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白雷のルシウス  作者: がおがお
新人対抗戦編
22/72

アルベール王国vsアルフォンソ国

「それでは第一回戦アルベール王国対アルフォンソ国を始める。先鋒は前へ」


 アリーナには各国のお偉いさんは勿論、多数の一般の観戦者が入っているようだ。見渡す限りの観戦席に空席は見あたらない。

 娯楽の少ないこの世界で、この対抗戦はかなり人気があるのだろう。アリス、大丈夫だろうか。


「女かよ」


 舞台から離れる時に、対戦相手のそんな声を聞いた。そんなことじゃ君が甘く見てる女の子に一矢報いることすらできないぞ。


「アリス! さっき言った通りやれば大丈夫だからな!」


「うん!」


 アリスなら大丈夫だ。俺は知っている。誰よりもアリスが頑張っていたことを。いつも最後まで研究室に残っていた。分からないことがあれば、自分の考えを出した上で俺に聞きに来ていた。

 見せてやれアリス。お前は強い。


「ありゃお前の彼氏か? 弱そうなやつだな」


「----くありません」


「あ?」


「ルウ君は弱くありません!」


「口ではなんとでも言える。まっどう見てもただの雑魚だけどな」


 あれ、あれれぇ? もう離れちゃったから何話してるのかはよく聞こえないけど……アリスさんなんか怒ってる? 大丈夫かな……あの男死ぬんじゃ……って結界があるんだったな。じゃあ安心だ。


「それでは----はじめ!」


「一撃で終わらせてやるよ! 燃えさかる炎、我が前に----」


天使の衣(アンヘル=アニマ)


 あれま! 普通の属性なしで十分って言ったのに。あの男よっぽどアリスを怒らせたみたいだ。バカだなぁ。普通の身体強化で怒らせなけりゃ少しくらいは魔法を使わせてもらえただろうに。


 会場内がどよめいている。アリスの詠唱破棄に対するものか、はたまた王級魔術か、その両方か。どちらにせよ詠唱しているようじゃ白雷隊(アルベド)の相手じゃないな。


「け、顕現せよ! 至高の……ぐぁああ!」


 仮にも王級魔術。何の強化もしていない生身で耐えられるはずもない。名前も知らない踏み台君は、アリス渾身の回し蹴りを延髄に喰らって場外へ退場した。アリスは意外にもそれなりに体術もできるのだ。


「ルウ君……! やったよ!」


「おう! よくやったな!」


「あーヤダヤダ。ボク達も応援してたのに名指しでルウ君だってぇ?」


「あ……え、ご、ごめん。そういうつもりじゃなくて……」


 こらレーナ、アリスをいじめるんじゃありません。


「なーんて冗談だよー! やったねアリスちゃん!」


「あ……ありがとう!」


 うむうむ。やはり女の子には笑顔が似合う。みんないい雰囲気だ。本当にいい部隊になってきたな。まぁ本来の国の部隊とか軍とかは絶対違うだろうけど、いいんだよ。白雷隊(アルベド)は俺達の隊なんだからな。


「先鋒戦勝者は、アリス=ワーグナー!」


 勝ち名乗りを受けて会場が湧き、大きく揺れている。一般観戦者は分からないだろうけど、各国のトップは焦っているだろうな。まさか十歳しか出ない対抗戦で王級魔術だ。ちなみにスカウトなんてものは全くの無駄だ。

 アリスは既に白雷隊(アルベド)の一員なんだからな! ふははは! ところでアリスのファミリーネームってワーグナーなのか。なんかかっこいいな。


「ま、待て!」


 負けた男がふらつきながら声をあげている。


「何だね?」


「その女は反則をした!」


「ほう? 何の反則をしたのか教えてくれるか?」


 反則? なんのことだ? アリスは反則なんかしちゃいない。身体強化して回し蹴りしただけだ。反則の要素なんてどこにもないだろ。


「お、王級魔術だぞ! そんな女が使えるはずがない! 何かしたに決まっている!」


 あ、なるほど。そういうことね。ホントにこういうやつっているんだなぁ。逆に感心するよ。だって何もないんだから当然あいつも何か見つけたわけじゃないだろ。つまり何も見つけてないのに決めつけてるんだ。自分の物差しでしか見れない愚かな男だ。


「何か、とは何だ? 私には何もおかしな点は見あたらなかったが」


 この審判は信頼できそうだ。まぁ信頼できないやつを審判になんか選ばないか。


「分からない! だけどバレないように何かしているに違いない!」


 もういいよお前帰れ。アリスの初陣をそれ以上汚すな……怒るぞ。


「ひぃ!」


「ちょ、ちょっとルウ! 漏れてる漏れてる!」


 しまった。アリスを汚されたような気がして、つい魔力が漏れ出してしまった。だが、あの男はいい気味だ。これだけの観衆の前で可愛い女の子に負けただけじゃなく、突然悲鳴をあげて尻餅をついている。

 いや、なんか可哀想になってきたな。きっとあいつにスカウトが来ることはないだろう。なんたって魔法の一つすら使えてないんだから実力が全く分からないんだからな。

 あーなんか魔力発散してちょっとスッキリしたな。ストレス解消みたいな効果でもあるのかもしれないな。


「脅しだ! 何か隠していることがあるから脅したんだ! そいつらを調べてくれ!」


 こいつ……いい加減しつこいなマジで。時の彼方に吹き飛ばしてやろうか。


「ルウ、何もしないでよ。私達何も悪くないんだから。でも手を出したらそうじゃなくなるわよ」


「……分かってるって。そこまでバカじゃないさ。」


「ならいいけど……」


「そうそう! それに調べるってんなら調べさせたらいいじゃねぇか。どうせ何も出てこないんだしよ」


「そうだぞー! ボク達白雷隊(アルベド)がそんなことするはずがないのだー!」


 少し落ち着いた。やっぱりこいつらいいわ。このメンバーでホントに良かったと思う。


「調べたいなら好きにすればいい。どうせ何も出ない」


「くっ……言ったな! 俺がすぐに見つけてやる!」


 対戦相手の男が舞台に上がってこちらに来ようとした。しかし、それは審判に止められた。


「不要だ。証拠もなしにそんな行為は認められない」


「し……証拠も何もないだろ! あんなやつが王級魔術なんか使えるはずないんだ!」


 きっとこいつは自分の国では才能があるほうだったんだろう。天才とか呼ばれてたのかもしれない。何の魔法も見てないから知らないけどな。世界が広いことを早く知れて良かったじゃないか。

 その気持ちを違う方向に向けることができれば今回の結果も無駄にはならないかもしれないぞ。


「黙れ」


「く……」


 本当にいい審判だな。不正を許さず、狂言にも惑わされない。こんな人材がいたんだな。


「えー、少々問題がありましたが、先鋒戦はアリス=ワーグナーの勝利に変更はありません。」


 うーむ、やはり微妙な空気が残る。あの男、かき乱すだけかき乱していきやがったなぁ。


「それでは次鋒、前へ」


「おしっ! やるか!」


 レウスはまぁ大丈夫だろ。初戦は水を差されたが白雷隊(アルベド)の実力を見せてやれ。

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