彼女は合コンにリモート参加する
「ダンス技術とクイズ技術とメダルゲーム技術……どうやって彼の能力を活かすべきかね」
「そういえばダンスの授業が新しく追加されたんだっけ?」
「ああ、ただ残念ながら中学までなんだよ」
「うーん……高校生クイズ大会に出てみる、とか」
「今の時期はやってないし、あれって団体戦だろ? 出場者のレベルも高いし」
戸田の強みを知った俺達はどうにかして戸田が犬飼さんにアピール出来るようなお膳立てを考えるが、現実は俺達に都合良くは出来ていない。何はともあれ俺達が必死で作戦を練ったところで戸田が自分に自信を持つなりしてやる気を出してくれないと意味が無いので、学校の休憩時間に戸田がトイレに向かったのを見計らって後を追う。
「戸田。こないだゲーセンでお前を見たけど、ダンスすげーのな」
「えっ……あー、見られてたんだ……別にあれくらい、何度かやってれば慣れるって」
「いやいや、あのキレは本物だって。お前体育の授業もっと本気出せよ? そしたら犬飼さんだってキャーキャー言うぜ?」
「ダンスゲームは3分くらいで終わるから……体力は無いんだよ」
「それにクイズゲームも得意なんだろ?」
「いや、僕は青賢者で……どっちにしろ、クイズゲームは問題が偏ってるから他じゃ役に立たないよ」
そこで戸田にもっと自分に自信をつけるように、積極的になるように助言をするが、彼は花恋とは正反対の奥ゆかしい性格なようで、自分なんて大したこと無いと言いながら教室に戻って行ってしまった。仲良くもないクラスメイトからアドバイスをされたところではいそうですかと聞き入れられないよな、と学校行事でアピールさせる作戦は早々に諦める。
『やっぱりゲームセンターで戸田の華麗な雄姿を犬飼さんに見せるしかないな』
『それしたところで簡単に靡くとは思えないけど、そもそもどうやって? あの女を放課後にゲームセンターに誘ったらぶっ殺すよ?』
『戸田が活躍すると同時に、俺みたいな引き立て役が失敗すれば、相乗効果で戸田が格好良く見えるはずだ。どうにか自然な形で犬飼さんと戸田が一緒にゲームセンターで遊ぶ機会……それとも合コンみたいなのをセッティングできないものか』
『グループが全然違うじゃん、接点無いって。クラスメイトの大半と仲良い人がいるなら話は別だけどさ』
『……いるじゃないか。お前の自称親友が』
昼休憩に人気の無い場所でパンを食べながら花恋と作戦会議を行う。戸田がゲームセンターで遊ぶ時間帯に犬飼さんを誘ってゲームセンターに向かい、そこで俺の醜態と彼の美技を見せることで犬飼さんは俺に幻滅すると共に戸田に興味を持つようになる。シンプルな作戦ではあるが、問題は花恋が非常に嫉妬深くそんな作戦で俺と犬飼さんがデートをすることすら嫌がっているということだ。二人でのデートが駄目なら複数人での合コン形式なら花恋もそこまで嫌がらないし、犬飼さんと戸田をうまく合コンのメンバーに入れる能力を持っている都合のいい人間を俺は知っている。パンを食べ終えるとこことはまた別の人気の無い場所へ向かう。この日も彼女はそこでのんびりとジュースを飲んでいた。
「……というわけで、犬飼さんと戸田と俺を入れた合コンをセッティングしてくれないかな」
「うっ……結構難易度高い……でも犬飼さんはいい加減どうにかしないといけないしなぁ……」
あーみんに迷惑かけるな、そもそもいつのまに二人で会話する仲になってるんだと騒ぐ花恋は無視して、富永さんに事情を説明して合コン開催のために奮闘して貰うことに。数日後の放課後、UFOキャッチャーのチケットをたくさん貰ったから皆で遊ぼう、という名目で、クラスの男女8人がゲームセンターに集結する。女子は富永さんや犬飼さんを含むクラスの一軍女子、男子は俺と戸田、オタクグループの中では社交的で、既に俺の作戦を伝えており協力的な不動、そして二股がバレて彼女も野球部エースの座も失い、今も新しく彼女を作るためにガツガツしている吉田だ。
