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彼女は悪霊退散される

「どうしたんだ吉田、そんなに辺りをキョロキョロして」

「こないだ言ってたストーカーを最近チラチラ見るんだよ……今日も家の近くで見かけたし、今も近くにいる気がして」


 メカ花恋によるストーカーを開始して数日。効果てきめんらしく、朝の校門で待っているとビクビクしながら、周囲を警戒しながら登校してきた、不審者度合いでは花恋とどっこいどっこいな吉田がやってくる。彼の予想通り、メカ花恋1号は俺のカバンの中から吉田を常に狙っている。


「モテる男は羨ましいねえ。で、胸はでかかったのか?」

「それが見る度に胸とか身長が違うんだよ……もしかして人間じゃないのか?」

「ストーカーは一人じゃなくて複数いたりしてな」

「冗談でもそんなことを言うなよ」


 原作を忠実に再現したメカ花恋1号、巨乳のメカ花恋2号、高身長のメカ花恋3号による愛のトライアングルアタックにより、人間かどうかすら定かではない不気味なストーカーに狙われているという恐怖に怯える吉田。そんな吉田を少し離れたところから恍惚の表情で眺めた後、自然な流れで吉田に挨拶をして教室へ向かう、カバンに3号を潜ませた首藤さん。吉田の家の近くでお気に入りの2号を操作した後、回収が面倒だからと近くの林の中に放置し、家ですやすやと寝ている花恋。犯人が近くにいることに気づかない吉田はストーカー被害を無くすために俺達を利用するつもりらしく、この日の放課後に俺を含めたクラスメイトで遊んで帰ろうと提案をして来た。おそらく吉田の家の近くで遊び、すぐに家に帰りたいのだろう。


「吉田から誘うなんて珍しいな、まあたまにはいいけど」

「家の近くのゲーセンに面白い機種が入ったんだよ」


 クラスの男子4人と、少し離れたところから後をつける首藤さんと共に、吉田の家の近くにあるゲーセンに向かう。そこで適当に遊んだ後、例えクラスメイトと一緒にいたとしても俺達の魔の手からは逃れられないことをわからせてやるために、カバンからパラメトリックスピーカーを取り出して飛行させる。


「!? だ、誰だ!」

「どうした吉田?」

「さっき女の声がしただろ、気持ち悪い声で好きだの言ってた」

「はぁ? 何も聞こえなかったぞ?」


 スピーカーは吉田にだけ聞こえる場所から花恋による怪音波を出力し、怯える吉田に他のクラスメイトは当然ながら何も知らないため自然な演技をしてくれており、気持ち悪い声だと言われた花恋は演技でも何でも無く自室で発狂し始める。


「どうしたんだ吉田、財布でも落としたのか?」

「いや、さっきから誰かが……」


 吉田はゲーセン内をしきりに探すが、メカ花恋の姿はどこにも見当たらず、その間にも花恋はいつも見てるぞだの逃がさないだの、気持ち悪い声と言われたのを根に持っているらしく呪いをかけ続ける。そして自室から喋っているためか俺の耳につけられた通信機からも呪いが聞こえてくる。


「ひっ……す、首藤さんか」

「あら吉田君。奇遇ね、ちょっとUFOキャッチャーでもしようかなと思って遊びに来ていたの」

「首藤さんもゲーセンとか来るんだ。一緒に遊ぼうぜ」


 あまり吉田の前に姿を現すなと釘をさしておいたのだが、情けない吉田の姿を間近でどうしても見たいらしく、物陰からひょこっと飛び出して吉田をビビらせる首藤さん。そのままグループに参加して吉田と一緒にゲームを楽しむ首藤さんであったが、ムサいグループに華が入って喜ぶ他の男子とは違い、ずっと聞こえてくる呪いにより精神をやられてしまった吉田はデートどころではない。首藤さんはそれでも楽しそうだが。


「悪い、俺急用を思い出しからそろそろ帰るわ」

「はぁ? お前から誘って来たのにそりゃないだろ」

「今度埋め合わせするからさ」


 当初の目的通り近くにある家に逃げようとゲーセンを出て行ってしまう吉田だが、残念ながらそのルートには朝に花恋が隠しておいた2号が待機済みだ。走って家に向かう吉田であったが、お笑い芸人の如く電柱からひょっこりと出てくる2号。


