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模擬戦

……………………


 ──模擬戦



 ミカエラたちは温泉のある街に来てから3日が過ぎた。


 既に街でミカエラたちを知らない人間はいない。


 どの店も“小国家連合の英雄ご用達の店”という看板を出したくて、ミカエラが申し訳なくなるくらいサービスしてくれる。


「ブルーメントリット殿。模擬戦をしないか?」


 そんなときだった。ミカエラがその話を持ち出したのは。


「は? 俺とですか?」


「そうだ。思うにブルーメントリット殿はできると見ている」


「ま、またまた。過剰評価ですよ。俺なんて瞬殺されてしまいますよ」


「いいや。そうはならないだろう」


 ミカエラはそう言い切った。


「……どうしてもやりますか?」


「うむ。温泉に美味い飯というのも安らげていいのだが、体が鈍る。お互いに勘を鈍らせないように訓練を重ねておきたい。無理強いはしないが」


「構いませんよ。確かにこうものんびりしてると勘が鈍りそうですからね」


 ブルクハルトはあっさりと承諾した。


「では朝食後、城門の外で。あそこには衛兵たちが使ってる空き地があったはずだ」


「頼んで使わせてもらいましょう」


「ああ」


 それからミカエラたちは朝食を終えると、城門の外に向かった。


 そこでミカエラたちは準備運動をし、衛兵たちに演習場の使用許可を取った。衛兵たちは喜んで演習場を貸してくれた。その代わり、見物人が集まる結果になったものの。


「お互いに怪我をするような攻撃は避けよう。あくまで模擬戦だ」


「了解。手加減してくださいね、ミカエラ様」


「ブルーメントリット殿こそ」


 ブルクハルトは不敵に笑い、ミカエラは油断なく木刀を構えた。


「それでは、始め!」


 テオの合図で模擬戦が始まった。


「“竜爪砕き”」


 早速ミカエラアが武器破壊を試みるがすっとブルクハルトはそれを回避する。


「“爪の型一式”」


 ミカエラを狙って素早く攻撃が叩き込まれようとする。


「“竜息流し”」


「それは読めています! “羽根の型三式”」


 ミカエラの受け流してからのカウンターは読まれていた。ミカエラが反撃を繰り出す前にブルクハルトが先手を打つ。しかし、ミカエラがステップして回避したことで、ブルクハルトの攻撃は不発に終わった。


