滅茶苦茶だよ!うわぁぁぁぁぁ!!!」
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「うーん、気分悪ぃ…」
ベッドの上で起き、横を見るとフェローがこちらに背を向けて何かを作っていた
「フェローさん、あの、起きました。なんかまた気絶しちゃったみたいで…あ、杖は…?」
「知らない…消えた…まぁもうそれはいい…とりあえず今作ったこの手袋つけてみて」
コウヤは黒い革の手袋を渡された。フェローの顔を見ると半泣きでさらに申し訳なくなった
「また変なのになったら悪いな…よいしょ、これでいいのか?」
怯えながら手にはめると、なんと謎の実やコウモリ、杖のように他のものにはならなかった
「お、おお!変わらない!凄っ!」
「良かった、やっぱり私の予想通りだった。」
「ん?どういうことだ?」
「まず、その手袋は私が前に洞窟で捕獲したフライズの皮を使ったもの」
「フライズ…あのコウモリみたいなやつか」
「フライズの主食は魔力を含んだ鉱石、それを消化して自分の体に魔力を蓄えるの。だからフライズの内皮は魔力を逃がさないような特殊な作りになってる」
「えと…それとこれに何の関係が?」
「貴方がすぐ気絶するのは魔力切れが原因だと思う。魔力は活動エネルギーの源、貴方の場合手から魔力が勝手に出てるから魔力が切れて気絶してしまった。つまりその手袋をつければ魔力は勝手に出ていかないってこと。」
「…とりあえずこれで気絶する心配はないってことだな?でも俺が触れた物が別の物に変わるのは何なんだ?」
「さっきも言おうと思ってたけど…それは貴方の持つ特殊魔法。転生者は必ず特別な魔法を持ってるの。」
「特殊魔法…転生者…わからないことが多すぎるけど、ありがとう、フェローさん」
「貴方の魔法が何か分からないけど、手袋をつけてる限りは他の物に触れても大丈夫…だと思うよ」
フェローが説明している途中、大事なことを思い出す
「あ!そういえば俺行く当てなくて…これからどうすれば…」
「…うん、分かった、この家の部屋の一室を貸してあげるよ。1回助けておいて見殺しにするのは気が引けるし…」
フェローは少し目を瞑って考え、自分の家の部屋の一室を貸すことにした
「!?、良いのか!?…本当にありがとう、見ず知らずの俺に何から何まで、フェローさんは面倒見がいいんだな」
「別に…困ってる人を放っておけないだけ…あと、フェローでいいよ」
フェローはそっぽを向いてしまったが、髪の隙間から見える横顔は少し照れているように見えた
「そういえば貴方の名前を聞いてなかった。何て言うの?」
「あぁ、コウヤだよ、ハネフサ・コウヤって言うんだ。よろしくな」
「そう、いい名前だね。私今から『アセロラ』っていう近くの街に行くから、そこで待ってて」
「待ってくれ!そこに行けばもしかしたら何かわかるかもしれない!ついて行かせてくれ!」
もしかしたらその街に行けば、俺のことが何かわかるかもしれない。
なら、行かない手はないな。なんとかしてついて行こう
「うーん、いいけど、そのかわり自分を転生者だと絶対に言わないで」
「え、なんで?」
フェローの目は明らかに変わり、一言信じられない言葉を発した。
「貴方の前の転生者がこの世界を支配しようとしたから。」
「そ、そんな事をする奴がいるのか…そりゃ転生者だとバレたら危険な目に遭うな、でも俺警察服だぞ?こんな物この世界にはないだろ?どうするんだ?」
「大丈夫でしょ、変な服着てる人なんて街にいっぱいいるし」
「えぇ…急に適当になったな」
「そう、じゃあ私の服着る?」
フェローは棚から着ている服と全く同じ服を出してコウヤに渡した
「こ、これ…ほんとに着るのか!?」
「ただの変態と思われるか、どっちがいい?」
「なんだよその二択!?そんなん一択だろ!?」
やっぱり杖のこと根に持ってるよな!?
