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白雷のルシウス  作者: がおがお
精霊の涙編
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寂れた魔法具屋

「えぇ!? じゃあ風竜を仲間にしたの?」


 ルシウスは追いついた先で、シルヴィラについて説明していた。


「仲間ってわけじゃない。精霊界に乗り込む時限定で協力してもらえることになったんだ」


「風竜って強かったー!?」


 キラキラとした瞳でレーナがシルヴィラのことを問う。


「あぁ、深淵(アビス)よりは落ちるが、そう変わらないレベルだったな」


「戦力的には今ってどうなのかな?」


 アリスが問うているのは、今の戦力で精霊界と戦えるのかどうかということだ。


 アグニは精霊王と渡り合える実力を持っているだろう。しかしそれ以外は?


 ルシウスは良い魔法具を手にいれたことで、大精霊すら越える力を手に入れているが、その力は現状では短時間限定でしか使えず、継戦能力はほとんどない。


 シルヴィラは上位精霊を相手にする分には問題ないだろうが、大精霊相手には厳しいだろう。


 他の六人は複数で上位精霊を相手取ることはできるだろうが、圧倒的に数が足りない。


「大精霊以下の相手をする戦力が、全く足りていない」


 アグニが冷静に事実を答える。


「どうするんだよ?」と厳しい状況にイザベラが頭を抱える。


「戦力を増やすしかない。それも……深淵級の戦力を……」


 その発言に六人は息を飲む。


「深淵級ってそれ深淵しかいないよー?」


 レーナが言うことは当たり前で、当然のことだ。隔絶した力を持つからこそ深淵と呼ばれている。もし力がなければ深淵とは呼ばれていない。そしてそんなやつらを引き入れることが可能なのか、知る者はおらず、少なくとも前向きに考えられる内容ではなかった。


「なんとか説得してみるしかないな……」


「じゃあ竜王にも頼むの?」


「竜王は戦闘狂らしいからなぁ……戦闘は避けられないかも……ただ、もしかすれば可能性はあるかもしれない」


「竜王……私達はまた力になれないのね……」


 俯き、自身の力の無さに拳を強く握りしめる。口元はギリ--と強く結ばれている。


「気にしないで。みんなはどんどん強くなってる。本当だ。ちゃんと力になってくれてるさ」


 六人も自分達に全く力がないとは思っていない。しかし、場を決するような頂上の戦いとなれば、どれだけ無力かということもりかいしていた。


「絶対にもっと強くなるわ」


「俺もだぜ!」「あたしもあたしもー!」


「ルウ君一人にはさせないからね!」


 みんなの決意に頬を緩めるルシウス。


「あぁ。分かってるよ。それじゃあ、王都に戻ろう。竜王のところには、魔法具ができたら一人で行くよ」


 一行は王都への帰路につく。渓谷からは風が強く吹いており、大地の砂を巻き上げていた。





 ルシウスは魔法具作成と、報告のために王城へ来ていた。他のメンバーも一緒だ。


「そこの六人が白雷隊の隊員か。一人だけ年が離れているようだな?」


 陛下が値踏みするように隊員達を見回す。


「はい。彼女は元々冒険者をしていたのですが、私がスカウトしました」


「そうか。それで、精霊界--だったか」


「はい。そう遠くない未来、恐らく数年以内にこの世界が侵食されます」


「……今お主達はそれを防ごうと動いているのだな?」


「はい。まだ戦力も必要な物も足らず、準備している段階ですが……」


「良い。精霊界というだけで、既に手に負えるとは思えぬ事態だ。それに対抗できる可能性があるというのなら、なんでもやるがいい。必要なものがあれば言え。用意できるものなら用意しよう」


「ありがとうございます」


「うむ……ところで、戦力に当てはあるのか? 王国の騎士団や魔術師団はどうだ?」


「……物理攻撃が主体の騎士団では精霊の相手は難しいでしょう。魔術師団であれば、下位精霊なら相手にできるかもしれません」


 アルベール王が眉を寄せる。


「王国が誇る魔術師団が下位に分類される敵の相手か……いや、精霊なのだ。下位でも相当な力を持っているのだろう?」


「はい。それに下位精霊は数が多いと聞いています。その分人数が必要になるでしょう」


「わかった。その時がくれば言ってくれ」


「ありがとうございます」





「ここか?」


 ルシウスがエリーと来たのは、王都の様々な商店が集まる広場--から狭い路地を進んだ先にある寂れた店だった。


「そうよ。店はこんなだけど、腕は確かよ。父さんが魔法具を買う時はいつもここだったわ」


「こんな--とは言うようになったようじゃな。エリーゼ」


 店から出てきたのは、顎に長く白い口髭を蓄えた小さな男だった。


「グステオおじさん!」


 エリーが再会を喜ぶように、グステオと呼ばれた男に抱擁する。グステオは「わはは」と笑いながらエリーの背中をポンポンと叩いている。


「え? ドワーフ?」


 ルシウスが、正にドワーフと言った体躯をしているグステオを見て目を丸くする。


「そうよ。おじさんはドワーフなの。腕のいい職人って、武具に限らず人よりもドワーフなのよ」


 ルシウスはこれまで亜人族を見たことはなかった。存在だけは知っていたのだが、この王都にいたことに驚いていた。


「久しぶりじゃのう。で、どうしたんじゃ? 魔法具が必要になったのか?」


「えぇ。ただ、今日は店にある魔法具を買いにきたんじゃないの。素材を持ってきたから、魔法具を作って欲しいのよ」


「ふむ? それは構わんが、なんの素材じゃ?」


「ルウ」


 エリーに呼ばれて、ルシウスは異空間収納から風竜の鱗を七枚取り出した。鱗一つがエリーの顔程もある、巨大な翠の鱗だ。


 グステオは何もない空間から鱗を取り出したことにも驚いたが、それ以上に取り出した鱗に目を奪われていた。


「そ……それは?」


「風竜シルヴィラの鱗だ」


「風竜じゃとぉ!?」


 身体強化ばりに一瞬でルシウスまでの距離を詰め、見開いた目で鱗を見やる。


「これを使って、七人分の魔法具を作って欲しいの。お願いできる?」


「……あぁ、できる。できるとも! やらせてくれ!」


 グステオの瞳は子供のように輝いている。


「これほどの素材……初めてじゃ! これを扱えるなど儂はなんと幸運か!」


「あ……うん。それじゃあよろしくね?」


「任せるのじゃ! 一ヶ月後にまた来い! さっそく取りかかる!」


 グステオは我慢できないとばかりに、ルシウスから鱗を受け取ると店の中へ引き返していった。


「大丈夫なのか?」


「えぇ。腕は確か……なはずよ」


 エリーもグステオの腕は信頼しているが、見たことのないグステオのテンションに少しだけ不安を感じていた。


 

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