衝撃
「このかたはアンフナムとおっしゃてな、数年前から我々に知識なんかを授けてくださってな、他にも祭り事なんかも手伝ってくださってんのよ」
モルガはパンを口にほうばりながら紹介してくれた。
「魔法も使えるんだよね」
エリオも嬉々として喋った。
「魔法ですか?ぜひ、良ければ見せてもらえますか」
僕は少し興奮してしまい朝食を喉に詰まらせながらお願いをした。
「ホッホッホ、落ち着くが良い、テオの畑を見終わったら披露してしんぜよう、ただ、あまり高度な魔法は使えやせんからがっかりするかもしれんけどのう」
「がっかりなんてしませんよ、父さん早く畑に行こう」
興奮する僕をなだめながら朝食を食べ終え、五人で父さんの畑に向かった。
「あまり調子がよろしくない様だな」
「そうなんだ、年々収量も落ちてきている、土作りもしっかりやっているし、毎年天候にも恵まれてる、正直理由がさっぱりわからん」
父さんとモルガがそんな話をしている傍、アンフナムは土をいじっている。
「何かわかるの?アンフナム」
僕はアンフナムの一挙一堂に興味を抱き始めていた。
「ううむ、微量じゃが土壌に魔素が混じっておるみたいじゃ」
「魔素って何?毒の様なもの?」
「簡単に言うと魔力の元みたいなもんじゃ、これ自体は悪いものではないんじゃが、この世界の物質に宿るマナに何かしらの影響を与えているのは確かじゃ」
アンフナムの説明はとてもわかりやすく丁寧だ、エリオもいつの間にか、アンフナムの説明に聞き入っている。
「アンフナムよ、マナやら魔素やらそう言ったものは文字通り我々じゃ畑違いだ、何か策は無いもんかね?」
「うむ、考えはある、テオよ明日ワシと一緒に仕事をしてもらう、時間をあけておいてくれ」
「俺も一緒にか?俺も魔素だのなんだのとかちんぷんかんぷんだぜ?」
「それでも一緒にやらなければならん、ワシも永遠にこの土地に住み続けるわけにもいかん、この土地に住まうもの達でなんとかせねばならぬのじゃ」
アンフナムは厳しい口調で父さんに言った。
「わかったよ、じゃあ明日は一日開けておく」
父さんはあまり乗り気ではないようだ。
「僕もご一緒してよろしいですか?」僕はと言うと興味深々だ。
「もちろんだとも、では明日、3人で作業にうつるとしよう」
「モルガよ、明日の畑仕事頼んでいいか?」
「お安いごお用だ、エリオも連れて行くからな」
父さんはモルガにそう頼み、エリオは少し不機嫌そうだった。
そのあと、アンフナムは約束通り魔法を見せてくれた。
手のひらから白くて半透明の球体が現れた。
「これがアルケーと言う魔力そのもので数字で言う所の1じゃな、これに火のマナを足してみよう」
『ロギ』 ボワッ
アンフナムの手のひらに火の玉が現れた、僕は今生まれて一番興奮しているかもしれない。
「これが魔法じゃ、一番初歩的なものじゃがの」
「すごい、すごい、アンフナム僕も魔法を使える?」
「ううむ、それはわからんがこの世界の全てのものに大なり小なりマナは宿っておる、それを忘れんことじゃ」
アンフナムの難しい話と魔法を見れた興奮で疲れた僕は、ベッドにつくなり深い眠りに着いた。