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彼女は略奪愛に憤慨する

『退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学退学』


 花恋が発狂する中、照れながら最近俺が頭も良くなったし身体つきも逞しくなったしいいなと思っていた、と告白した理由を述べる犬飼さん。


「あ、返事はすぐには難しいよね。また明日聞くから。それじゃ私部活があるから」


 断るよりも前に犬飼さんはそう言って走り去ってしまい、取り残された俺も花恋を宥めるために全力で家まで急ぐ。花恋の部屋に向かうと、モニタを殴っていたのだろう、手を赤く腫らして泣きじゃくっている彼女の姿。


「うっ……うぐっ……許さない……」

「安心しろって。ちゃんと断るからさ」

「そういう問題じゃない! あの阿婆擦れ、私と理雄が付き合ってるって知ってるはずなのに、それなのに……私の事ナメてるんだよ、下に見てるんだよ、許さない許さない許さない許さない」


 花恋は犬飼さんを呪いながらガンガンとモニタを殴りつけるが、非力な彼女のパワーでは自分の手が先に壊れてしまう。花恋を抱きかかえてベッドに寝かせて落ち着かせ、途中で買ってきた高いケーキを見せる。彼女が目も腫らしながら、もしゃもしゃと塩気の効いたケーキを食べているのを見守りながら、どうしたもんだかと悩む。花恋の言うことは正論だ、よりにもよってクラスメイトと付き合っている男子に告白してくるなんてどうかしている。


「絶対断るよね? 二度と話しかけるなって言ってくれるよね?」

「断る断る。俺には花恋がいるからってちゃんと言ってやるからさ」


 満腹になった花恋は不安なのか何度も俺が自分を選ぶことを確認し、泣き疲れたようでそのまま眠る。翌日になり、教室に向かい席に着き犬飼さんを探すと、富永さん率いる女子の一軍と談笑していた。その後の休憩時間中や授業中も彼女の方からこちらに話しかけてくることなく、昨日の告白はドッキリだったのではないか? と思ってしまうくらい淡泊だったが返事を聞くまでは干渉しないという意味だったらしくしっかりと放課後に再び呼び出されて返事を求められてしまう。


「悪いけど俺は花恋と付き合っているから。正直犬飼さんには幻滅したよ、クラスメイトと付き合ってるの知ってて告白して来るなんて」

「え、本当に付き合ってたの?」

「……信じられないだろうけど本当に付き合ってるんだよ」


 犬飼さんを睨みつけながら俺は花恋の彼氏だ、と宣言し、『よく言った! それでこそ漢だ!』と珍しく賞賛する花恋の声を聴いていると、犬飼さんはきょとんとした表情をする。確かに冷静になって見れば、俺と花恋が付き合っている、というのを信用している人間はほとんどいないだろう。花恋が学校にいた頃も休憩時間の度に喋るだとか、一緒にご飯を食べるだとか、同級生カップルらしいことは一切していなかったし、デートすらしていないのに花恋はクラスメイトにマウントを取るために妄想デート話ばかりしていたようだから、カップルという設定自体が花恋の妄想だと思われても仕方がない。


「でももう学校にも来ないんでしょ?」

「来させるよ。知ってるかもしれないけど、いわゆる幼馴染でね。家も隣なんだ。だから毎日会ってるんだよ」


 しかしカップルであることを告げても目の前の少女は引き下がろうとしない。クラスの一軍女子からしたら学校に来なくなった地味な少女と別れないことが不思議で仕方が無いのだろう。俺の方から告白した訳でも無く、ステータスを理由に告白されて付き合ったという何とも言えないきっかけなのに何故まだ別れていないのか、俺もよく分からないが恋愛とは多分そういうものだ。そもそも恋愛感情から来る行動なのか、世話焼きから来る行動なのかわからないが。


「……私諦めないから」


 これで犬飼さんも諦めてくれて、花恋の機嫌も直ると思っていたのだが目の前の少女はそんな爆弾発言をして去って行ってしまう。花恋からすればその発言は『自分の方が女として上だし相手は学校にも来てないんだから奪える』という宣戦布告にも等しいからか、再び発狂してしまうのだった。


「あの女何なの!? 私をクラスメイトと思っていないんじゃない?」

「そりゃ2年になってからすぐに学校来なくなったんだしクラスメイトと思ってないだろ。現状彼女からしたらダサい他校の生徒だ。お前が学校に復帰して俺といちゃいちゃすれば諦めるだろ」

「そんなことするか! ああ、ムカつく。SNS炎上させてやろうと思ったけど見つからないし。あーみんも何であんなのとつるんでるんだか……」


 俺がきちんと彼氏宣言をしたことで多少は機嫌が良いらしいが、それでも犬飼さんに対する憎悪は当然ながら無くならない。早いうちにどうにかしないと本当に退学に追い込んでしまいそうだと悩んだ末、翌日の昼休憩中に花恋が寝ていることを確認した俺は、人気の無い場所でまったりしている富永さんに今回の件を打ち明ける。



「という訳で、これは富永さんの管理不行き届きだと思うんだ。きちんとクラスメイトの彼氏を奪おうとするなと説教してくれないかな」

「うっ……いやー、中学から一緒なんだけど、惚れっぽいし他の人が狙ってても気にしないし諦めも悪いし飽きっぽくてすぐ別れちゃったりするし困った子なんだよ……永田さん学校に来ないんだし、二股かけてもバレないでしょ? 向こうが飽きるまで付き合ってくれると助かるんだけど」


 犬飼さんの恋愛脳が引き起こすトラブルの後始末には色々と苦労して来たらしく、困惑した様子で二股を提案する富永さん。確かに花恋が普通の不登校なら俺が二股をかけてもバレないかもしれないが、花恋は普通の不登校では無い。教室や俺に監視カメラや盗聴器を仕掛けている、寝ている時じゃないとクラスメイトと喋ることすらバレてしまう恐ろしい不登校なのだ。


「付き合うつもりはないよ。ちなみに今までの彼氏の傾向とかは?」

「うーん……見た目だったり面白さとかだったりは文武両道な人が好みなのかな。江崎君に告白したのも最近先生からの質問にバンバン答えたり、身体つきがガッシリしてきたからだと思うし」


 花恋を学校に来させて付き合っていますアピールが難しい現状、犬飼さんを諦めさせるよりは別の男を紹介してくっつける方がまだマシかもしれない。色々と情報を入手して、放課後に花恋の部屋に向かい作戦を説明する。


「昼に富永さんに相談したんだけど、彼女としては犬飼さんはちゃんと誰かと付き合って長続きして欲しいみたいだよ。イケメンとか会話が面白い人よりも、文武両道な人が好みなんだってさ」

「それで私にどうしろと」

「折角学校を監視してるんだから、その観察力で犬飼さんの彼氏を見つけてあげようよ」

「何で私がそんなこと……まぁ、あーみんも困ってるみたいだし仕方がないか。けれどこのクラスに文武両道で彼女のいない男子なんていたかなぁ……別のクラスにも監視カメラを仕掛けた方がいいのかも……」


 乗り気ではないものの未だに一方的に親友だと思っている富永さんの名前を出されると弱いらしく、パソコンのソフトにクラスの男子の名前を羅列してプロフィールを入力していく。野球元エースの吉田は二股がバレてフラれて今はフリーだが頭は良くない。剣道部で頭もそこそこいい小林は公言はしていないが実は剣道の道場で知り合った中学一年生と付き合っているロリコンらしい。明日からクラスの男子をじっくり観察しよう、と花恋が決意し、彼氏としては複雑な気持ちになるのだった。

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