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事情聴取

 なぜかオレは兵士に捕まった。

 連れて来られたのは、街にある駐屯地の一室だ。牢屋ではなく取調室といった様子だ。


「お久しぶりです、オリビアさん」

「あぁ久しぶり、エレナ」


 オリビアと呼ばれたのは、オレを捕まえた女性兵士。エレナは、兵士の依頼を受けてやって来た教会のシスターだ。


 澄んだ空のように青みがかった髪が、鎖骨辺りまで伸びている。

 丸い輪郭と目が愛くるしく、オリビアよりも低くいその身長が、幼さを引き立てていた。


 そして、オリビアとエレナによってオレは命の危機にさらされた。


……


 三時間程前


 オレは駐屯地の取調室にいる。

 オレを捕まえたのは、城の兵士ではなく軍隊だった。

 軍隊は国外からの脅威、特に魔族に対して防衛・殲滅する組織らしい。


 オレを捕まえた理由を聞くと、『異質な魔力を感知した』とオリビアから告げられた。


 オレが魔王である為か、体内の魔力量が多いのかもしれない。それがダダ漏れだったようだ。

 後、オレが勝手に『魔力』呼んでいた物だが、この世界でも同じ認識のようだ。


 オレを尋問しているのオリビアの上官だ。

 オリビアは取調室の隅で腕を組み、こちらを睨んでいる。腰に提げられた、足程長い剣が非常におっかない。


 オレのことを魔族かテロリストだと疑っているのだろう。ここまで大人しく連行されたのに、かなり警戒されている。


 尋問では魔王の事は一切伏せ、王都から逃げ出したことはボカして説明した。


「ではアユム君。この水晶に手をかざしなさい」


 上官が持ち出したのは、ステータスを表示する水晶だった。これを使うとオレの職業も見られてしまう。


 王都ではこれのせいで逃げ出した。

 しかし、既に対策済みだ!


【ステータスオープン】は、対象者から情報を読み取り表示する魔法だ。水晶もこれと同じ方法だと思う。

 だから情報が読み取られた瞬間に、その情報を書き換える魔法を作成した。


【フィルタ】

 この魔法は常時作動しており、魔法陣が見えないように処理済みだ。

 きっと水晶に手をかざしても大丈夫! のはず。


 ぶっつけ本番と言う、少しの不安を残しつつ、オレは水晶に手をかざす。


=======================

 名前:黒木 歩

 職業:魔法使い

……

……

=======================


 よし! 狙い通り書き換わっている。

 どうだ軍人さん達。怪しいところなんて一切ないだろう。早く開放してくれ。


「アユム君。我々は魔法使いという職業を初めて見たのだが、どういった職業だい?」


 なんだとー! 魔王や勇者が職業なら魔法使いくらい在るだろうと思ったのに!

 でもこれは仕方ない。他人の職業を見る機会がなかったんだ。あぁなんと言って誤魔化そう。


「詳しくは知りませんが、多くの魔法が使えます。王様から聞いた説明もその程度ですよ」


 苦しいか? オリビアと上官は何やら話し合っている。

 異世界人なんだから特殊な職業もある。って事で納得してくれ。


「王都に事実確認をしてくれ。それと教会に鑑定の依頼を」


 この上官、納得していなかった……オリビアに指示を出した後また尋問が始まった。

 王様にバレたらまた追われるかもな。それと鑑定っ言ってたな。

 水晶は誤魔化せたが、鑑定でも上手く行くだろうか。


 また逃亡生活になるのは嫌だな。

 毎日怯えて眠り、危険なものを食べて、心休まる時なんてなかった。


 その後、依頼を受けて教会から神父とシスターがやって来た。


「お久しぶりです、オリビアさん」

「あぁ久しぶり、エレナ」


 この二人は知り合いなのか。ずっと気を張っていたオリビアが少し表情を緩ませたし、仲が良いのだろう。

 神父と上官も知り合いみたいだし、オレだけ疎外感を感じる。


「我々も禍々しい魔力は感じ取っておりました。……彼がそうですかな?」


 神父がオレを見て言う。そんなに魔力漏れてた? なにか対策しないと行く先々で事情聴取されそうだな。


「ではシスター、頼みましたよ」

「はい、神父様。初めまして、クロキ・アユムさん。早速ですが貴方のステータスを見させてもらうので、腕を出してください」


 上官から簡単に経緯を聞いた後、ついに鑑定を始めるらしい。

 大丈夫、オレの職業は簡単には読み取れないはずだ。


 オレが緊張しながら立ち上がると、オリビアの警戒も強まった。

 オレより少し背の低いエレナと向かい合い左腕を差し出した。


 エレナはオレの手首辺に自身の両手をかざした。


「【マジックシール】」


 一瞬だけ魔法陣が現れてすぐに消えた。体に変化が起こったような感じはしない。


「何をした?」

「鑑定に影響が出るので、貴方の魔力を封じ込めました。もう魔法は使えませんよ」


 魔法が使えない? それが本当ならかなりピンチだぞ。


「【ステート】……【ウォッシュ】」


 あ、マジだ使えない。

 ヤッバ! 職業の書き換え出来ないじゃん!

 エレナは丸腰だから油断していた……

 ずっと腰の剣に手を掛けてるオリビアと同じくらいおっかない奴だ。


「ではもう一度この水晶に手をかざしてください」


 魔法が使えない状態でそれをしたらオレの職業が見られてしまう。


「いや、あの、さっきもやったし必要はないでしょ?」

「状況が変わったんだ、もう一度手をかざすんだ」


 オリビアから警告を受けた。

 あぁまずい。魔法が使えないんじゃ逃げるのは難しい。チャンスがあるとしたら、『職業:魔王』が表示された瞬間。

 全員の注目がそこに集まるはずだ。


 出口は一つだけ。

 問題はエレナの魔法とオリビアの剣。目の前のエレナは……ちょっと申し訳ないけど、突き飛ばして魔法の発動を防ぐ。

 上官と神父のワキを抜けて、オリビアの剣は気合で避けて出口へ。

 よし、これで逃げられる。


 オレは最大限の緊張と集中を持って水晶に手をかざす。


=======================

 名前:黒木 歩

 職業:魔法使い

……

……

=======================


 はっス、ストップだ!

 これは……書き換えが行われている。でも確かに魔法は使えなかった。

 あれ? そう言えば【言語理解】も作動してるな。


 エレナによって魔力が封じ込められたのは間違いないのに、なんでだ?

 封じ込めたってことは……オレの体内にか!


 体外に魔力は放出できないが、体内で完結する魔法は使える。確かに、書き換えの魔法は体外へ魔力を放出していない。

 必然的にその仕様になったが、危ないところだった。


「クロキ・アユム殿。ひとまずあなたの状況は理解いたしました。しかし、ただならぬ魔力を有しているのも事実です。もうしばらくご協力を願いたい」


 不要な疑いを掛けたのに謝罪もせず、まだ疑っているのか。オレは魔王であること以外、潔白なんだぞ。


「貴方に神のご加護がありますように」


 祈りの所作なのだろうか、おかしな手の動きをしている。


 野生の動植物と人間ならば、もう人間の方がマシな気がしてきた。

 とりあえず魔王とバレていない内は、このまま成り行きに任せよう。

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