表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/27

セイの経歴

「『生きる目的』ね」


 セイがモリテに来た時のことを思い出す。

 あれは半年前くらいのことだろうか。




 新入りのモリテが来る事を耳にしていたフリート。会長室で入寮するモリテの手続きをしている。


「来週からうちのモリ屋に入って来るセイだ。今日は顔見せで来てもらっている」


 会長がセイのことを紹介し始める。

 会って早々驚いた。若い。女性のモリテはそんなに多くない。何より女の足運びや振る舞いで感じた。目を見ればわかる。現役のモリテだろう。


「俺はモリ屋(パトリア)の隊長、フリートだ」


 短く自己紹介をし、セイという女性は軽くお辞儀をする。


「まだ怪我が治ってないようだから、入隊は来週からになる。差し当たってセイは──」


 怪我か、彼女の首元からうっすら包帯が見えた。一抹の不安がよぎった。

 その後の手続きはあっけなく終わり、彼女はかえって行った。




 応接間で会長と2人きりになった。


「訳ありだが、いい力持ってるみたいだし……フリート、セイの面倒を見てくれ」

「俺がですか、セイって女性じゃないですか。誰か女のモリテに頼んでくださいよ」

「まぁ。とにかくオマエにしか頼めないんだ。細かいことはこれを見てくれ」


 言われるままに会長から渡された経歴書を手に取る。


 ロワール-セイ

 現在18才。エーカー街で生まれ育つ。

 父は王家のモリテ。母は王都街で薬屋を営む上級回復師。


 数ヶ月前、セイの父親は国王への反逆の疑いで投獄。母親も連行され、道中に逃亡し行方不明。

 心体的ショックゆえか両親に対する記憶障害あり。

 王城に回復師として引き取られたが、低いレベルのままだったため退城。


 父親ゆずりの剣術には定評があったようだ。今まで別のモリ屋に所属していた。

 だが先日セイの雇い主が襲撃に遭う。重症。しかし雇い主の命に別条はなく、怪我はなかった? それでも周りの目撃者達によって告発され、退所。

 そうして今に至る……のか。


 セイの経歴書を会長の机の上に放った。


「なんだこりゃ、こいつはどこまで貴族に目をつけられているんだ。大体この雇い主って国王派のやつだろ」


 だいたいの想像がついた。はめられたのだ。貴族は利益とならない彼女の評価を下げ、傷をつけた。モリテとしての価値も下がる。

 それにモリテとして主を守れず追い出されるのは屈辱だ。次の(あるじ)を得るのは容易ではないだろう。


「だからこんなに離れた辺境のモリ屋まできたのか。いや、飛ばされてきたのか。モリテを辞めることもできただろうに」

 苛立ちながら、放った経歴書の下欄を見る。


 備考……解毒できない回復師



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