「お前らが誰を狙ってるのか知らねーけど、俺の邪魔すんなよ」
女子と不動がUFOキャッチャーで盛り上がるのを少し離れた場所で眺めている俺と戸田に吉田が話しかけてくる。吉田はとにかく新しい彼女が欲しいというスタンスなので彼を犬飼さんとどうにかしてくっつける方が現実的なのかもしれないし、花恋も犬飼さんのようなゴミ女は二股野郎がお似合いだと言っているが、女の敵を犬飼さんとくっつけたところで長続きするとも思えない。彼をここへ連れてきたのはかませ犬にするためだ。
「邪魔しないよ、俺は彼女いるし。そういえば、音ゲー得意な男子って格好いいよねってさっき喋ってたような」
「本当か!? ……おーい皆、あっちで太鼓の超人やろうぜ!」
野球部らしく俺達を牽制してくる吉田に太鼓ゲームの筐体を指さしながら適当な情報を流し、音ゲーコーナーに皆を集めさせる。レディファーストということで女子に太鼓である程度遊んでもらい、太鼓ゲームの難易度とかを実感させたところで、次は俺達男子の番だ。
「対戦モードがあるのか……おい戸田、俺と勝負だ。皆見てろよ、パーフェクトで勝ってやるよ」
「えっ……わ、わかったよ」
女子にいいところを見せたい吉田は対戦相手として戸田を指名する。俺達3人の中では戸田が一番弱そうだ、と判断してかませ犬にしようとしての指名なのだろうが、残念ながら全ては仕組まれた罠だ。俺と不動は顔を見合わせて不敵に笑い、これから繰り広げられる一方的な試合展開を楽しむことにする。
「わー、戸田君って太鼓上手なんだ。ドラムとかやってるの?」
「い、いや大したこと無いよ……」
「実は去年見たアニメに影響されて皆でバンドをやり始めたのですが、戸田氏は天才ドラマーなのですよ。次の文化祭ではステージに立つ予定なので期待していてくだされ。ちなみに自分はベースですぞ」
「あはは、江崎君ゲームオーバーになってるじゃん」
「いやー、ハードに挑戦してみたけどむずいわ」
「ねぇねぇ戸田君、この一番難しいやつってできるの?」
「フルコンボは無理だけど、クリアするだけなら」
「えー、やってやって」
ダンスゲームが得意な人が他の音ゲーも得意なのは不自然でも何でもない。更に戸田はドラムの練習もしていたということで太鼓ゲームとの相性は抜群、リズム感のみならず連打力でも吉田に圧勝し、犬飼さんに興味を持たれて顔を赤くしている彼を不動が良い感じにアシストし、俺も太鼓ゲームで絶妙に下手な腕前を見せて引き立て役に徹する。
『吉wwwwww田wwwwwwwざwwwwwまwwwwwあwwwwww』
リモートで合コンに参加している(気分を味わっている)花恋も、吉田の醜態に草を生やさずにはいられないようで、自室で過呼吸になる勢いでゲラゲラと笑っている。呆然と立ち尽くしていた吉田だったが、
「ドラムやってるなんて聞いてねーぞ! ズルだズル! おい、今度はあっちのダンスゲームやろうぜ」
再び女子に格好いいところを見せるために、楽器の関係ないダンスゲームを指さし、卑怯にも女子に煽られて最高難易度をプレイしてそれなりに疲れている戸田を強引に筐体まで連れていく。しかし太鼓ゲームで疲れるのは主に腕。戸田の脚はピンピンしているということも気づけず、太鼓ゲームが得意な人はダンスゲームも得意だろうという発想にも至らない吉田がこの後醜態を晒し、花恋含む女子の失笑を買うのは予定調和なのだった。




