『ウンディーネさんと迷惑な冒険者さんたち ④』
騒ぎを起こした冒険者さんたちは、見つけ次第、町の出入りを禁止する。
以前、ティーニヤさんは、そんなことを言っていました。
でもその前に、なぜ騒ぎを起こしたのか?
その理由を訊ねるべく、ティーニヤさんはギルド会館の前に姿を見せたのです。
冒険者さんたちの荷物は、あらかじめドーラさんが確認済み。
詳細をティーニヤさんに伝えます。
この時、ティーニヤさんの目元がピクっと動いたのです。
なんだか少し怒っている様子。
目つきも鋭い気がします。
そしてドーラさんのお話を聞き終えると、ティーニヤさんによる尋問が、はじまりました。
そこで判明する、様々な事実。
それは驚くべきものでした。
まず、この冒険者さんたちの拠点ですが、イールフォリオに移していません。
なら隣町のラドブルクなのかと言うと、そちらでもありませんでした。
冒険者さんたちの拠点は、アルファルムンだったのです。
なんでまた、そんな遠くから来たんですかね?
疑問を抱くわたしに、ドーラさんは冒険者カードを見せてくれました。
そこには確かに『アルファルムン』と記載されています。
冒険者カードは偽造不可能。
なので、事実であると理解しました。
ティーニヤさんは、事前にドーラさんに知らされていたようですが……。
冒険者さんたちから改めて聞かされたことにより、表情が険しくなっていたのです。
さらに、女性のエルフさんと中年のエルフさんが見つかった場所。
実はこの場所……以前イールフォリオで活動していた、冒険者さんのお家であることが判明しました。
そのお家を、冒険者さんたちが購入。
それも相場の3倍で購入したとのことです。
金貨にして100枚以上。
かなりの金額になります。
ここでも、ティーニヤさんは顔をしかめていました。
なぜなら、この冒険者さんたちのランクは、3人ともシルバーランク。
こんな大金を稼げるわけがないと言うのです。
それは偏見なのでは?
……と思いましたが、冒険者さんたちの所持金は銀貨数枚ほどでした。
そこまでして、お家を購入しますかね?
計画性が、なさすぎです。
ドーラさんが言うには、冒険者さんたちはクエストを一切行っていないとのこと。
ならどうやって、お金を稼いでいたのでしょうか?
謎が謎を呼びます。
ところがこの謎を、ティーニヤさんは、いとも簡単に解決してしまったのです。
それも、たった一言で。
「貴方がたに資金を援助したのは……コヴィルダお姉様ですわよね?」
「「「…………!!」」」
今まで素直に自供していた冒険者さんたちの口が、突然閉ざされました。
ここで否定しないと言うのは、認めたのと同じことです。
それにしても、黒幕さんがいたとは驚きですね。
その黒幕さんが、ティーニヤさんのお姉さんだと言うのですから、複雑な気持ちになります。
腹違いとは言え、お姉さんなのに……。
酷い、お話です。
そんなことを考えつつも、尋問は続きます。
ですが、冒険者さんたちの口が開くことはありませんでした。
「どうやら、これ以上お話ししても、時間を無駄にするだけですわね。では、この者達をアルファルムンに……」
冒険者さんたちから、衛兵さんに視線を移し、そう指示している途中。
中年のエルフさんがニヤリと笑いました。
ところが次の瞬間、ティーニヤさんもニコっと笑ったのです。
「……と思ったのですが、カスタリーニで裁いて頂く事に致しますわ」
その言葉を聞いて、中年のエルフさんは慌てた様子をみせます。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! なんで、そうなるっ?!」
「何故と仰いましたか? それはですね……アルファルムンだと公平な裁判が行われないからですわ。恐らく、コヴィルダお姉様の配下の者が裏で手を回して、貴方がたの罪を軽くする事でしょう。いえ……お姉様の事ですから、そのまま釈放する可能性もありますわね。大きな罪を犯したのに、罰せられないなど、お話になりませんわ」
「話にならねぇのは、こっちのほうだ! 町で騒いだ程度で、大袈裟なんだよっ!!」
「町で騒いだ程度ですか……貴方、本気で仰ってますの? 貴方がたが騒ぎを起こした所為で、わたくしの大切な領民達は酷く心を痛めましたのよ。中には町の経済を支える有力者が、この町を離れるとまで仰ったそうですわ。それこそが、貴方がたの狙いだったのでは、ありませんか??」
そう言うと、中年のエルフさんはクワッと目を見開きました。
これは図星のようですね。
中年のエルフさんは、なにも言い返さずにいます。
「やはり、そうでしたのね。如何にも、お姉様の考えそうな事ですわ。これだけの事を貴方がたは、なさったのです。イールフォリオの領主として、この非道な行いを見過ごす事など出来ませんわ。お話は以上です。この者達を連れて行きなさいっ!!」
強い口調で衛兵さんに指示をする、ティーニヤさん。
いつもの穏やかな感じは一切ありません。
それだけ怒っていると言うことなんでしょうね。
ティーニヤさんの言葉に気圧されたのか、中年のエルフさんは再び口を閉ざしました。
そして、そのまま肩を落とします。
今日のティーニヤさんは凛々しくて素敵ですね。
それと同時に、町の皆さんに対する強い愛情を感じました。
そう思っていたのに……。
「ディーネさあぁぁああん! 怖かったですわああぁぁああっ!!」
冒険者さんたちが馬車に乗せられ、ギルド会館から離れた直後。
今にも泣きだしそうな状態のティーニヤさんに、勢いよく抱き着かれてしまいました。
どうやら、今まで気を張っていたようですね。
でもまあ……そんなティーニヤさんも愛らしくて素敵だと思います。
こうして町を騒がしている一連の事件に、終止符が打たれたのです。