「なかなかだ、ブルーメントリット殿!」


 ミカエラは気分が高揚していくのを感じていた。


 もっと素早く、もっと正確に、もっと強力に。


 ミカエラはそう考えて斬撃を繰り出す。


「“竜鱗裂き一閃”」


「見切った!」


 カンッと木刀と木刀がぶつかり合う音がし、ミカエラの攻撃は弾かれたかに見えた。


「うおっ!? 木刀が折れている!」


「どうやら勝負あったようだな」


 ブルクハルトの破壊された木刀を見て、ミカエラはにやりと笑った。


「ミカエラ様には敵いませんねえ」


「木刀ではなく、真剣だったら話は違ったかもしれないぞ?」


「遠慮しておきます」


 ブルクハルトは肩をすくめてそう返した。


「凄い戦いだ」


「ミカエラ様も凄かったが、相手の方も凄かったな」


「“鋼鉄の虎”って傭兵団だろ? 例のオストライヒ帝国軍6000名を壊走させた」


 見物人たちがわいわいと騒ぎ始める。


「ふうむ。ミカエラ。対魔術師戦の訓練をしてみるかい?」


「対魔術師戦、か?」


「ああ。あんたにその気があれば、だけど」


 ディアナとは一度対魔術師戦の訓練をしておこうと約束していた。


「うむ。よろしく頼む」


「オーケー。じゃあ、ブルクハルト。野次馬どもを追い払っておくれ」


 ブルクハルトたちが訓練を見学しようとする野次馬たちを追い払うと、ディアナとミカエラは相対した。


「まずは言っておくけど怪我したり、死んだりするような攻撃はしないよ。あんたもあたしを殺そうとするんじゃないよ。いいかい?」


「もちろんだ」


「よろしい。それでは基本的な攻撃魔術の回避から始めようか。怪我したり、死んだりしないような魔術とはいっても、緩くはないからね」


 ディアナがそう言って、詠唱を始める。


「“光ある楔に命じる。目標を追うがいい”」


 するといつものように白い光線が走り、ミカエラに迫る。


 ミカエラはステップを踏んでそれを回避しようとするが、その程度で逃げられる速度ではな。光線はあまりにも早く、ミカエラを完全にとらえていた。


「学習点だ。魔術攻撃を避けるのは不可能に近い。光線から逃げるのではなく、光線を叩き斬る勢いで行きな。あんたならできる」


「分かった」


 再び光線が放たれ、それがミカエラに迫る。


「“竜鱗裂き一閃”」


 光線は光を失い、消え去った。


「その調子だ。次に行くぞ」


 次は複数の光線がミカエラに迫ってくる。かなりの速度で、恐怖心すら覚えるのが本来の感覚だろう。


「面白い」


 だが、ミカエラはにやりと笑っていた。


「“竜鱗裂き大乱舞”」


 ミカエラが剣を振るうことによって光線の全てが光を失った。


「上出来。なら、こいつはどうだ。“光ある剣に命じる。打ちのめせ”」


 巨大な光の剣が現れ、ミカエラに襲い掛かる。


「“竜爪砕き”」


 だが、その光の剣も竜爪砕きによって破壊された。


「お見事。攻撃魔術への対処は問題なさそうだな。では、防御魔術の崩し方だ」


 ディアナはそう言って演習場に置かれてある案山子を指さした。


「あれに防御魔術を張る。どうにかして崩してみ?」


「ふむ。やってみよう」


 ミカエラは防御魔術がかけられた案山子に向かい合う。


「“竜骨断ち”」


 ギインと甲高い金属音が響いて攻撃は防御された。


「まだまだだ」


「“竜骨断ち大乱舞”」


 また金属音だけが響く。


「“竜頭落とし”」


 ここに来て初めて結界が破壊された。


「分かったように結界もダメージを蓄積する。魔術師が常に張り替えていない限り、いずれは強固に思える結界も破壊できるということだ」


「ふむ。なるほど」


 ミカエラはしげしげと破壊された案山子を眺める。


「それじゃあ、最後は模擬戦だ。あたしを相手に攻撃魔術を撃破しつつ、結界を破壊する一撃を入れて見な。あたしが結界が壊れそうだと思ったら降参する」


「了解した」


「では、行くよ」


 ディアナの方から大量の光線がミカエラを狙って来る。


「“竜鱗裂き大乱舞”」


 攻撃第一陣は防衛に成功。


「“竜鱗裂き大乱舞一閃”」


 そして、攻撃魔術を撃破しつつ、ディアナとの距離を詰める。


「“光ある剣たちに命じる”」


 上空に複数の刃が現れ、ミカエラを狙う。


「“竜鱗裂き大乱舞極一閃”」


 そして、ミカエラが一気にディアナとの距離を縮めた。


「“竜骨断ち大乱舞”」


「“光ある楔に命じる”」


 ミカエラが結界を攻撃しているのに、背後からディアナの攻撃が迫った。


「“竜鱗裂き大乱舞反転一閃”」


 すぐさま背後からの攻撃に応じる。


「“竜骨断ち大乱舞”」


 そして再びディアナを攻撃。


「おめでとう。あんたの勝ちだ。だが、ちょっとひやっとしただろう?」


「ああ。かなりな。魔術師と戦うのがこれまで難しいことだとは」


「これでも相当手を抜いているんだよ」


 ディアナはそう言ってにやりと笑った。


「流石はゼノン学派というべきなのか?」


「そうだね。だが、他の魔術師もなめてかかると痛い目を見るよ」


 そう、ディアナは警告した。


「さて、いい汗かいたし、温泉に入って酒を飲もう」


「ああ」


 ミカエラたちはそうして演習場を後にした。


……………………

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