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「小説家になろう」の長文タイトルに関するエッセイを書こうとしたら、そもそもタイトルがよく分かっていなかった件

作者: 尾手メシ

 そもそもの始まりは一本のエッセイであった。エッセイの題材は長文タイトル。手垢の付きまくった、さんざん語られている題材である。練習がてら書くには丁度良かろうと、気軽に書き始めた。とんでもなかった。


 件のエッセイは、これを書いている今時点で半分ほどまで書きかけている。内容としては単純なものだ。長文タイトルとweb配信のマスコミ記事との類似性に注目しつつ、テンプレートにまで射程を伸ばしてみようというもの。

 ちょっとした頭の体操である。



 一般文芸のタイトルをチラ見した後に、「小説家になろう」の長文タイトルの話題に入っていった。

 議論するにあたって、まずは対象を明確に定義する必要がある。今回は、長文タイトルとは具体的にどのようなものを指すのか、である。私はこれを、文章の体を成しているタイトル、とした。特に根拠はなく、私の勝手な印象である。だって軽いエッセイだもの。

 書き始めて、すぐに暗礁に乗り上げてしまった。各ジャンルでのタイトルの傾向を掴もうとランキングを見ていたのだが、「小説家になろう」の小説タイトルは多様である。私がイメージした長文タイトルに合致するものが散見された一方、文章の体を成しているにも係わらず長く感じないものもある。また、短い本題に長い副題が付いているものも珍しくない。


 困ってしまった。こうなってくると長文の定義を問う必要が出てくる。私は何を以て長文と判断しているのか、それを探ってみなくては。

 全くの徒手空拳で挑んだのではない。書きかけのエッセイの前半で一般文芸のタイトルに触れた時に、どんなタイトルを長く感じるかを軽く確認しておいた。それを使えば上手く収まる気がしたのだ。

 結果からいえば、上手くいかなかった。いろいろな角度から眺めてみたのだが、どうしても長文のコアの部分に手が届かない。長文の姿がはっきりしなければ、数多あるタイトルを長文と短文に切り分けることができない。エッセイの根幹が崩壊の危機である。


 ここで止めておけばよかったのだが、件のエッセイは半分は書けている。消してしまうのは惜しい。長文と短文の切り分けができないならば、タイトルそのものを対象にすればいいのではないか。エッセイの方向性を完全に見失った、混乱の極みである。



 私はこれまで様々なタイトルに触れてきた。小説、漫画、映画、ドラマ、アニメ。一端のタイトルマイスターだ。タイトルが何であるかはよく分かっている、つもりだった。

 さて、タイトルとは何だろうか。大抵は一番最初に目に入るものである。小説だったら表紙に、映画やアニメだったらオープニングに表示される。しかし、映画やドラマ、アニメでは、偶に一番最後に表示されることもある。タイトルにとって、どのタイミングで表示されるかは関係ないようだ。

 では、タイトルにはどんなことが書いてあるのか。私の理解では、ここには作品全体を簡潔に表したものが書いてある。ここでいう作品全体とはその作品を構成する全ての要素、ストーリーや世界観、主題などのことだ。これの一部、または全てを簡潔に表したものがタイトルである。私くらいのタイトルマイスターになると、このくらいは朝飯前だ。

 そう思ったのだが、ここでふと疑問が出てきた。では、あらすじに書いてあるのは何なのか。あらすじは作品のストーリーを簡潔に記したものである。ストーリーを簡潔に記すにあたって、その作品の世界観や主題に触れることもある。あれ、タイトルと似ている。


 あらすじがストーリーを簡潔に記したものならば、ストーリーに着目して付けられたタイトルは、あらすじとどこが違うのだろうか。この時のタイトルとあらすじは同じものだろうか、それとも明確に区別できる何かがあるだろうか。

 「スターウォーズ」という映画がある。ジョージ・ルーカスを一躍スターダムに押し上げた映画で、宇宙を舞台にした戦争が描かれる。「スターウォーズ」というのは、まさにストーリーを極限まで簡潔に言い表したものである。では、この「スターウォーズ」、これは果たしてタイトルだろうか、あらすじだろうか。作品の構成要素であるストーリーに着目して簡潔に表したものであるからタイトルなのだろうか。それとも、ストーリーを簡潔に記したものだからあらすじだろうか。

 もし「スターウォーズ」をタイトルだとするならば、「スターウォーズ」にはあらすじとは違う明確な何かがあるはずである。「スターウォーズ」があらすじである場合も同じで、タイトルとは違う明確な何かを示さなければならない。もしそれを示せないのならば、「スターウォーズ」はタイトルであり、あらすじでもあることになる。つまり、タイトルとあらすじは同じものということになってしまう。


 タイトルとあらすじの境界が曖昧になってしまったが、ここから更に思考を進めてみよう。

 先にタイトルとは作品全体を簡潔に表したものとしたが、簡潔とは主観的な感覚である。もし、何の制約もない状態で小説を執筆したら何が起こるだろうか。もしかしたら、作品全体を簡潔に表すために十万文字を費やすかもしれない。十万文字のタイトルを前にした時、私達はそれをタイトルと認識するだろうか。十万文字のタイトルと本文、それを明確に区別するものは何だろうか。

 そもそもタイトルと本文を明確に区別することは可能なのだろうか。もし、作者の主張を簡潔に表した本文があったとして、その小説のタイトルは本文と全く同じものになるかもしれない。全く同じ二つの文章を前にして、どちらの文章がタイトルで、どちらの文章が本文か、明確に区別するためにはどうすればいいだろうか。


 相田みつをの有名な詩に


 にんげんだもの


がある。相田みつをの精神をこれ以上ないくらいに簡潔に表したこの詩にタイトルを付けた場合、一体どういったタイトルが付くだろうか。「にんげんだもの」というタイトルかもしれない。この二つの「にんげんだもの」を明確にタイトルと本文で区別することはできるだろうか。本文の前にあるものがタイトルと判断するのか。しかし、本文の後にタイトルが表示される変則的なスタイルかもしれない。タイトルと本文を明確に区別する境界はどこにあるのだろう。



 タイトルが分からない。

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