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白雷のルシウス  作者: がおがお
精霊界編
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エルフの村

「やっぱりいなかったな」


 ルシウスは勇者一行と出会った場所より北東--王都より北--の上空を移動していた。


「これで当てがなくなったか」


「そうだな……魔力探知しながら移動するくらいしかできないな」


「それはまた気の遠くなる捜し物だな」


「……お? こんなところに村があるのか」


 眼下には、人工数十人程度と思われる小さな村が見える。村の周りには畑を耕している村人の姿も見える。


「降りてみよう」


 畑を耕している村人の近くに降りたったルシウスに、目を見開くように村人が驚いている。


「だ、誰ですか?」


 振り返った女性は翠の腰までかかる美しい髪が風に揺れていた。瞳は碧く、その耳は長く尖っていた。


(え? エルフ? まじか)


「驚かせてすまない。俺はルシウス。君は?」


「……セルフィ……あなた……人間?」


「そうだ。セルフィはエルフ……で合ってる?」


「はい……どうやってここへ……」


 その時、他の村人も気づいたようで、ルシウスの元へ集まってきていた。


「貴様何者だ! セルフィ! こっちへ来い!」


 その中の一人、翠の短髪の青年が叫ぶ。


(え、何これ。いきなりかなり敵対されてる?)


 セルフィが村人達のほうへ移動し、ルシウスはそれを見送る。


「何者かと聞いている! どうやってここへ来た!」


「ルシウス、人間だ! 敵意は無い!」


 手を上げて敵意がないことを示す。しかし村人の警戒はまだ解けない。


「どうやってここへ来た!」


「どうやってって何だよ!? 飛んできたんだよ!」


 何を聞きたいのかよくわからなかったが、何とか誤解を解こうと真実を話す。


「嘘をつくな!」


「兄さん、あの人の言うことは本当です」


「……セルフィ?」


「あの人が空から降りてきたのを見たんです」


「飛んで……そんなことが可能なのか?」


「証明してみせればいいか? ほら、『風の翼(ヴァン=フリューゲル)』」


 風を纏い、空へと浮かんでいく。エルフ達は唖然とした表情でその光景を見ていた。


「わ、分かった! お前の言うことを信じる!」


 信じてもらえたことに安心し、地上へ降りて風の翼を解除する。


「飛んできたのなら、ここへたどり着けたことも説明がつく」


「ん……? 歩いては来れないのか?」


「結界を張っている。地上からは方向感覚が狂って、ここへたどり着くことはできない」


「なるほど……」


(そりゃ警戒して当然か)


「それで、何をしに来た?」


「あぁ、ちょっと人というか吸血鬼? を探してるんだ」


「……吸血鬼?」


「カズィクル=ベイってやつなんだけど--」


「--カズィクル=ベイだと!?」


 身を乗り出し、ルシウスに詰め寄る。


「知ってるのか?」


「知ってるか……だと? 何故奴を探している」


 男の雰囲気が変わる。目は鋭くルシウスを射抜き、薄まっていた警戒が元に戻る。


(あいつを知ってる……? 不要な嘘は逆効果だな)


「世界に危機が迫っているんだ。奴の力を借りたい」


「危機だと? 説明しろ」


 ルシウスが、精霊王の企みについて話しはじめ、エルフ達はそれに聞き入る。世界の消滅を知り、天を仰ぐ者もいた。







「その話が本当だとして……吸血鬼に助力を請うだと? それを受け入れられると思っているのか」


 男の言うことは尤もだ。カズィクル=ベイは吸血鬼であり、深淵(アビス)と呼ばれる魔物だ。当然だが人に対して友好的な存在ではない。


「あいつはちょっと俺に興味があるみたいでね。それを餌に協力を頼むつもりだ」


「お前に興味を……?」


「それはいいだろ。とにかく、可能性はあるってことだ」


 ルシウスの瞳を真っ直ぐに見つめる。嘘はないか、虚言を見抜こうとする意志が感じられる。


「嘘はないようだ」


「ここで嘘を言う意味はない」


「……分かった。協力しよう」


「協力?」


 何の協力かと内容について聞き返す。


「カズィクル=ベイを探しているんだろう」


「居場所を知ってるのか!?」


 身を乗り出して居場所について問う。


「居場所は知らない」


(居場所を知ってるわけじゃない……どういうことだ?)


「だが、奴を誘い出すことはできる」


 落ち着いた様子で答える。その瞳には僅かに怯えの感情が宿っている。


「なるほど……どうやって?」


 エルフ達の魔力が膨れ上がる。隠蔽していたらしいその魔力は、一人一人が風竜シルヴィラに迫る程だ。


(へぇ……)


「驚かないんだな」


「まぁな。それで、どうやって誘い出す」


 男は首にかけられているペンダントを取り外してルシウスへ見せる。金色の直径五センチ程の宝石の中には、魔力が渦を巻いている。


「……私達は、奴に追われている」


「これは?」


 何か分からないと言った様子で、男の瞳を見返す。


「これは月の石(ムーンストーン)という」


(月の石? 月と何か関係があるのか?)


「この石は、月光を封じている」


「嫌な予感がするんだが……」


 目を細め、最悪の想定を思い浮かべる。


「これを身につけた吸血鬼は、満月の下にいるのと同じ効果を得る」


(あかん。それあかんやつや)


 ルシウスは絶対に渡せないと決心する。


「そんなものあいつが持ったら手がつけられないぞ」


 ヴァレリアを滅した際に使った太陽形成(ソアレ=フォルマーレ)だが、肌のすぐ側に月の石を身につけられれば、どれ程の効果があるか分からない。


 全く無いということはないと思うが、恐らく完全に遮断することはできないだろう。


「奴は第二層の化け物だが、これを持てば……」


「第一層にすら届く……か」


 アグニは例外だが、第三層のヴァレリアですら満月の庇護を得た時の力は、異常の一言だった。


(第一層については、エリーの実家にあるリストにも載っていなかったらしいが、やばいのは分かる)


「だから絶対に渡せない。だが、俺たちの魔力を見つければ、奴は他の何を置いても来るだろう」


 月の石のペンダントを再び首からかけ、服の中へと石を隠す。


「結界ってのはあんた達を隠してたってわけか」


「そうだ」


「奴を誘い出して、その石はどうする?」


「当然渡すわけにはいかない。だが俺たちにどうにかできる相手でもない」


「俺がなんとかするしかないってことか」


「お前は、奴から石を守れるか」


 真剣な眼差しがルシウスを射抜く。カズィクル=ベイが月の石を持てば、それこそ、世界を滅ぼす程の力を得るだろう。


 彼女がそうするかどうかは別として、手がつけられない脅威となることは間違いなかった。


 真っ直ぐに瞳を見返し、確固たる意志をもって答える。


「あぁ。必ず守る」


 男は笑みを返す。


「名を名乗ってなかったな。俺はティアーノだ」


「俺は--」


「もう聞いた」


 ルシウスも笑みを返し、握手を交わす。


「それで、準備はいいのか?」


「あぁ。いつでも構わない」


 ティアーノの合図で、エルフの村を隠していた結界が解除された。


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