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警察服を着て街に着いたコウヤはフェローと別れた後、他人の視線を感じながらもとりあえず情報収集のため人の多い通りを歩いていた。
アセロラという街は中世のヨーロッパのようで、遠くに見える城など初めて見るような景色に少し気分が上がっていた
歩いていると、人の少ない道に出てしまい、元の道を引き返そうとすると、とある光景が目についた
「き、きゃぁぁぁ!やめてください!」
「そんなこと言うなって、俺の女になれよ!」
明らかに嫌がっている女性に痩せ細った男が強引に近づいている。
叫び声をあげ、悲痛な目でこちらを見つめている彼女を見捨てることなどできない。今すぐあの男を引き離さなければ
そう思った俺は急いでその場に駆け寄り肩に手を置く。その瞬間男は隠し持っていたナイフをこちらに突きつけてくる
「なんだ!?もしやコイツの彼氏じゃねぇだろうな!ぶっ殺してやる!」
目の前の刃を見て、少し前に自身が殺されたものと似たような状況に狼狽えながらも警察官時代に鍛えた護身術を使う。
「うぉっっっ!?」
左手を包丁を持った手にスライドさせて軌道をずらし、その瞬間に手首を掴んでナイフを落とし、そのまま覆い被さって取り押さえる。その際に右手を掴まれ同時に手袋が外れる
「警察…舐めるなよ…!」
男は苦しみながらも近くに落ちていたナイフを持とうとする。
間一髪で先にナイフに触れることができた俺は必死に自分の力を使おうとする
「俺の力で…なんか…無害な物に変われ!」
この前のフライズや魔法杖が別の物に変わったことで自身の特殊魔法が別の何かに変えるものではあると理解はしていた。
しかし、ナイフには何も起きなかった
「…は?」
「?、どけっ!」
一瞬固まった体をどかされ、ナイフを取られてしまった。
「しまった…」
「死ねぇ!!!」
ナイフをこちらに向けて突進してくる男を咄嗟に受け止めようと覚悟を決めて目を瞑る。
しかし、いつまで経っても痛みは訪れず、ゆっくりと目を開けると男の手をフライズが噛み砕いていた
「ギ、ギャァァァァァ!!!」
「交換が成功した…のか?でも何でこんな物に?」
後ろの女性を見て、早く逃げるように諭した。
必死に女性の手を握り裏路地から出ると、息切れる彼女を落ち着かせた
「助かりました…ありがとうございます」
「いやいや、これくらいお安い御用だ。奥さんも旦那さんとお幸せにな」
「いや、私男ですけど」
「え」
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「ここが図書館かぁ、めっちゃ大きいな。」
彼女…彼?に何かこの世界の情報がないか聞くと『色々知りたいのなら図書館に行くといい』と答えたため、俺は図書館へと向かったのだ
中に入ると外から見た何十倍もの広さがあり、いたるところに本が置かれていた
「こりゃすげぇ…これも魔法なのかな?とりあえずどれから手をつけようかな…」
本を吟味していると背後から司書が話しかけてきた
「あの!本好きなんですか!?あ、ようこそアセロラ図書館へ!私は司書のエストと申します!早速ですな好きな本のジャンルは何ですか!?恋愛?冒険?それとも…あ、喋りすぎですよね…すみません」
「いや…大丈夫、ジャンルっていうか俺はこの世界のことが知りたくて…」
「え?この世界のこと?」
「あああ、いやいや、ちょっと今まで閉鎖的な村にいたもんで外の事に疎くてね…」
「ではここらへんの本がオススメです!全部で1000冊くらいありますけど…」
大きな机の上に大量の本を積み上げコウヤの前に見せた
「こ、こんなに…」
「さすがに多かったてすよね…今特に読んで欲しいものを厳選するので少々お待ちくださ」
「素晴らしい!俺、本読むこと大好きなんだ!凄い嬉しいよ!ありがとう!」
間髪いれずコウヤはそう言いエストの手を握った
「うぇ!?は、はぁ…それでは、私他の仕事がありますので!ごゆっくりどうぞ!あと図書館ではお静かに!」
図書館の奥へ行ってしまった司書を尻目にコウヤは本を開いて一冊一冊、とてつもない速さで読み始めた
「そう言えば俺速読が得意だったなぁ…本を読むのなんて久しぶりで忘れてたよ」
なになに…魔法ってのは色々あるんだな?炎魔法に水魔法…位置交換魔法なんてのもあんのか!
