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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第六章 内乱
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第96話 迫るヴィスタリア正規軍

ちょっとでも続きが気になるな~と思って頂けるようでしたら、ブックマークや評価をポチッとして頂けると一緒に私のやる気スイッチが押されるようです。

よろしくお願いします。


 タルテシュの作戦会議室にはアイリスの他、ギルド(マスター)とオーナーのニキが座していた。

 その他の者は情報収集や騎士団の編成、協力してくれる冒険者達の統率などで席を外している。

 そこへカーライル家の騎士リドルが再び入ってきた。


「申し上げます!リズ様ご帰還です」

「わかった。通してくれ」

「はっ」


 ニキの命を受けリドルが退出する。そして代わりにリズが入ってきた。


「あぁ。みなさぁん、おそろいでぇ」


 相変わらずの調子でリズが状況報告を始める。が、その内容は話し方とは真逆の深刻な事態であった。リズのもたらした最新情報ではヴィスタリア正規軍は既にウィンガルドを出立しており、魔導力で行軍しており明日にはタルテシュに到達する見込みとのこと。


 その数約五千。


 主力はハイラム=イスト=ハズベルト率いる第三師団であり、剣術に秀でた選り抜きの騎士に加え、槍隊、弓隊、魔法隊も備えたバランスの良い軍である。

 一方こちらはアスタルテ家とカーライル家の私設騎士団総勢50名ほどに加え、ギルド登録冒険者のうち協力を申し出てくれている義勇兵が100名強。あとはマーニス家を快く思わないカーライル家と繋がりのある商人お抱えの戦士達が30名程度。総勢200名足らずである。

 普通に考えて、タルテシュで準備出来る戦力で防衛できる規模ではない。


 しかも『出来るだけ相手に損害を与えない』という枷がこちら側についている状況では、とてもじゃないが勝ち目はない。


「レドウ殿の魔法がどれだけの効果をもたらしてくれるか……次第だが、いずれにしてもそう長くは持たん。やはり港町シーランの協力を得て防衛力の増強を図るほかの選択肢はないだろうな」

「それにしても時間がない。もう明日には敵……と言いたくはないが、敵軍が到着するのだぞ。ニキ閣下、既に要請は出しておるのだろ?回答はどうだった?」

「まだ正式な回答は得られておらん。が、シーラン町長はレドウ殿の親御さんであるし、ほぼ敵対はない。あとは……真の意味でウィンガルデと敵対した時、その先をどうするか?を算段しているのだろう。よっぽどの事がない限り裏切られて挟み撃ちになる危険性はないが、そう易々と協力を得られると思わない方が良いと思う」


 キプロスとニキの意見が応酬する。

 最善の手を打ちたいところだが、正解はない。


「一番の問題は、攻めてきているハズベルト家率いる正規軍に落ち度がないことですね。わたしたちの真の敵はその裏にいるマーニス家とマーニス家を支援している未知勢力であって、目前の者たちではないのですから」

「アイリス殿、それを言ってしまっては元も子もないぞ。正規軍を避け、その先にいる者と対峙する術など……あるというのか?」


 キプロスがアイリスを怪訝そうに見る。


「物理的に飛び越える策はあります。ですが、時期尚早です。真敵と相対するには情報も準備も足りていません」

「結局のところ、今出来る最善の理想論は……出来るかどうかはともかく、迫り来るヴィスタリア正規軍の侵攻を食い止め状況の進展を待つのみ。と、いうことだな」


 ニキの確認にアイリスはうなずく。

 そのときである。


 突然会議室の空間にひびが入ったのだ。


「な、なんだこれは?一体何が??」


 ニキとキプロスが驚き警戒する。リズがニキを守れる場所へ素早く移動した。

 平然としているのはアイリスである。


「お疲れ様です。レドウさん」


 そう言ってアイリスが空間のひびに向かって軽く敬礼をする。

 するとひびからにょきっとレドウの顔が現れたかと思うと会議室に降り立った。続いてシルフィも同じように現れる。


「お、アイリス。場所はここで合ってたか?」

「……場所は合ってますが、皆さんを驚かせるような登場はされないほうがいいと思います」


 その言葉を聞いてレドウの顔がキョロキョロと見回す。

 明らかに警戒した様子のニキ、ギルド(マスター)、そしてリズの姿がある。


「そか、そいつは悪かった。直接来てしまった方が早いと思ってな」


 素直に謝るレドウ。そして【王者のタクト】を振るって空間のひびを消した。


「そ、それが神器(アーティファクト)の力の一つなのだな?とんでもないな?何が起こったのかさっぱり理解出来ん」


 ギルド(マスター)が大きく息を吐いて着席する。

 ニキとリズも警戒を解いて既に座っていた。


「現状を説明してもらえるか?二度手間、三度手間になっていたら申し訳ないが」


 そういうレドウとシルフィにアイリスが現状をかいつまんで説明する。


「ちょっと待った。一つ確認するが、向こうさんは『神器(アーティファクト)の存在』を悪としているのか?それともそれを『行使する俺』を悪だと言ってるのかどっちだ?」


 一同、押し黙る。

 確かにそこは明確にされていない。曖昧にされているのか、それとも両方なのか。


「それについてはぁ、わたしからぁ少しぃ話をするねぇ」


 リズが立ち上がった。彼女は斥候として最前線から得た生の情報を教えてくれる。

 そしてヴィスタリア連合王国側が掲げた大義名分について正しく説明する。


「つまり「『帝国の遺産』である神器(アーティファクト)を持って、国家転覆(クーデター)を図っているから、レドウ殿は国賊である」だから正規軍をもって捕らえる。抵抗するようなら討伐する。というロジックなんだな?」