『好き好き好き好き好き君の為におっぱいも大きくしたよ』

「う、うわあああああああっ!」


 泣きながら作った胸を揺らしながら今までで一番吉田に接近した2号ではあるが、中身は浮遊可能な監視カメラにカツラやサングラスやマフラーやマントをつけて厚着の女性に見せているだけであり、間近で見れば足が存在しないことがわかってしまう。吉田に機械であるなんて正常な判断は出来ず、幽霊だと思って絶叫しながらスピードを上げてどうにか家に入って行く。しかし自宅に戻った程度で花恋の魔の手からは逃れられない。道中で監視カメラ越しの吉田の情けない姿を見ながら吉田の家に向かっていた俺が見たのは、2号が吉田の部屋の窓にガンガンと体当たりしており、中から悲鳴が上がるという夕方にしてはホラーすぎる光景だった。


『入れて入れて入れて入れて入れて入れて……あっ』


 ヤンデレヒロインを気取る花恋であったが、何度も窓に体当たりをした結果、花恋が頑張って作った胸は変形してへしゃげてしまう。それすらも異形の何かに見えたのだろう、気絶したのか家の中からは声が上がらなくなり、俺の耳には胸が無くなってしまいすすり泣く花恋の声。2号を回収した俺は、気休めにはなるだろうかと帰りに牛乳を買うのだった。


「私のおっぱいが、私のおっぱいが……!」

「最初からお前のでは無いだろ」

「永田さん。今度ブラを一緒に見に行きましょう? 最近はかなり大きく見せることが出来るわ」


 牛乳をゴクゴク飲みながら2号を供養する花恋を首藤さんと一緒に慰めながら、十分過ぎる程インパクトは与えたしそろそろ決着の時だと最後の作戦会議を行う。少し油断させた方がいいと1週間程吉田に平穏な日常を与え、完全にストーカー被害は無くなったと思っている吉田のある日の帰り道の、周囲に人の気配が全くない十字路。


「……ひっ!」


 吉田の前に姿を現した1号を見て顔を引きつらせた吉田はすぐに後ろを向いて走り去ろうとする。しかしメカ花恋は1体だけではない。


『どうして逃げるの、私はこんなになるくらい君の事が好きなのに』


 既に吉田の後ろや他の道にも2号(1週間で更に豊胸した)や3号が立ちふさがっており、悲鳴を出すことも出来なくなった吉田はメカ花恋のいない道へと走って行くが、その先にあるのは行き止まり。


「やっと会えたね。ずっと寂しかったんだよ? 一緒に私達の世界に行こう?」

「た、助けてくれ、俺はまだ死にたくない……っ」


 そこに待っていたのはメカ花恋と同じ衣装の、足はしっかりとあるのだが今の吉田にとってはどうでもいいことであろう、本物の花恋。おもちゃのナイフを吉田に向けながらじりじりとにじり寄り、吉田は来た道を戻ろうとするがメカ花恋達に退路を阻まれており絶体絶命だ。


「破っ!」


 そんな時に突然出て来た首藤さんが適当な十字を切りながら適当な呪文を唱えると、メカ花恋達は呻き声を上げながら逃げて行く。何で首藤さんがここにいるのかという疑問は一切抱かずに、完全に首藤さんの事を救世主だと思っているのか腰が抜けた状態で首藤さんに抱き着くという、相手が自分のストーカーで無かったら許されない行為に走る吉田。


「その女は誰ええええええ? 私という彼女がいるのに許せないいいいいい! お兄ちゃんどいてそいつ殺せない!」


 おもちゃのナイフを持って首藤さんに突進する花恋であったが、首藤さんの手刀を食らい崩れ落ち、恋人がいるなんて聞いていないと吐き捨てながらその場から逃げて行く。とりあえず無茶苦茶ながらも首藤さんは吉田を助けた訳だが、この先のプランを俺は知らない。一体首藤さんはどうやって恋愛に持っていくのだろうか。


「変な気配を感じて来てみたら危ないところだったわね。聞いたことがあるわ、あれは恋人のいない男を狙う悪霊よ」

「首藤さん、ありがとう、本当に俺怖くて……もう大丈夫なのか?」

「恋人を作らないと、また狙われるかもね……それよりさっきから女の子に抱き着くのはどうかと思うわ」

「ご、ごめん……恋人か……俺学校の女子にはほとんど目の敵にされてるし、バイトも辞めたしどうしよう……」

「一人だけ、吉田君と付き合ってもいいって女子を知っているわ。それはね……」


 吉田に恋人を作らないと悪霊に狙われるという滅茶苦茶な設定を告げる、いつのまにか霊能力者設定が付与されていた首藤さんと、もうパニくり過ぎて全てを受け入れている吉田。そんな吉田の唇を首藤さんは強引に奪い、吉田が腰が抜けていることをいいことに息を荒げながら押し倒し服を剥ぎ取って行く。俺は監視カメラ越しにそれ以上を見るのを辞め、メカ花恋と共に全てが終わるまで見張りをする。流石の花恋もこんなことになるとは思っていなかったのか、こっそり物陰から二人を眺め、かなり引いた声で実況をするのであった。

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