モリテのセイ
モリテ、それは主人を守る護衛。
「死んで主を守れ」
ここは守り屋。
仕事を亡くし、家族、行き場所を失ったものが集う、モリテの宿り場。
雇い主から契約の申し出があるまでは、寮であるモリ屋で生活する。
食堂で2人の男が話をしている。話題は主人が決まったモリテ達のこと。
昨日、また1人モリ屋を出て行ったらしい。
「おい、聞いたか……の奴死んだらしいぜ」
「ああ聞いたよ……も同じく死んだってよ。あー、俺も早くいきてーなぁ。主を守って逝けたら本望」
そこへ黒髪の男が2人の話に割り込んでくる。
「おいおい、俺は簡単に死なないぜ、どうせなら好きに暴れてやる」
得意げに鼻をならしている。だが、その考えを気に入らない人達もいる。
「ったく、こうゆう奴がいるからうちのモリ屋は誤解されんだよ。野蛮だの反抗的だの」
「ケッ、死にたがりのしみったれどもよりはいいさ」
「あぁ、なんだ? やんのかよ」
「へっ、なんなら今やってもいいんだぜ」
ぐいっと立ち上がる振動で食器が鳴る。辺りに緊張が走るかと思いきや、ギャラリーは呆れた視線を送った。言い争う男達を後ろから止めに入る人影が。
「オイ! お前ら何やってんだ、早く昼飯食って稽古に戻れ! それとも俺の稽古相手になってくれるのか?」
一回り大きな体をした茶髪の男が、そこに立っていた。
「うっ、フリート隊長失礼しやした」
気圧された男たちが去って行く。
「おい邪魔するなよ、面白そうだったのに」
「ヴァン、またか。お前は気が短い。ケンカっぱやすぎる。それじゃモリテとして選ばれないだろうが。あいつらだって本当に死にたいわけじゃない。用は生きる目的だろう。与えられればそれに準じるだけのこと」
「でもよぉ、どうせならちゃんと自分として生きていきてぇだろう。なっ、セイもそう思うだろ?」
「え、あっ、そうですね」
「だろ!」
「そうだな、だがそう毎回──」
話し続けるフリートとヴァン。その横で昼食を食べるセイ。
言えない、主のために逝った仲間が羨ましいなんて。
そう思うわたしはただ死に場所を探しているんだろうか。納得できる最後を探しているんだろうか。