↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境のウンディーネさん  作者: みずのひかり
88/166

『ウンディーネさんと迷惑な冒険者さんたち ④』

 騒ぎを起こした冒険者さんたちは、見つけ次第、町の出入りを禁止する。


 以前、ティーニヤさんは、そんなことを言っていました。


 でもその前に、なぜ騒ぎを起こしたのか?

 その理由を訊ねるべく、ティーニヤさんはギルド会館の前に姿を見せたのです。


 冒険者さんたちの荷物は、あらかじめドーラさんが確認済み。

 詳細をティーニヤさんに伝えます。


 この時、ティーニヤさんの目元がピクっと動いたのです。


 なんだか少し怒っている様子。

 目つきも鋭い気がします。


 そしてドーラさんのお話を聞き終えると、ティーニヤさんによる尋問が、はじまりました。


 そこで判明する、様々な事実。

 それは驚くべきものでした。


 まず、この冒険者さんたちの拠点ですが、イールフォリオに移していません。

 なら隣町のラドブルクなのかと言うと、そちらでもありませんでした。


 冒険者さんたちの拠点は、アルファルムンだったのです。


 なんでまた、そんな遠くから来たんですかね?


 疑問を抱くわたしに、ドーラさんは冒険者カードを見せてくれました。

 そこには確かに『アルファルムン』と記載されています。


 冒険者カードは偽造不可能。

 なので、事実であると理解しました。


 ティーニヤさんは、事前にドーラさんに知らされていたようですが……。

 冒険者さんたちから改めて聞かされたことにより、表情が険しくなっていたのです。


 さらに、女性のエルフさんと中年のエルフさんが見つかった場所。

 実はこの場所……以前イールフォリオで活動していた、冒険者さんのお家であることが判明しました。


 そのお家を、冒険者さんたちが購入。

 それも相場の3倍で購入したとのことです。


 金貨にして100枚以上。

 かなりの金額になります。


 ここでも、ティーニヤさんは顔をしかめていました。


 なぜなら、この冒険者さんたちのランクは、3人ともシルバーランク。

 こんな大金を稼げるわけがないと言うのです。


 それは偏見なのでは?

 ……と思いましたが、冒険者さんたちの所持金は銀貨数枚ほどでした。


 そこまでして、お家を購入しますかね?

 計画性が、なさすぎです。


 ドーラさんが言うには、冒険者さんたちはクエストを一切行っていないとのこと。


 ならどうやって、お金を稼いでいたのでしょうか?

 謎が謎を呼びます。


 ところがこの謎を、ティーニヤさんは、いとも簡単に解決してしまったのです。

 それも、たった一言で。


「貴方がたに資金を援助したのは……コヴィルダお姉様ですわよね?」


「「「…………!!」」」


 今まで素直に自供していた冒険者さんたちの口が、突然閉ざされました。

 ここで否定しないと言うのは、認めたのと同じことです。


 それにしても、黒幕さんがいたとは驚きですね。

 その黒幕さんが、ティーニヤさんのお姉さんだと言うのですから、複雑な気持ちになります。


 腹違いとは言え、お姉さんなのに……。

 酷い、お話です。


 そんなことを考えつつも、尋問は続きます。


 ですが、冒険者さんたちの口が開くことはありませんでした。


「どうやら、これ以上お話ししても、時間を無駄にするだけですわね。では、この者達をアルファルムンに……」


 冒険者さんたちから、衛兵さんに視線を移し、そう指示している途中。

 中年のエルフさんがニヤリと笑いました。


 ところが次の瞬間、ティーニヤさんもニコっと笑ったのです。


「……と思ったのですが、カスタリーニで裁いて頂く事に致しますわ」


 その言葉を聞いて、中年のエルフさんは慌てた様子をみせます。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! なんで、そうなるっ?!」


「何故と仰いましたか? それはですね……アルファルムンだと公平な裁判が行われないからですわ。恐らく、コヴィルダお姉様の配下の者が裏で手を回して、貴方がたの罪を軽くする事でしょう。いえ……お姉様の事ですから、そのまま釈放する可能性もありますわね。大きな罪を犯したのに、罰せられないなど、お話になりませんわ」


「話にならねぇのは、こっちのほうだ! 町で騒いだ程度で、大袈裟なんだよっ!!」


「町で騒いだ程度ですか……貴方、本気で仰ってますの? 貴方がたが騒ぎを起こした所為で、わたくしの大切な領民達は酷く心を痛めましたのよ。中には町の経済を支える有力者が、この町を離れるとまで仰ったそうですわ。それこそが、貴方がたの狙いだったのでは、ありませんか??」


 そう言うと、中年のエルフさんはクワッと目を見開きました。


 これは図星のようですね。

 中年のエルフさんは、なにも言い返さずにいます。


「やはり、そうでしたのね。如何にも、お姉様の考えそうな事ですわ。これだけの事を貴方がたは、なさったのです。イールフォリオの領主として、この非道な行いを見過ごす事など出来ませんわ。お話は以上です。この者達を連れて行きなさいっ!!」


 強い口調で衛兵さんに指示をする、ティーニヤさん。

 いつもの穏やかな感じは一切ありません。


 それだけ怒っていると言うことなんでしょうね。


 ティーニヤさんの言葉に気圧されたのか、中年のエルフさんは再び口を閉ざしました。

 そして、そのまま肩を落とします。


 今日のティーニヤさんは凛々しくて素敵ですね。


 それと同時に、町の皆さんに対する強い愛情を感じました。


 そう思っていたのに……。


「ディーネさあぁぁああん! 怖かったですわああぁぁああっ!!」


 冒険者さんたちが馬車に乗せられ、ギルド会館から離れた直後。

 今にも泣きだしそうな状態のティーニヤさんに、勢いよく抱き着かれてしまいました。


 どうやら、今まで気を張っていたようですね。

 でもまあ……そんなティーニヤさんも愛らしくて素敵だと思います。


 こうして町を騒がしている一連の事件に、終止符が打たれたのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。