3月は失恋シーズン
「3月ね」
「そうだな」
「卒業シーズンよね」
「そうだな」
俺の机に座ったまま、俺に背を向けマツリはそう宣った。
「3月ね」
「それ聞いた」
「失恋シーズンよね」
「それドコ情報!?」
ちなみに俺たちの卒業式は来週だ。
「間違いないわ」
「間違いないんですか?」
「ほら、卒業して会えなくなるってんで告白するじゃない」
「まあ、そういう事もあるかもね。そういう知り合いがいないからよう知らんけど」
「こんな土壇場で内定貰えてないんだからほぼ失恋よ」
「言い方!?」
あと就職に例えるの止めて欲しい。
進学だからダメージ少ないけど4年後だったらリアルに想像してしまう。
とはいえ、マツリは続けて言う。
「とはいえ、失恋することには意味があると思うの。
卒業して会えもしなくなった相手にフラれる事もできずに12年も片想いとか、泣けるじゃない?」
「その12年ってどこから・・・」
「30歳の同窓会、とかかしらね?」
例えばあなたならそんなトコでしょ?と、マツリは肩を竦める。
なんともリアルなラインである。
「というわけで、」
「どういう訳さ?」
「告白、なさいな?」
と、優しい声音で囁く。顔は見えないが、微笑んでいたかもしれない。
「いや、好きな相手なんていないし」
「いや、いるでしょ?私は知ってるわ」
「いや、いないし」
「ヤマザキさん」
「……」
「…好きなんでしょう?」
「そんな誰にも言った覚えないし」
「そう?そういえば、ヤマザキさんは今日は部活の追出し会で、そろそろ終わる時間だったはずかなー?」
「……」
「3年間同じ学校にいて脈なしだったら、これからなんて候補にすらならないんじゃない?
それならさっさとハッキリさせてスッキリしなよ?」
「……」
「おおっと、そういえばちょっと今浮いた金があるのよね?
今なら失恋話を面白可笑しく聞き取りするためのカフェ代ぐらいは出せるかも知れないわ?興奮するわね」
「……」
「間違いない、とか言えないの?……あー、幼馴染として言えるのはココまでかな」
「……。……ありがと」
そういって席を立つ。戸を閉じる前に一言だけ掛ける。
「ちなみに俺の奢りでいいから。お手柔らかに」
「そっか、残念。いってら、ツカサ」
そう言って送り出した。
「……なあ、そろそろ発言していいか?」
「……空気読んでよ」
「……空気読んだから空気になってたんだろうが」
いや、ほんと。俺がいるのにいないかのように会話するの止めて欲しい。
確かに本に集中してる恰好は取ってたけどさ。
もしくは俺なら聞かれてもいいと思ったのかもだけどさ?
ちなみにツカサは俺の2つ前の席、マツリは俺の1つ前の席。自分の椅子座れよ。
まあ、それはともかく、
「良かったのか?マツリ?」
「だってハッキリさせないと私も動けないじゃない」
聞いてみたらそんな慎ましい返事が返ってきた。
何が慎ましいって、俺からみたらヤマザキさんは全然脈なしじゃないってトコらへんがだ。
5割、いや6割は堅い。100%とはいえないけど。よう知らんから。
3月は失恋シーズンね……誰に言った言葉やら。
ちなみにツカサとヤマザキさんは違う大学とはいえ同じ市内、マツリは他県だ。
そんな事を思い出していると、マツリのブレザーのポッケが震えた。