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その頃、フェローはフライズの皮や内臓を売りに出していた。
「はい、このくらいの金額で買い取るよ」
「うん、わかった。いつも買い取ってくれてありがとう」
「いやいや、フェローちゃんの持ってくる物は状態が良いからね、今後ともご贔屓に頼むよ。あと、なんかいつもと雰囲気が違うような気がするけど何かあったのかい?」
「いや、なんもない。何もない、なんもない、なんもない」
店主のお爺さんはそう問いかけたが男と暮らすことになったとは言いにくく、誤魔化した。
しかしお爺さんは容赦なく追撃をする
「お?アンタのいつも持ってる杖もないな…」
「そ…それは…いや何もない、本当に」
杖を無くした悲しみを思い出しフェローは瞳に涙を浮かながら言った
「そ、そうかぁ…これ以上の詮索はやめとくよ」
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「もうこんな時間なのにコウヤ帰ってこない…まさかとは思うけど速攻でバレて捕らわれたんじゃ…」
フェローが心配していると、扉が開き、コウヤが普通に帰ってきた
「ごめんごめん、図書館で1000 冊くらい読んでたらこんなに遅くなっちまった」
「せ、1000冊?そんな量を読み切れたの?」
「もちろん、それより前にフェローが読んでたあの手帳、あれを俺にも読ませてくれない?」
フェローの横に置かれた手帳を指差しそう言った。
その手帳に転生者のことが書かれているのだとしたら、何かが確実にわかると思う。だから読みたいと言ってみたのだが、何故か彼女はそれを拒否した
「…だめ、理由は言えないけどこれを貴方は見るべきじゃない」
…でもここで読まないといけないような気がした。
俺は買っておいた新品の全く同じ手帳を取り出し、手袋を外してそれに触れる。
すると、一瞬の内に新品の手帳はフェローの持っている手帳へと変化し、その場には2冊の全く同じ手帳が存在する。というおかしな空間が広がる
「わかった、とりあえず俺は部屋に行くよ、それじゃ」
「うん、一番奥の部屋だからね、間違えないでよ」
「了解。」
部屋に行く前にコウヤがずっと疑問に思っていることを質問した。
「…そういえばフェローはさ、ずっと左目に髪がかかってるけど…それ見にくくない?」
「これ?………えーと…ま、細かいことはいい。それよりも早く部屋に行ったら?疲れてるでしょ?」
「ふーん?ま、いいや。それじゃ部屋貸して貰うよ?」
「うん、それじゃまた」
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部屋に行き、ドアを閉めて周りに誰もいないことを確認するとフェローの手帳を取り出し、自分の特殊魔法を考察した。
今日の出来事と図書館で読んだ話…これらを踏まえて
俺の特殊魔法を名付けるなら
『等価交換』
だ。同じ価値の物を入れ替えることができる魔法…なのかな?新品と中古が等価なのかはわからないけど…
それより!フェローが来る前に早く手帳を読んでしまおう
そう思って手帳を開く_____
その瞬間、手帳から炎が燃え盛り、手帳を燃やした。
「う…マジか!?ま、待て待て待て!」
全てが灰になる前に1ページだけ破り、必死に消火した。あんなに燃えていたのに他の物には燃え移ってはいなかった。
不思議に思いながらも魔法だと考え消火した紙に目を向けると、自分の中で信じられないような感覚が体を襲った。
その紙にはこの世に対する憎悪が書き連ねられていた。それ以上に、その筆跡は父親のものと酷似しており、加えて燃えてしまってその先は読めないが、一文だけ
『コウヤ、お前なら_____』
と読めた
「これって…つまり…」
父さんはこの世界にいるのか?
もしそうだとしたら、今まで行方不明だったのも頷ける。
…これは、またとないチャンスなんじゃないのか!?
「…今見つけ出すからな!待っててくれ、父さん!」
唯一の手がかりである紙切れをポケットにしまい込み、そう決意した。
「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけたら
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