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彼女はメダルを強奪する

「ダンスゲームやるのか、意外だな……」


 UFOキャッチャーの筐体に隠れながらこっそりと観察する俺の前で、戸田はダンスゲームの筐体にコインを入れずにカードらしきものを押し当てる。そのまま流行りの曲をエクストリームとやらで選択し、軽快なステップで足元にある模様やらを踏み始めた。その動きが熟練していることは、素人の俺でもわかる。感心する俺の目の前で数分間踊り続けた彼が筐体から去っていくのを眺めた後、気づけば横にぬいぐるみを抱えた花恋の姿。


「店員が見かねてプレゼントしてくれた!」

「私服だし小学生だと思われたんだろうな……そんなことより金を返せ。今から素敵なダンスを魅せてやるから」


 減ってしまった小遣いを渡され、そのうちの一枚をダンスゲームの筐体に投入する。戸田と違ってユーザーデータとやらの無い俺は軽くチュートリアルを受けた後、満を持してノーマルの曲を選択し、彼女に格好いいところを魅せるために張り切って踊り始めた。


「下手くそ。そのレベルの腕で遊ぶとか、DQNの笑い者」


 彼女からの心無いヤジに耐えながらもどうにかギリギリで完走する。戸田がプレイしていたエクストリームはハードの更に上ということで、常人が少し練習した程度でどうにかなるレベルでは無いだろう。2曲プレイできるようだが気力が無かったため、そこまで言うならやってみろと花恋を煽る。


「え~、仕方ないな~、何で私の名前が花恋か知ってる? 花に恋する……つまり蜜を吸う蝶と蜂。蝶のように舞い、蜂のように刺す動きに刮目せよ!」


 訳の分からない事を言いながら、イージーモードの、それも一番難易度が低そうな曲を選択する花恋だった。




「いてて……あ、足が……」

「芋虫のように舞ってたな」

「やかましい。ダンスゲームが多少できたところで運動ができる訳じゃない。私は見てないけど、戸田がダンスゲーム上手い程度できゃー運動できる素敵! ってなる女子なんて存在しない。オタクに優しいギャルくらい存在しない」

「反射神経とかはあるだろ。あんな動きができるなら、体育の授業だってやる気出せば活躍できる気がするんだよな」


 数分後。開始三十秒で動きについていけずに足をつってしまった花恋と共に、戸田はもう帰ったのだろうかと店内を探す。音ゲーマニアなのだろうかと音ゲーのコーナーを探すも見当たらず、次に彼を見つけたのはクイズゲームのコーナーであった。ダンスゲームの筐体は大きめだし身体が動くのでプレーの光景を遠くから見ることは容易だが、クイズゲームとなるとそうもいかない。彼がクイズゲームで活躍しているのかどうかすらわからないまま、クイズゲームのコーナーから去っていく戸田を見送った。


「そもそもどんなクイズゲームなんだこりゃ」

「全国対戦モードと検定モードがメインっぽい。どうせこの手のクイズゲームなんて問題の過半数がアニメゲーム。私の手にかかればちょちょいのちょい」


 ダンスゲームは戸田の実力を確認するために自分も試しに遊んだが、クイズゲームは比較対象がわからないのだからやる意味は無いのだが花恋は勝手に俺の残り僅かな硬貨を奪い筐体に入れ、アニメゲームの検定をプレーし始める。


「ロボットアニメなんて知るかー! スポーツアニメなんて知るかー!」


 守備範囲の狭さを見せつけて100円を無駄にする彼女を眺めていると、クイズゲームの筐体の横にイベントの告知やランキング等が表示される専用のモニタがあることに気づく。ダンスゲームでの戸田のユーザーネームがDOOR田だったことを思い出し、似たような名前が店内ランキングとかに表示されていないか調べることに。


「お、あったあった。店内3位、全国850位。凄い……のか?」

「クイズゲームのランキングってそもそもお金使いまくれば上位行くんじゃないの?」

「データの見方も詳しくないからよくわからんな……」


 やり込んでいることは確かなのだが、それがクイズゲームが得意ということに繋がるのか、このゲームのクイズの知識が現実でどのくらい活きるのか、素人の俺達にはさっぱりわからない。クイズゲームを理解しようにも俺達に残された硬貨は僅か。どうせなら全部使い切るかと店内をウロウロしていると、メダルゲームのコーナーで再び戸田を見つける。随分多趣味なようで。


