邂逅
頭がくらくらする。きっと耳の周りに、熱がこもっているせいだ。朝起きてから、ずっとヘッドフォンをしたままだからだろう。僕の住んでいるアパートは木造建築で、壁が薄いので小さな音でも近所迷惑になる。
僕は狭い部屋のなか、空が暗くなるまでダラダラとyoutubeを見続けていた。もはや、アニメやドラマでさえ見る気にならない。感情を揺さぶられるだけでも、疲れてしまうからだ。
ひたすら、既プレイのゲームをVtuberが配信している姿を、コメントも打たずに無感情に眺め続けていた。これが僕のここ数年の主な時間の潰し方だ。
今年の春から進学した高校には、ほとんど馴染めなかった。授業があるとき以外は家にすぐに戻り、かといってやることもなく、自堕落に過ごす日々。生活リズムは崩れに崩れ、また精神的なストレスからなのか、睡眠の量がかなり減ってしまっていた。
さて、明日も休みとはいえ、夜中の3時を回ってしまったし、そろそろ眠るか。不規則な生活のため、眠気が来るのが中学生時代よりも突然な気がする。開いていたノートパソコンを閉じ、布団に横になる。また今日と変わらない明日がくる。なんの起伏も、希望もない明日が。
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「ごめんなさい。少しだけ、私の言うことを聞いてくださいませんか」
どこかで優しい声がする。きれいな女性の声だ。
不思議な浮遊感が僕を包む。どこかに連れていかれている…?なにが起きているのかわからない。ただ、なぜか僕の心は落ち着いていた。
「謝らないでいいよ」
と僕は答えようとした。しかし、口が動かない。金縛りか?そもそも、今の僕には口があるのか?よくわからない。よくわからないが…
すぅ、と僕の意識が遠のいていく。きっと、僕は何もせずともよいのだろう。なぜかそんな気がした。どこか懐かしい感覚に導かれて、僕は意識を手放した。
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「ちょ、ちょっと!大丈夫ですか!?」
はっと目が覚めた。そこには、見えるはずの自室の天井ではなく、既に定年退職されたのだろうおじ様おば様方が、目を丸くしてソファに座っていた。
あとがき
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