オルデンブルク帝国vsアウグスト連邦3
「最後の剣士強いなー! ルウとどっちが強いかな?」
「さすがにルシウスが負けるわけねーだろ」
「そうですよ。私たち全員でも全く相手にならないんですよ」
「ルウ君のほうが強いと思う」
「まぁそれは間違いないわね。でも私たちだと……正直絶対勝てるとは言えないわね」
確かに最後の梔は本当に強かった。恐らくエリーでなんとか、というところだろう。他の四人は梔に属性付きの身体強化を使われた時点でかなり厳しい。
「まぁあいつは副将だ。エリーならなんとかなるさ」
「なんたって白雷隊の副隊長だかんね!」
さて、次が大将戦だ。本命の勇者の実力を見せてもらおうか。
「それでは大将、前へ」
『鑑定』
白銀 信也
職業=剣士
魔力=299600
おいおい。さすがに勇者は頭抜けてるな。ほぼ30万とかあの二階堂って魔導師より高いじゃないか。勇者って魔法職じゃないよな……?
相手の大将は腰が引けている。それも仕方ないだろう。副将戦までの戦いを見て、自分の力が通じる相手じゃないことは痛いほど理解しているだろうからな。
「大将戦----はじめ!」
『無敵の戦士』
なんじゃその魔法名。無敵なんて不可能なもんイメージしにくいだろうに。よくそれで使えてるな。
実際魔力の無駄はあまり無さそうだ。これが勇者特権とか言わないだろうな。
しかも魔法式も結構やばいぞこれ。
魔法属性=光
形状=纏
特殊=光剣
持続魔力=125
強化=1500×1.5
魔力=160000
速度=1000×1.5
絶対これ勇者特典だろ。なんで強化と速度両方に1.5倍の倍率がかかってんだよ。っていうか光属性? 聖属性と光属性って違うのかよ。闇の対が聖かと思ってたんだが……これはさすがに嫉妬してしまうな……
俺がどれだけ苦労して複合属性の強化魔法を開発したと思ってるんだ。
相手なんてもう身に纏うオーラ見て放心状態じゃないか。つーかこれに勝とうと思ったら、結構な力出さないとダメじゃん。あーあやだやだ。これだから勇者チートなんて嫌いなんだ。
「まだやるかい?」
何が「まだやるかい?」だ。かっこつけてんじゃないぞ。くそ、絶対勝ってやる。
「こ、降参だ! 降参する!」
賢明な判断、といいたいところだが、せっかく結界の中なんだし、少しくらい戦ってアピールすればいいのに。そしたらあいつの動きも少しは見れたんだが。
「大将戦勝者----白銀 信也!」
観衆にはあの身体強化のレベルなんて分かってないだろうが、あの身に纏うオーラだけで感じ取るものがあったんだろう。
あそこまではっきり具現化してれば、観衆にもはっきり見えただろうしな。
「それではここで、一旦休憩とします。半刻後の鐘にて再開いたします」
◆
「最後のやつ……あれはやばすぎだろ」
「ねぇルウ……あれに勝てる?」
「勝てるよ。ただ力はそれなりに出さなきゃいけないな」
「ホント!? ルウさすがだなー!」
「ルウ君すごい……」
これでも一応白雷隊の隊長なんでね。こんな学生の対抗戦で負けるわけにはいかないでしょ。あの化け物を相手にしなきゃならないんだから。
「よし、んじゃ俺は自分の相手に勝つぜ!」
「ボクもー!」
全勝は厳しいかもしれないが、試合には勝つ。ただちょっと心配なのは、結界が耐えられるのかどうか、だな。まぁあれだけすごい効果を常時維持してるくらいだから大丈夫だとは思うが……
「あ! ねぇルウ!」
「なんだ?」
「深淵ってどんなやつー?」
「いきなりどうしたんだ?」
「だってボク達の倒す敵なんでしょ? どんなやつなのかなーって」
あぁ、そりゃそうか。何と対峙しなければいけないのかも分かってないもんな。もちろん深淵自体は聞いたことあるだろうが、会ったことなんてあるはずもない。
「俺が知ってるのは一人だけだが……あれはマジもんの化け物だよ」
「ルウとどっちが強い?」
「俺……と言いたいとこだが、正直わからん。前に戦った時は完全に負けだったな。見逃してもらわなけりゃ死んでる」
「ええ!? ルウでも勝てないの!? そんなのボク達役に立つのかな……」
珍しくレーナが不安になっている。
「前って言っただろ。あれから俺もかなり強くなってる。今なら分からないさ」
それは事実だ。ただあいつはまだ本気じゃなかった。あいつの底がどれだけ深いか、だな。
「そっか! よーっし! ボクも頑張ってルウに追いつくぞー!」
「俺だって深淵かなんか知らねーが、倒せるようになってやるぜ!」
頼もしい隊員達だ。こいつらとなら何か希望が見える気がするんだよな。
まぁ、今のところは深淵も積極的に人間に関わってはないようだし、ゆっくり訓練させてもらうとするかね。
「あ、みんな、そろそろ時間だよ」
「お、観戦しにいこーぜ!」
俺たちはシードだから、次は決勝だ。それまでは観戦。参加国の数の兼ね合いもあるけど、一勝したら次が決勝とか楽すぎるだろ。
◆
「うーん……どこもパッとしないねー」
他の試合を見てレーナが呟いた。
「まぁ仕方ないだろ。うちや帝国と比べたら可哀想だ。帝国もあれはちょっと特殊だしな」
「そうなの? 確かに一人以外みんな見た目も珍しかったけど……」
この世界の人間じゃないからな。まぁそれを言ったところで何も変わらないし、俺たちのやることも変わらない。
「俺たちは勝つ。それでいいだろ」
レウスが立ち上がってそれに応じる。
「そうだぜ! 絶対に優勝してやる!」
「私も頑張るよ」
アリスもやる気だ。
「精一杯やりますね」
マリーはいつも頑張ってるよ。これからもよろしく頼む。
「分かってるわよ。あんな男に負けてなんかやらないんだから」
エリーが負けず嫌いなのは、この一ヶ月ですごく理解した。きっとあの剣聖にも勝ってくれる。
「えいえいおー!」
レーナは……うん。
王国、帝国以外の試合は大体近いレベルのものだった。本来なこんな感じなんだろう。いくら才能があるとは言っても、入学したばかりの新入生が王級魔術を使えるほうがおかしい。
結果も当然のように、王国と帝国が残った。そしてついに決勝戦となった。
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