「あ、あれ! 塔を崩すやつ! やりたい! よし、メダル借りよう」

「友達と何回か来たことあるから知ってるけどさ、こういうゲームセンターのメダルって、最低1000円からなんだよ。つまり無理」


 花恋がクレーンゲームで惨敗してしまったせいでメダルゲームを楽しむことも俺達にはできない。遠巻きに戸田のプレーを眺めていた俺だったが、花恋はそれでは満足できないらしく戸田にもう少し接近して気分だけでも大当たり気分を味わおうとする。カップに入っていたメダルが無くなったらしく、預けているらしいメダルを引き出す戸田と、それをこっそり眺める花恋。戸田が再びプレーを再開するために戻ると、花恋は驚いた様子で俺の方へ戻ってきた。


「もしかして金持ち? メダル数万枚あったよ。借りたら十万超えるんじゃない?」

「そんな噂は聞いたことないけどな。学食でたまに見るけどカレーとかうどんとか質素な食事だし、あの服だって大手チェーンのリーズナブルなやつだし。メダルゲームが上手いんじゃないか?」

「……よし」


 人の預けているメダルの枚数を見ようとするのは多分モラルに欠ける行為なのだが、花恋は何やら更にモラルの無い行為をしようとしているらしく、ニヤリと笑ったかと思えば戸田の方へ向かい、


「うわ~、お兄さん凄くメダル持ってるんですね!」

「え、え? いや別に、家が近いから、暇潰しに遊んでたら増えてただけだよ」


 彼氏の俺ですら今まで一度も見たことも聞いたこともないような明るい表情と声で直接話しかけるという暴挙に出た。何やってんだ馬鹿と彼女を回収しようとするが、戸田は目の前の少女がクラスメイトであることには気づいてないらしく、困惑しながらも受け答えをしてくれる。


「遊んでたら増えるなんて凄いです、お兄さんプロなんですか?」

「いや、プロとかそういうの無いし……よ、よかったらこれあげるよ。もうちょっとでこれ崩れるんだけど、僕そろそろ帰ろうかなと思ってたし……それじゃ」


 突然声をかけてきた怪しい女でしか無い花恋に絡まれるのが辛いのか、崩壊直前のメダルの塔とカップに並々と注がれたメダルを譲ってそそくさとゲームセンターから去っていく戸田。譲ってもらったメダルと台で早速遊び始める花恋の下へ向かい、軽く拳骨を食らわせる。


「まじで何やってんのお前? 馬鹿なのか?」

「いや、1年の時別のクラスだったし、2年になって私すぐに学校来なくなったし、多分向こうは私の事知らないと思って」

「お前学校復帰したら戸田と会う訳なんだがどうすんだ? クラスメイトが年下の女を装って近づいてメダルを強請ってきたなんて広まったら本当に学校来れなくなるぞ?」

「そ、その頃にはきっと忘れてるって……やったー、塔が崩れた」


 人から奪ったメダルと台で遊んで楽しいのか? と呆れる俺をよそに、崩した塔の分も含めて大量のメダルを手に入れてご満悦な花恋。自分の天才的頭脳ならあっという間に増やせると息巻くものの、1時間後にはゲームセンターの外で、虚しい表情をして缶コーヒーを飲む彼女の姿があった。


「ふっ……認めようじゃないか、彼は私に勝るとも劣らない頭脳の持ち主だよ」

「お前の全敗だ。ダンスゲームが得意、クイズゲームも多分得意、メダルを増やすことも得意……文武両道じゃないか」

「ゲームセンター弁慶でしょ」


 内弁慶の彼女はそうは言うが、きっと本人が意識していないだけで学園生活だったり日常生活だったり、彼の能力が活きる場面はたくさんあるはずだ。いかにして彼の能力を犬飼さんにアピールするか、次のお小遣いでメダルゲームをやって溶かす気まんまんの彼女と考えるのだった。


メダルを売買したり譲渡したりしたら駄目だよ☆

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