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白雷のルシウス  作者: がおがお
精霊界編
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精霊界

 一年後--王都近くの森深くにある精霊門。その場所に、膨大な魔力を持つ者たちが集まっていた。


 ルシウス率いる白雷隊、王国の魔術師隊、そして風竜シルヴィラ、竜王ネレイデス、エルフの村の戦闘員10名、吸血鬼の真祖カズィクル=ベイ、それに帝国の勇者五名。


 本来ならば、一同に介すことなどないであろう埒外の戦力すら含まれており、精霊界に喧嘩を売るのに相応しい戦力だ。


「準備はいいか?」


 ルシウスが皆へ問う。それに対して、全員が静かに頷いた。


 それを見たルシウスが、精霊の涙へ魔力を流した。精霊の涙が輝き、眩しい程の光を発する。


 それに呼応するように精霊門が現れ、精霊界への門を開いた。


「いくぞ!」


 ルシウスが精霊門へと消えていき、それに全員が続いていく。後には輝く精霊門だけが残っていた。





  精霊門に入った先は、見たこともない巨大な木が林立する場所だった。その枝には色鮮やかな果実が生っている。


「ここが精霊界……」


 初めて見る景色に一行が目を奪われていると、ポツポツとカラフルな魔力の玉がいくつも現れはじめた。


「下位精霊だ」


 アグニが告げる。そしてルシウスが指示を出す。


「魔術師隊! ここは頼む!」


「「「「応!!」」」」


 二十名から構成される、王国が誇る魔術師隊が魔法の詠唱をはじめた。


「いくぞ!」


 魔術師隊に下位精霊を任せて、ルシウス達は先へ進む。行く手を阻んだ下位精霊を薙ぎ倒しながら。


 巨大な木が林立した場所を抜けると大きな滝があり、膨大な質量の水を眼下に見える川へと叩きつけていた。


「ちょ……ボク達飛べないんだけど……」


「シルヴィラ頼む」


「はいはい」


 シルヴィラの巻き起こした風が、白雷隊の隊員達をその背に運ぶ。


「うわわわ!?」


 ドスっと音をたてて背に乗せると、翼を広げて滝壺へと落ちていく。


「「「ぎゃぁあああ!?」」」


 絶叫をあげて、振り落とされまいと背にしがみつく。そして滝壺へ落ちる直前、急激に向きを変えて上昇する。


「「「うぉおおおお!?」」」


 半端ではないGに悶絶する隊員達だが、鍛え抜かれた身体強化を駆使して、なんとか振り落とされずにしがみついていた。


「あれは?」


 空を飛ぶ一行の先に、蜥蜴や水亀などが浮かんでいた。


「上位精霊だ」


 それを聞き、ルシウスが再び指示を出す。


「みんな、シルヴィラ。ここは頼んだぞ」


「まっかせてよ!」

「ボクのスーパーパンチを見せてやるー!」

「やっと出番ね!」

「ルウ君、気をつけてね!」

「頑張ります!」

「相手にとって不足はねぇ。任せな!」


 みんなの頼もしい言葉を背に受けて、ルシウス達は突き進む。


 残っているのはルシウス、ネレイデス、ベイ、勇者一行だ。アグニはまだ召還していないため、肩に乗るアグニの欠片だけだ。


「精霊王はどこに?」


 ルシウスがアグニへ問う。それにアグニが先へ視線を向けたまま答える。


「この先に世界樹がある。そこを六大精霊が守護している」


「そこに精霊王もいるんだな?」


「そうだ」


「よし、いくぞ」


 更に速度を上げる一行。景色が背後へと流れていく。精霊界は途轍もなく広い。途中に現れる下位、上位精霊を消滅させながら突き進んでいった。







『フレイムランス!』


『アクアスプラッシュ!』


『エアハンマー!』


 魔術師隊が複数の属性の魔法を発動させる。王国の誇る魔術師隊は、練度が高い。


 あくまで人の範囲ではあるが、下位精霊の対となる属性で的確に攻撃することで、確実に数を減らしていた。しかし--


「--くそ! 数が多すぎる!」


 下位精霊はあまりに数が多い。ポツポツと現れていた光は、既に半球状の全天を覆い尽くしている。


「手を止めるな! 全てを滅する必要はない! 耐えきれば勝ちだ!」


 先ほどまで一緒にいた、埒外の化け物達を信じて魔法の詠唱を続ける。


 詠唱の必要がない精霊に対して、数名ずつ発動をずらすことで隙をなくしていた。


「魔力を回復しろ!」


 たった今魔法を放ったチームが、魔力ポーションを飲み干す。


 ルシウスの丸薬は割合回復のため、膨大な魔力を持つルシウス達には効果的だが、王国の魔術師隊レベルだと、特級の魔力ポーションのほうが効率が良いのだ。


 瞬間的に回復した魔術師隊は、再び詠唱を開始する。


「気を抜くなよ! 誰も死ぬことは許さん! 最後まで戦い抜け!」


「「「応!」」」


 



夢心地の(トロイメライ=)氷地獄(コキュートス)


 マリーの放った魔法が周囲を空間を凍り付かせる。


「いっくぞー!」


『--女神の一撃(ガイア=ハンマー)!』


 凍り付いた空間へ、地を付与した拳を振り下ろした。


 空間を内にいる精霊ごと爆裂させる。そして、シルヴィラから飛び出していたレーナは自由落下を開始する。


「うわ、うわわわぁああ!?」


 ポスっと滑り込んだシルヴィラの背に落ち、胸をなで下ろすレーナ。


「ふぃー! ありがとーシルちゃん!」


「いいけど、あんまり飛び出さないでよね」


「わかったわかったー!」


「じゃ次あたしがいくわよ」


絨毯(ブレイズ=)爆撃(イグニッション)!』


 ルシウスを模倣した魔法名を紡ぐと、空を埋め尽くすように炎球が現れた。


 エリーが口角をあげ「喰らいなさい」と腕を振り下ろす--


 --同時に空を埋め尽くす炎球が落ちてきた。


「うおっ! あっちぃ! エリー! ちょっと近すぎるんじゃねーか!?」


 飛び散る火の粉からレウスが逃げ回る。シルヴィラは強固な鱗で守られており、この程度の火の粉でどうにかなることはない。


「っていつのまに!?」


 既にレウス以外は身体強化を発動させており、火の粉程度ではダメージにならなくなっていた。


「俺も……『嵐の皇帝(ゲイル=エンペラー)!』」


 レウスの周りを嵐のような風が吹き荒れる。


「ちょっと! その風早く抑えなさいよ!」


 嵐に髪を巻き上げられながらエリーが叫ぶ。


「レウス君……は、早く止めてー!」


「ご、ごめんなさい」

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