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彼女は教室を監視しない

 高校三年生になって数日。教室で友人と弁当を食べた後、廊下に出てブラブラと散歩をする。チラッと隣の教室を覗くと、花恋と首藤さんと野村さんが机をくっつけて弁当をつついていた。


「……そんな感じで、修也君はまた野球部のエースに返り咲いたのよ。私のご褒美が効いたのかしらね」

「はぁ、私も彼氏欲しい……大学デビュー目指そうかな」

「自分を曲げるべきじゃない。ありのままの自分を受け入れてくれる人を探すべき。……ところで、初めてって痛いの?」

「あら、まだだったの?」


 仲睦まじそうな三人を眺めた後、自然と笑みを浮かべながら散歩を続ける。結論から言うと花恋は三年生になってもクラスの三軍のままだ。教室の監視で活かした情報を武器に女帝にのし上がるなんて無理な話だし、それ以前に復帰してすぐに進級してしまったのだから。世界は彼女中心にも、俺中心にも回っていない。俺は彼女とクラスが離れ離れになってしまったが、運命の神様はそこまで彼女を見捨てていないらしく、首藤さんと野村さんとは一緒のクラスになることが出来た。まぁ、実を言うと俺が教師に『この三人が一緒のクラスにならないと花恋はまた学校に来なくなってしまうかもしれない! 俺はいいから三人を一緒にしてくれ!』なんて非常に恥ずかしい頼み事をしたのだが。



『学食でフライドポテト買ってきて。スパイシー味の。あと、日本史の教科書貸して』

「いい加減俺から通信機を取ってくれよ……次のお前の授業数学だろ?」

『こないだの落書きの続きをしたくて……』


 花恋とは離れ離れになってしまったが全く寂しくなんて無い。何故なら教室やトイレに装着されていた監視カメラや盗聴器は取り外されたし三年生の教室にもそんなものは仕掛けていないが、相変わらず俺には通信機が取り付けられているし、技術の進歩により部屋の外でも俺の動向をチェックすることが出来るようになったので自分の教室から授業中だろうとお構いなしに語り掛けてくるのだ。折角学校に復帰したんだからせめて授業は真面目に受けろよ、と苦言を呈しながらも、甘やかす癖が抜けないのか身体は自然と学食に向かい、フライドポテトに加えてジュースも買ってしまうのだった。









「学校行きたくない」

「行けよ」


 高校三年生になってしばらく、隣の家に住む幼馴染の彼女、永田花恋は俺こと江崎理雄の部屋に来るなり布団にくるまってガタガタと震えながらそう言った。


「首藤さんに最近はどんなデートしてるの? って言われたからマウントを取るために妄想デートの話をしたら、二人に凄い優しい目で見られた……嘘がばれた……恥ずかしくて学校に行けない……」


 友情に亀裂が入ってしまったのかと一瞬危惧したが、どうやら花恋が勝手に自爆をしただけであり、花恋の妄想マウントを優しく受け流すくらいには強固な友情になっているようだ。


「妄想じゃないって証明しようぜ。どんなデートをすればいいんだ?」


 嘘を見破って優しい目で花恋を見てダメージを与えてくれた二人に感謝しつつ、自然な流れでデートをするために花恋の与太話を聞く俺であった。

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