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辺境のウンディーネさん  作者: みずのひかり
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『ウンディーネさんと個人依頼の達成証明書』

「門よ開け(ゲートオープン)! 移動目的地(デスティネーション)ポルトヴィーン!!」


 神具の腕輪を使い、わたしはアルマさんをポルトヴィーンに送り届けます。

 アルマさんにとって、10日(1週間)ぶりの帰宅です。


 そのアルマさんですが、光の柱が消えるなり怪訝な顔をしました。


「なあ、ディーネの姐さんよ。マジで戻ってきたんだよな?」


 神具の腕輪は問題なく発動してましたからね。

 ここがポルトヴィーンであることは間違いないはずです。


 とは言え絶対とは断言できないので、自信なさげに答えることに。


「……と思いますけど、何か気になることでもありましたか?」


「神官さまが、いねーんだよ」


 神殿の中を見渡したところ、わたしたちしかいませんでした。

 執務室も、もぬけの殻です。


「あれ? どこに行ったんでしょうね??」


「さーな。どっかでサボってんじゃねーか?」


「そんなことをするような神官さんには見せませんでしたけど……アルマさんが依頼された時も、きちんと対応してましたし」


「ジョーダンだよ。ここの神官さまは神殿よりもギルドにいるコトのほうが多いからよー。そっちにいるんじゃねーかな?」


 言われてみれば、神官さんとお会いしたのはギルド会館でしたね。

 常駐しているようなものなんでしょうか?


 ちょっと気になりますが、今はそんなことよりも……。


「わかってるなら、なぜ疑うようなことを言ったんですか?」


「そいつぁアレだ。景色は変わんねーし。移動してるっつー感覚がねーからだよ」


「まあ、確かに移動している感覚はないですね。わたしも最初はそう感じましたし」


「だろ? 神具っつーだけあって、スゲーとは思うけどよ。ありゃあ慣れねーわな」


 苦笑いを浮かべながら、アルマさんは神殿の扉を開けました。


 それと同時に感じる海から吹く優しい潮風。

 ここがポルトヴィーンであることを証明しています。


 だからでしょうか、アルマさんの表情が一気に明るくなりました。


「帰ってきたぞーーーっ!!」


「お疲れさまでした。20日(2週間)後にオークさんの木の実が届くそうなので、受け取ってくださいね。その次からは一か月おきに届く予定ですから」


「わーってるって。ディーネの姐さんにはマジで世話になっちまったな」


「それはわたしも同じですよ。素敵なお家をありがとうございます」


「礼を言いてえのはオイラのほうだけどな……まっ、またなんかあったら言ってくれや。いつでも駆けつけるからよっ!」


「はい。ではお元気で」


「じゃーなー……って、そーだ。こいつを忘れてた」


 振っていた手をズボンのポケットの中に突っ込み、そこから一枚の紙を取り出しました。

 それをわたしに差し出します。


「これはなんですか?」


「オイラが出した依頼の達成証明書だ。こいつをギルドに出さねーとポイントがつかねーだろ?」


 達成証明書? ポイント??

 その言葉に一瞬首を傾げますが……。


「あー、ギルドへの貢献度ですか」


 すぐにその意味を理解しました。


 本来個人で受けた依頼はクエスト完了後に、ギルドへ報告しなくてはいけません。

 そうしないとギルドへの貢献度が貯まらないからです。


 貢献度が高くなれば冒険者さんのランクが上がる。

 ランクが上がれば受けられる依頼が増える。


 これは主に討伐クエストの場合ですが……。


 なのでわたしはランクに興味がありませんでした。

 個人で受けるクエストなんて、行商人さんの護衛くらいですし。

 わざわざ報告するまでもないと思っていたのです。


 ですがこれからはそうもいってられません。

 今はフリーの冒険者さんではなく、拠点登録している冒険者さんなのですから。


「ディーネの姐さんはゴールドランクの冒険者だから微々たるモンかもしれねーけどよ。拠点登録してるギルド(イールフォリオ)の株はちったぁ上がるだろ?」


「そうですね。ではギルドに寄ってから帰ろうと思います」


「そーしてくれ。んじゃ、またなー」


 再び手を振り、アルマさんはお家のある丘へと歩きだします。

 その様子を見送ったあと、わたしはギルドに向かうことにしました。


「シュヴァルツさん、フウカさん、わたしたちも行くとしますか」


「わおん」


「ハイデス」


 港に続く緩やかな下り坂。

 でもなぜかギルドに近づくにつれ、妙な違和感を覚えます。


「なんだか騒がしいですね」


 遠目ではありますが、港に人が集まっているようです。

 大きな船でも着港したのでしょうか。


 そんなことを思いつつ、気づけばギルド会館の前へと到着。


「シュヴァルツさんとフウカさんは、ここで待っていてくださいね。すぐに戻ってきますから」


 シュヴァルツさんとフウカさんに軽く手を振ります。

 そのあとギルド会館のドアを開けたのですが……。


「あれ? 誰もいませんね」


 イールフォリオでも似たようなことがありましたが、あの時は受付さんであるシリフィさんが椅子に座ってました。

 ですが今回は誰もいないのです。


 困りましたね。

 依頼を発行しているのがポルトヴィーンのギルドなので、ここでしか処理ができません。


 とりあえず町の人に聞き込みでもしてみるとしますか。


 そうと決まれば即行動。

 ギルド会館を出たわたしは、シュヴァルツさんとフウカさんと一緒に人だかりができている港へと向かいます。


 そして……ここで思ってもみなかった女性と再会したのです。


 それはゲームの中に登場する、あるキャラクターさんでした。

 間違いありません。


 大きな船の先端に腰を下ろす、背(・)中(・)に(・)翼(・)の(・)生(・)え(・)た(・)その女性。

 わたしがかつてゲーム内で治療した、セイレーンさんの姿があったのです。

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