表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/27

心機一転して新たな旅立ち

 オレは軍の留置所に丸一日入れられていた。

 ここは雨風を(しの)げるだけの酷い場所だ。硬く冷たい床に、臭いトイレ。味も良く分からないドロドロの食べ物。


「クロキ・アユム。釈放だ。もう自由だぞ」


 オリビアが檻の鍵を開けてくれた。ようやく解放だ。

 こんな恐ろしい部屋と世界から帰るために、早く西の国へ行き魔王問題を解決しよう。


「お前の事を王都に確認のまが取れた。このまま魔王討伐を継続しろとの事だ」


 あれほど追って来たのに、今度は勝手にしろか。あの王様の考えは分からないな。


「それと、護衛のために私も同行することになった」

「え!? 何でそんな事になった?」

「軍としても魔王討伐は任務の内だからな。それに、また道に迷ったり、魔力を暴走させては困るだろう? 王国のためにも協力してやれとのお達しだ」


 道に迷った訳でも、魔力を暴走させた訳でもない。

 少し生死の境をさまよって、異質な魔力を垂れ流したかも知れないが……

 

 でも、この世界の案内人は必要だろう。オレ一人では隣町に移動するだけでも悲惨だった。


「わかった。黒木歩(くろきあゆむ)だ。これからよろしく」

「オリビア・ロコットだ。こちらこそよろしく」


 そう言って微笑んだオリビアはとても頼もしく見えた。それが魔王討伐と言う信念からくる物じゃないと良いのだけれど。


 オレが魔王じゃなければ、クラスの皆と旅する事になってたかもしれない。

 そう言えば皆どうしてるだろうか。


「なあ、王都にはオレの友人も居るんだけど、そいつらの事は聞いてないか?」

「一緒に召喚されたって奴らか? 王都からは何も聞いてないな」


 あの召喚からだいぶ経ったけど、無事で居ると良いな。目指す場所は同じだし、いずれは会えるかも知れな。


 オリビアからオレの荷物を受け取り駐屯地を出る。

 そこで何故かエレナが待っていた。


「今日はアユムさん。私も道中ご一緒しますので、よろしくお願いします」

「アユムの魔力の調査を教会に依頼したら、教会の本部へ向かうことになった。エレナがその仲介してくれる」


 魔王の国まで真っ直ぐ向かうわけじゃないのか。余り詳細に調べられたら魔王の事バレそうだけど、正体を知るには調べるべきなのだろうか。


「教会は魔法の管理もしている機関だ。本部ともなれば高度な技術者も多いだろうから、今度こそ魔力の正体を突き止められるはずだ」


 魔法の専門家か。それは面白そうだな。

 今まで一人旅だったのに随分にぎやかになりそうだな。


「わかった、オレもこの魔力の正体を知りたいからよろしく頼むよ」

「はい。あ、自己紹介がまだでしたね。私はエレナ・フォンテーヌです。どうぞ、よろしくお願いします」

「黒木歩だ。よろしくエレナ」


 シスターと言う職業柄か、エレナはどこまでも丁寧で優しさにあふれている。


「そうだ。エレナ、魔法使えないと不便だから、オレの封印を解いてよ」

「それはできません。アユムさんの魔力は極めて異質で、周囲の人や動物に害が及ぶのです。だから安全を確認できるまで、封印したままですよ」


 なんだと。終始笑顔で厳しいことを言う。オレにも少し優しさを恵んでくれよ。


 封印された状態では魔力を体外に放出できないため、体内で完結する魔法しか使えない。

 体内で出来る魔法って何か有るかな……身体強化とかできるんじゃないか?

 あー出来そうな気がしてきた。道中時間あるし、ゆっくり考えてみよう。


……


 オレの目の前には今、念願の馬車と()が居る。

 次の目的地へも馬車で向かうのだ。もし、王都で馬車に乗れていたら、あんの壮絶な目には会わずに済んだであろう。

 

 皆は馬車だ馬だというけど、馬の見た目は巨大な鳥、もしくは羽毛の生えた恐竜だ。


「【ステート】」


=======================

 名前:ポー

 職業:御者

……

……

=======================


 動物でもちゃんと取得出来たな。ペット感覚で名前が付いてるのかな。でも御者って馬を操る人だろ? お前は馬側じゃん。


「……よろしくな、ポー……君?」

『ォォコアァ』


 あ、返事してくれたのか? ちょっと可愛いかも。

 あまり好感が持てなかった馬だが、ちょっと信用してもいいかもしれない。そう思いながらオレは馬車に乗り込んだ。


 個室の様に壁に覆われた客車には、オレ達三人の他に老夫婦が一組乗っていた。

 先程、乗り込む時にはエレナが手を貸していた。既に打ち解けており、楽しそうにおしゃべりしている。


 間もなくしてポーが走り出した。

 それと同時に馬車全体に魔法陣が展開されてすぐに消えた。だが、魔法が作動している魔力の動きは感じる。


「馬車は揺れが大きいから、抑えるための魔法が掛けられているそうだ」


 オレが驚いているとオリビアが教えてくれた。

 なるほど、確かにスピードの割に揺れは少ない。

 

「そんな魔法もあるのか。術者が居なくても魔法って動き続けるのか? 魔力の供給ってどうなってるんだ?」


 魔法は魔力を供給しないと動かないはずだけど、この馬車には乗客以外は居ない。

 

「馬車の何処かに蓄えてあるんだろう。魔力の補充が必要な道具とかはたくさんあるぞ」

 

 へー電池みたいな物なのか。

 ……じゃぁオレに掛けられた封印はどこから魔力を取ってる?

 蓄えてる道具なんてない、動き続ける為の供給元は……

 

「アユムさんは王都から来たのでしょう? 馬車に乗るの初めてですか?」

「あぁ訳あって王都からは歩いてきたんだ」


 経緯を簡単に話すとエレナは驚いていた。絶対歩くような距離じゃなかったから当然だろう。何故か老夫婦には『若いねぇ』と感心された。


 皆で話をしながら馬車の旅を楽しんでいると、突然爆発音が聞こえて馬車が浮き上がった。

 この馬の時速は40キロメートル程

 ↓からブックマーク・☆5・感想等ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の歩くんが好みです。 理不尽な状況から逃げる、という目的がはっきりして、応援してしまいます。 反射的な発想で機転が利いているキャラ! が、必死にがんばるのは、好感が持てました。 [気…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