 リズの報告を受け、ふむ。と考え込むニキ。


「両方かよ……向こうにだって神器(アーティファクト)があるのに不公平だよな」


 愚痴るレドウ。

 だがその言葉に反応したのはギルド(マスター)であった。


「レドウ君。ヴィスタリア正規軍側にレドウ君が持っていない神器(アーティファクト)があるっていうのは本当なのかね?」

「あぁ、ある。【勇気の神剣】っていう火の魔元素が凝縮したような両手剣を持ってるはずだ。軍で所有しているかは知らねぇが」

「……もしかしてアレのことか?」


 ニキはハイラム=イスト=ハズベルトが降臨の儀で手に入れた神秘的な大剣のことを話す。


「あぁ、アレクのおっさんもそんなようなこと言ってたな。じゃあそのハイラムって奴が持ってるんじゃないか?」

「レドウぉ……今ぁ、こっちに進軍しているぅ、第三師団を指揮しているのってそのハイラム君よぉ」

「なんとっ!」


 ……神器(アーティファクト)この地(タルテシュ)に四つ集まる?そもそもウィンガルデに四つ集まっていたから、この事態に発展した?

 それこそ王国側の懸念する『帝国の遺産』が集結することから始まる『国家転覆(クーデター)』ではないのかと。


「いえぇ。そのぅ懸念はぁわかりますがぁ、たしかぁ全部集まって初めてぇヴィスタリアにとっての『災厄』だったようなぁ……」

「しかし、彼らが正しく事実を理解しているのであれば、わざわざ離れた神器(アーティファクト)を一カ所に集めるような行為はせんだろう?」

「あるいは、その逆か。裏で糸を引く人物のみが正しく状況を理解し、意図的にぶつけてきている……という可能性もある」

「としますと、更にもう一手出方を考えておく必要がありますね。」


 リズ、キプロス、ニキ、アイリスがそれぞれ意見をぶつける。

 レドウは最初の疑問点を出したっきり会話に参加できていない。ボスとして高見の見物をしている……と言えば聞こえはいいが、単純についていけてないだけである。

 シルフィについても四人の剣幕に圧倒され、参加したくとも参加できていない様子である。

 その証拠に所々で意見を言おうと乗り出すが、言えずに姿勢を正す。という所作を繰り返しているのだから。


「……とりあえず」


 と、ここでレドウが割り込む。


「裏工作とかそういうのは今はわかんねぇだろ?警戒はするがちゃんとした対策が取れねぇんだから、俺らは俺らで出来ることをするしかねぇんじゃねぇか?」

「そ、そうだよ!私もさっきからそれを言おうと……」


 レドウの発言にシルフィも被せてくる。


「そうは言うがな、レドウ殿。現状タルテシュで用意できる戦力ではこちらに進軍している第三師団に対して防衛出来るだけの力がない。恐らく正規軍は本格的な攻撃を始める前に、斥候を寄越して交渉を行ってくるはずだ。例えば降伏条件として『レドウ君を引き渡せ』とか、『神器を渡せ』とかだ。もちろんこちらとしてはそれに応じるつもりはないが、敵の目的や算段をうかがい知るチャンスでもある。上手くすればこちらの有利な条件をねじ込むことも出来るのだ。ここは大事だよ」


 ニキが、諭すようにレドウに伝える。

 その言葉を聞いてレドウはアイリスの方を向いた。アイリスはレドウの目を見てうなずく。


「じゃあ、こうしてくれ。俺には勢力五千の兵を足止めする策も、手段もある。懸念点があるとしたら、そのハイラムっつう奴が神器(アーティファクト)の力で直接攻めてくる場合にどうなるかわからないってとこだが、そいつ個人の力であれば俺が引き受けよう。つまり……斥候との交渉の際、互角以上の戦力を用意できている前提で会話を進めて欲しい。ってことだ。どうだ?」


 レドウは自信満々にそう伝える。

 だが、ニキとキプロス、そしてリズまでもが『夢物語』でも聞いているような表情をしている。


「アイリス君。レドウ殿はこう仰っているが、それは本当に出来ることかね?いかにレドウ殿が素晴らしい力を持っているのだとしても、とても信じられない。レドウ殿のお力をよく見て知っているアイリス君の意見が聞きたい」


 キプロスはそう話をアイリスに振った。


「レドウさん、何をするつもりですか?簡単に教えて下さい」

「ん。そうだな。『秘密』って言っておきたいところだが、納得してくれてないようなんで簡単に言うと、ちぃと規模が大きくて大変だが《魔法障壁》をつくり『幻影魔法』で一つ仕掛けをする予定だ」


 レドウの足りなすぎる説明だが、なんとなくアイリスはレドウが何をしようしているのか想像できたようだ。


「ニキ閣下、キプロスさん。やや賭けな部分はありますが、レドウさんが言っていることは夢物語というほど荒唐無稽なことではなさそうです。斥候対応はこれで進めてみましょう」

「そうか。アイリス君がそう言うならやってみよう。」

「そうだな。アイリス君が言うのなら」


 ニキとキプロスが口々にそう言う。


「お、俺の立場がねぇ……」


 残念ながら、その力を認知されていないレドウは、まだ信頼感が足りなかったようだ。

 ちょっと悔しかったので、あとでシルフィに慰めてもらうことにしよう。と、レドウは心に決めた。


 いずれにしても明日は事態が大きく動くのだから。


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